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28:テルケン・カトンへの使者1:ダーニシュマンドの野心4

「ブハーラーの商人」の書き足しが難渋しているため、ダーニシュマンドの話を先にお届けすることにしました。時系列的には、同時進行なので、ひっくり返ってはないです。


人物紹介

モンゴル側

チンギス・カン:モンゴル帝国の君主


ダーニシュマンド・ハージブ:チンギスの臣。ホラズム出身の文官


イブン・カフラジ・ブグラー:問責の使者として赴き、スルターンに殺害される。



ホラズム側

スルターン・テキッシュ:ホラズム帝国の先代の君主。


テルケン・カトン:テキッシュの正妻。カンクリの王女。


スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。

   先代テキッシュとテルケン・カトンの間の子。



人物紹介終了


 ウルゲンチに向かうダーニシュマンドであるが、最初からその進みは勢い込んでというものでは全くなかった。

 そしてそれは旅程が進むにつれ、なお一層遅々としたものとなった。

 全てはその心の内を反映してであった。

 ただの使者ではない。

 今、戦争をしておる相手である。


 ただ、たまたま虫の居所が悪いということで殺される恐れはなかろうとは考えておった。

 ダーニシュマンドはチンギスに提案する前に、テルケン・カトンの()()()()について情報をかき集めた。

 己の命がかかっておるのだから、当然といえる。


 余りにもの()()()()()

――やはり余りにもの褒めちぎりを

――除くと、

――総じて賢明ではあるが非情であるとの人物評に落ち着いた。


 ダーニシュマンドはその賢明さの方に賭けたのだった。

 今回己が携える提案は十分に魅力的であると想われた。

 何も仲の悪い息子と一蓮托生になる必要はあるまい。

 更に聞くところでは、お気に入りの孫がおり、既にその者は皇太子に任ぜられておるという。

 息子の愚行の巻き添えを食らって共に滅びるより、領国は小さくとも孫を王としてやって行けば良い。

 賢明なというなら、それが分かるはずであった。


 他方で己が何か読み違いをしており、

――己の提案に何の魅力も感じないならば、

――非情と評されるテルケンである。

――何の痛痒(つうよう)も感じずに、己を殺すだろう。

 少なくともその覚悟はできておるはずだった。


 ただその地へ(こま)を進めるにつれ、ある恐れがずっしりとその心にのしかかって来ておった。

 隊商虐殺も問責の使者殺害も、積極的に進めたのはスルターンであれ、テルケンも賛同したのではないか。

 その可能性を全く排除することはできなかった。

 もしそうならば、

――我の今回の赴きはテルケンの判断をなじることになり、

――これは殺されに行くようなものかもしれぬ。


 自信家のこの者でさえ、

――その心は(おび)えに捉えられ始めており、

――そしてまるでそれが馬に以心伝心した如くに、

――その一歩一歩は重々しいものとなっておった。


 そして同行の二人のモンゴル人使者も、護衛隊も、文句を言うことはなかった。

――果たして文官たる己の進みはこんなものと、そう想いなしてくれておるのか。

――それともやはり彼ら自身の命への名残惜しさのゆえに、足が進まぬのか。

――この者たちも問責の使者たるブグラーがどうなったかは当然知っていよう。

――いずれにしろダーニシュマンドには、ありがたかった。


相変わらず、難渋が予想されるため、次話はダーニッシュマンドの語の説明などを予定しております。多分、とても短いです。


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