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第二十八話







「………………」


 日本海軍第一航空隊の航空基地、そこにある医務室のベッドから窓の外を見る一人のドイツ軍人がいた。そこへ扉をノックする音がして一人の男が入ってきた。


「よぅへルマン。調子はどうだ?」

「やぁマサカズ」


 入ってきたのは将和だった。あの空戦から数日が経過していた。あの時、将和とゲーリングは燃料が切れる寸前まで空戦を展開していた。

 それは地上にいたドイツ軍に連合軍、上空にいたドイツ軍、連合軍も目撃しており最後は後方に取りついた将和が機銃弾を叩き込んでゲーリングが負傷、日本軍陣地に不時着するという将和の勝利で終わったのである。

 なお、ゲーリングが不時着した瞬間に両軍は盛大に歓声を送り負けたゲーリングを讃えたのである。その後、負傷していたゲーリングはそのまま日本軍の捕虜(というより客分)となり今は第一航空隊でお世話になっていたのである。


「それで今日はどうしたんだい?」

「あー……実はな……」


 そう言って将和は言いにくそうに口を開いた。


「連合軍とドイツ軍との間で休戦協定が結ばれた」

「あー……そう言う事ね」


 将和の言葉にゲーリングは納得したように頷いた。1918年11月11日、フランスのコンピエーニュの森に置かれた列車にてドイツと連合国は休戦協定を締結した。これにより1914年7月から勃発し空前の犠牲者を出した第一次世界大戦の戦闘は1918年11月11日を以て実質的に終了するのであった。


「御別れ……になるね」

「だな」

「またあの時に来るんだろう? ならボクは待ってるさ」

「おぅよライバル。待ってろ、直ぐに行く」

「ライバルか……嬉しいね」


 将和の言葉に微笑むゲーリングである。斯くして休戦協定は締結されるが戦争状態はドイツがヴェルサイユ条約に署名するまでの約7ヶ月も続く事になる。

 この戦争の結果、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン、ロシアの四帝国が崩壊しホーエンツォレルン家、ハプスブルク家、オスマン家、ロマノフ家がそれぞれ君主の座を追われる事になる。

 しかも四帝国が滅亡解体された結果、新たに9つの国が建国された。それがドイツ(共和制)、オーストリア、チェコスロバキア、フィンランド、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、アルバニアという具合である。

