1話
私は転生者だ。
五歳の頃に前世の記憶を思い出し、この世界が昔友人がやっていたゲームの世界なのだと気付いた。とはいえ、友人が嬉々として話していたことをほとんど聞き流していたためこの世界の事はまったくといっていいほどわからない。
ゲームで出てくる名前など憶えているはずもなく、だれが主人公なのかもわからない。
唯一憶えているのはゲームが男女の恋愛を楽しむ所謂乙女ゲームだということと、いま私の目の前にいるこの男、西園寺 新だけだ。友人からこの男の名前を聞いたときに“名前かっけー”と思ったから唯一憶えていた。
正直この男のことは名前以外まったく憶えていない。
ならなぜこの世界がゲームだと思ったのか、それはこの男に会った時に前世の記憶を思い出したからだ。
なので実際はこの世界が、前世の私の友人がやっていたゲームの世界だとは言い切れない。しかし、ここがゲームであろうとなかろうと、そんなことはどうでもよかった。私がここで生きていることには変わりはないのだから。
ゲームの知識があれば色々と便利だったのかもしれないが、前世の記憶を思い出しただけでも良かったとおもっている。
前世の私は現在の私と同じ十五歳、高校の入学式の日車に轢かれた。それ以降の記憶がないのでその時に前世の私は亡くなったのだと思う。
私は、前世の私の記憶だけではなくその時の思いも思い出した。車に轢かれ、意識が薄れる中前世の私は後悔していた。
だから私は記憶を思い出した時に誓ったのだ。今度は死ぬときに後悔などしない生き方をしようと。
記憶を思い出してから今までの五年間自分に素直に生きてきた。自分のやりたいことをして、言いたいことははっきりと言った。自己中心的、我がままと捉えられ、嫌われると思っていたが思いのほか周りは友好的で日々楽しく毎日を過ごしていた。
しかし、高校に入学してからおかしくなった。
なぜかこの学園の人気の男子からは初めて会ったにもかかわらず嫌われていた。顔で選ばれているのかと言いたくなるほど顔面偏差値の高い男子生徒ばかりいる生徒会からは入学式から睨まれ、いかにも不良ですといった格好の男子から「ゆうに近づくな」といわれ、となりの席の爽やか男子からは無視され、ホストの様な教師からは目をつけられた。
訳が分からなかった。“ゆう”って誰だ、そもそも“ゆう”が名前なのか、あだ名なのかもわからない。
今までで関わってきた人の中に“ゆう”のつく人はそれなりに居たが、関係は悪くはなかった。一応“ゆう”がつく知り合い全員に連絡したが、やはり全員何のことかわからないと言い尚且つ私の心配をしてくれるいい人たちばかりだった。
彼らに聞いても「とぼけるな」から始まり身に覚えのない事を言われ、反論すれば罵詈雑言。日本語が通じない、まるで宇宙人と話しているようだった。
彼らとは分かり合えないと判断し私は“ゆうさん”探しは諦め、嫌われることを受け入れ無視することにした。
しかし、あちらは違うようで嫌っているはずなのに突っかかってきた。学園の人気者である彼らから嫌わる私は一般の生徒からは遠巻きにされ、彼らの取り巻きからは陰湿な嫌がらせを受け、彼らからは言葉の暴力。
正直限界だった。
特にこの学園にこだわる理由もないので転校を考えていた矢先に、学園の人気者でありながら今まで彼らのように私に負の感情を寄せず無関心だった人、そして私の人生の転機となった前世を思い出す切っ掛けとなった人ーーー西園寺新、その人に呼び出された。




