第二十九話
壮絶なる鬼ごっこが終わったのは、もう夜が明ける頃だった。
せっかく沖田の背中を見つけても、ひょいっと身軽に逃げる。
その姿を土方がまた追う。
その繰り返しだった。
その状況は、凄まじかったらしく。
某幹部の証言によると、
「俺が、珍しく部屋で新八っつぁんと左之さんで飲んでたら突然総司が俺の部屋に入ってきてよぉ」
「そうそう、あれは悲惨だった。『ちょっと隠れさしてください』なんていうから置いてやってたら次の瞬間に鬼の形相に土方さんが入ってくんだからなぁ・・・」
「挙句の果てには、酒は蹴り倒すわ、俺達蹴り倒すわでよぉ・・・。俺の酒返せよぉおおお」
「「いやいや、突っ込むとこそこ?」」
との事。
何はともあれ、その惨劇は凄まじかったのである。
何度やっても、追いつけないと理解したのか土方は、
「総司っ、てめぇ覚えとけよ」
なんていうすて台詞で自室に帰ったらしい。
そして、その日の昼。今に至るのである。
廊下には、昼間からドタドタと土方の足音が響いている。
その音が止まったのは、ちょうどある一室の部屋。
スッ
「総司ぃ、てめぇ、昨日は何してやがった。あんなに遅く帰ってきやがって」
怒鳴り声に振り向いたのは、お団子をおいしそうに食べている沖田と昨日とばっちりを受けていた某幹部だった。
その声に、背筋をびくっと震わす三馬鹿。
まったくお構いなしに、お団子を食べ続ける沖田。
睨む土方。
五人の間にはしばしの沈黙が続いた。