 それぞれの国々は締結された休戦協定に基づき、兵士達を少しずつ故郷へ帰そうとしていた。が、レティシアだけは気が晴れなかった。


「……どうした?」

「ミヨシ……」

「グレイスから元気が無いと聞いてな」


 連合航空隊も解散が発表されていたがまだ解散はしていないので二人は直ぐに会えた。滑走路の脇で翼を休めているスパッドS.13を見つつレティシアは口を開く。


「……敵を……ドイツ人を殺すだけが先決だった。父を、母を、弟を殺したドイツ人が憎かったわ」

「………」

「停戦と言われて……この憎たらしい想いはどうしたらいいの? もう……皆は帰って来ないのよ……」


 レティシアは静かに泣いていた。抑えていた心の内を漸く此処で吐き出せる事が出来た。


「どうしたら……どうしたらいいの……?」


 レティシアはそう呟くが将和は淡々と答えた。


「それはレティシア、君自身が決めなければならないな。俺やグレイス、シルヴィア達がどうこうを言える立場ではない。お前自身が動かなければならない」

「自分自身……」

「あぁ。お前は幸運か不幸かは分からないが戦争から生き残れた。なら次はどう動くか……それが決めなければならない選択だ」

「……………」


 一風の風がレティシアを撫でる。それをレティシアはどう感じたかは分からない。レティシアは目を閉じ、スッと直ぐに開き将和に視線を向ける。


「ミヨシ、少しだけcourageクラージュを頂戴」

「ん?」


 そう言ってレティシアは将和の唇に自身の唇を重ねた。時間は数秒だったがレティシアはゆっくりと将和から離れる。その顔は真っ赤だった。


「レティシア……」

「返事はしないで。ユーカの事は聞いてるから、だからお願い……」


 レティシアは少し寂しそうな表情をしながら立ち上がり、その場を後にするのである。建物の陰に入ると膝から地面に付ける。


「……らしくないわね」

「だな」


 そう言って現れたのはグレイスとシルヴィアである。


「貴女達……覗きの趣味は嫌われるわよ?」

「おあいにく様……マサカズは嫌うような事じゃないからな」

「……ちょっと待ってくれグレイス。私は別にマサカズさんの事は……」

「姉貴ェ……あんだけマサカズの事を調べてたら誰だってそう思うぞ?」

「いやそれは空戦で私を助けてくれたからで……」

「照れ隠しをしないしない」


 ヒラヒラと手を払うグレイスである。


「ま、姉貴の事はさておき……」

「おい」

「レティシア……マサカズの事、好きなんだろう?」

「……………」

「無言は肯定と捉えるぞ」

「……好きよ。けど、彼にはユーカがいるもの」

「それがどうした。私はユーカに宣戦布告をしているからな。むしろユーカは喜んで仲間に加えてくれると思うぞ」

「なっ、貴女……」

「レティシア、こんな格言を知っている?」


 驚くレティシアと何故かシルヴィアを他所にグレイスはフッと笑う。


「『イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない』……そういう事よ」

「……ッ………」


 グレイスの言葉にレティシアは顔を伏せる。だがグレイスはレティシアの胸ぐらを掴む。


「逃げるなレティシア」

「ッ………」


 グレイスの挑発的な言葉だった。だがそれがレティシアの心に火を付けたのである。言葉を悪くすれば火炎瓶を投げつけたようなものである。


「……ふざけないで、誰が逃げるものよ」


 顔を伏せていたレティシアは顔を上げる。その表情ーー目には炎が滾っていた。


「良いわ、メシマズの国に乗っかるのは癪だけど乗ってあげるわ」

「メシマズなのは否定しないな」

「否定出来ないものですね……」


 レティシアにグレイスとシルヴィアは納得したように頷くのである。それは兎も角、将和の取り合いは激しさを増すのであるが当の将和本人はというと……。


「……何処でフラグが建ったんだ……」


 旗が何処で建ったのか激しく悩んでいた模様である。それは兎も角としてその日の午後1900、メシも食べて士官搭乗員室でゆっくりしようとしていた将和の元に酔っ払ったグレイス、シルヴィア、レティシアの三人が乗り込んできたのである。


「邪魔するぞマサカズ!!」

「三人とも!? てか酒くせぇ!! お前ら飲み過ぎてるじゃねぇか……」


 ブランデーにラム酒、ワイン等のグラスを手に持つ三人である。三人は三人でもうベロンベロンに酔っ払っているがそれでも自身が持つ酒を口に注いでらっぱ飲みをする。


「んぐっ……んぐっ……ぶはぁ……ヒック」

(やだ、怖い……)


 らっぱ飲みをするグレイスに思わず後ずさる将和である。


「第一航空隊の諸君、申し訳ないが君たちの隊長を明日まで借りるぞォ!!」

『ーーーッ!?』


 グレイスの言葉に吉良達第一航空隊のパイロットは色めきだち吉良が立ち上がる。


「どうぞ連れて行ってくださいミス.グレイス!!」

「どうぞどうぞ!!」

「返納はいつでも構いませんので!!」

「な、ちょお前ら……」


 あっという間に連れて行かれる将和を見送る吉良達、将和らの姿が消えた瞬間に吉良が叫ぶ。


「番狂わせが来たぞ!! まさかのまさかの山口が予想したグレイス嬢以上と来たもんだ!!」

「胴元ふざけんな!!」

「でも隊長だから仕方ないのかも……」

「トリプル不倫と来たかァ!?」

「それは色々とマズイぞ……」


 そんな騒ぎをする吉良達を他所に三人に連れて行かれた将和は自身の自室を案内させられた。


「あ、あの……三人さん?」

「フフフ……もう我慢出来ませんわ」


 グレイスはそう言って自身の服を脱ぎ始める。それに釣られてレティシア、シルヴィアも脱ぎ出す。


「ちょ、お前らッ!?」

「だまらっしゃいッ!!」

「まぁ強引ね」


 背ける将和にグレイスは叫び、そのまま抱きついてキスをする。


「もう我慢する必要はないからなマサカズ」

「グレイス……」

「此方は前世の分もあるんだ。派手にやらさせてもらう!!」


 ガ○ナ立ちをするグレイスである。その左右でもレティシアとシルヴィアも色々と準備万端であった。


「敵機から助けてくれた御礼……まだでしたね」

「決めなければいけない選択……今、選択するわ」

「というわけだマサカズ……」

「………」


 思わず戦術的後退(窓から逃げる)をしようとする将和だがグレイスに両肩を掴まれ完全に捕らわれた状態である。


「あ……あ……」

「Charge!!」


 斯くして捕らわれた将和に三人はル○ンダイブを敢行するのであった。

 その頃、内地へ帰還途中の輸送船では……。


「……あら?」

「どうしたの夕夏?」

「……何もないわ(そう……いらっしゃい三人とも♪)」


 不意に夕夏が声を出しある方向ーーヨーロッパの方向ーーに視線を向けた事に同僚の看護師が問う。だが夕夏はうっすらと笑うだけだった。なお、内心は三人が来た事に歓迎するのである。(お前はN○か)

 それはさておき、翌年の1919年1月18日からパリにてパリ講和会議が行われており日本の代表は前回と同じく伊藤が出席していた。

 会議は終始、史実通り(四人会議はハブられる事なく五人会議となる)になるがロイド・ジョージのフォンテーヌブロー覚書を日本が支持するとフランスは激怒する展開もあった。更に激怒するフランスにガソリンをぶちまける展開もあった、それが中央同盟国のドイツ代表であるウルリヒ・フォン・ブロックドルフ=ランツァウ外相の発言である。


「ユトランド沖海戦の折、日本派遣艦隊は我がドイツの戦艦に雷撃処分ではなく砲撃処分という武士道精神を見せてくれました。また、彼等は気迫溢れるブシ道精神を我々に見せつけました。騎士道精神に則り我々ドイツは日本に対してスカパフローに停泊している戦艦若しくは巡洋戦艦の二隻を日本に譲渡したいと存じます」







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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[一言] あれ?ハンガリーは?オーストリア領?
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