第3章: 地上への帰還と合流
秀城は、元素図書館の深淵の区画から脱出し、守護者本部の地上出口へと急いだ。アルカイアから受け取った地図の断片は、魔法によって守られており、彼を「忘れられた谷」へと導く羅針盤の役割を果たしていた。
地上に出ると、空は既に白み始めていた。秀城はすぐに通信機を取り出し、地上で情報収集を行っているはずのジンクたちに連絡を取った。
「ジンクさん、オクシアさん、ナトリ!聞こえるか!?」
幸い、通信はすぐに繋がった。
「メンデレ!無事だったか!図書館での異常な魔力反応、こっちでも感知してたぞ!」 ジンクの焦った声が聞こえた。
「話は後だ!アルケミスは消滅していなかった!奴はプルトニウムの力で、図書館の封印を破ろうとしている!俺は、それを止める鍵となるアメリシウムの主を探しに「忘れられた谷」へ向かう!君たちの現在地は!?」
「忘れられた谷だと!?偶然だな、俺たちもその谷について調べていたところだ!どうやら、古い文献にしか載っていない、精霊信仰の残る秘境らしい。場所は…ここから北東へ、馬車で三日ほどの山岳地帯だ」
「分かった!すぐに合流しよう!俺は超光速発動でそちらへ向かう!」
秀城は、イッテルビウムの力を解放し、自身の身体を光速に近い速度へと加速させた。周囲の景色が、まるで線のように流れ去っていく。この力を使えば、三日の距離も数時間で到達できる。
数時間後、秀城は指定された合流地点、山岳地帯の入り口にある小さな宿場町で、ジンク、オクシア、ナトリと再会を果たした。
「メンデレさん!本当に速かった!」
ナトリが驚きの声を上げる。
「図書館での出来事を詳しく聞かせてくれ」ジンクが真剣な表情で促した。
秀城は、深淵の区画での出来事、プルトニウムの共鳴、そしてアメリシウムの主を探すことになった経緯を簡潔に説明した。
「プルトニウムの暴走を止める鍵がアメリシウムに…」
オクシアは、秀城の言葉を反芻するように呟いた。
「確かに、アメリシウムは放射性元素ですが、特定の同位体は半減期が長く、比較的安定していると記録にあります。その安定性が、プルトニウムの連鎖反応を断ち切る触媒になるのかもしれません」
「問題は、その「忘れられた谷」にどうやって入るかだ」
ジンクが腕を組んだ。
「俺たちが集めた情報によれば、谷は強力な古代の結界で守られていて、外部の人間は誰も立ち入ることができないらしい。谷に住む人々は、数千年もの間、外界との接触を完全に断っているようだ」
「古代の結界…」
秀城は、アルカイアから受け取った地図の断片を広げた。そこには、谷の入り口を示す印と共に、古代文字で書かれた短い詩のようなものが記されていた。
「調和を望む者よ、三つの元素の試練を越えよ」
「大地の心臓、天空の吐息、生命の輝き」
「それらを示せし時、隠されし道は開かれん」
「これは…結界を解くためのヒントか?」
秀城は呟いた。
「三つの元素の試練…大地の心臓、天空の吐息、生命の輝き…」
オクシアがその言葉の意味を探るように考え込む。
ナトリが、はっとしたように顔を上げた。
「もしかして…!地属性、風属性、そして光属性…あるいは生命に関わる元素の力を見せろってことじゃない!?」
「可能性は高いな」
ジンクが頷いた。
「地属性なら、カルシウムやケイ素。風属性なら、酸素や窒素、あるいは希ガス。生命の輝きなら、リンやマグネシウム、あるいは回復魔法か…」
「俺たちの持つ元素の力で、結界を突破できるかもしれない」
秀城は、希望の光を見出した。
「よし、決まりだ!忘れられた谷へ向かおう!そして、アメリシウムの主を見つけ出し、アルケミスの野望を阻止する!」
四人の決意は一つになった。彼らは、新たな仲間となるかもしれないアメリシウムの主を求め、古代の結界が待ち受ける「忘れられた谷」へと、再び歩み始めた。
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