第2章: 禁断の系譜とアルカイアの警告
アルカイアは、秀城たちを元素図書館のさらに奥、特別に隔離された部屋に案内した。そこには、ガラスケースに封じられた、ひび割れた黒曜石の結晶が安置されていた。
「これを見よ。これは、かつてアクチノイド元素を習得し、世界を滅亡の危機に瀕させた「破滅の錬金術師」の魔力核の残骸だ」
アルカイアは、重々しい口調で語り始めた。
「数千年前、まだ世界が元素の力で栄えていたウーアの世界と呼ばれる時代があった。その時代に、一人の天才錬金術師が現れた。彼は、君と同じように全元素習得の力を持ち、そして、このアクチノイド元素の扉を開いた」
その錬金術師は、最初にウラン(U)、そしてプルトニウム(Pu)を習得した。彼の力は圧倒的で、世界を統一するほどの力を手に入れたという。
「だが、彼は慢心した」
アルカイアは、秀城の目をまっすぐに見つめた。
「彼は、プルトニウムの力を利用して、巨大な元素炉を構築し、世界中に無限のエネルギーを供給しようと試みた。しかし、その制御の精度を誤った。プルトニウムの連鎖反応は暴走し、彼の制御を離れ、最終的に惑星の半分を焼き尽くす大災害を引き起こした。それが、ウーアの世界の崩壊の真実だ」
その出来事の結果、当時の文明は崩壊し、生き残った者たちは元素の知識を封印し、守護者となった。これが、アクチノイド元素が禁断とされた理由だった。
「その錬金術師の末裔、あるいは彼の力を引き継いだ者が、アルケミスだというのか?」
ジンクが尋ねた。
「可能性は高い」
とセレンが答えた。
「アルケミスの元素崩壊は、原子核の結合エネルギーを不安定化させるという、アクチノイド元素に通じる特性を持っている。彼は、崩壊の力を使うことで、アクチノイドの制御法を探っているのかもしれない」
アルカイアは、再び秀城に向き直った。
「メンデレ秀城。君が、アルケミスに対抗するために、アクチノイドの力を手に入れたいと考えるのは理解できる。だが、君の力は調和。アクチノイドの力は崩壊。この二つは、水と油、あるいは光と闇だ。君は、その崩壊の誘惑に打ち勝つことができるのか?」
「俺は、化学者でした。ウーアの世界の錬金術師が失敗したのは、破壊の力としてアクチノイドを使ったからです」
秀城は、自身の考えを丁寧に説明した。
「プルトニウムは、確かに連鎖反応を引き起こす破壊の元素ですが、その連鎖を制御できれば、それは究極の安定エネルギー源にもなり得る。俺が目指すのは、崩壊の力の封印です。アルケミスのプルトニウムの崩壊反応を、俺が別の元素で中和し、安定化させる。それができれば、世界は救われる」
「中和…安定化…」
プラチナが呟いた。
「まるで、触媒反応のようね」
「その通りです、プラチナさん。俺の全元素習得は、究極の触媒です。俺は、プルトニウムの連鎖反応を止めるための「ストッパー」となる元素を探します。そして、その「ストッパー」を習得します」
アルカイアは、秀城の科学的な発想と、破壊を望まない心に、わずかに感銘を受けたようだった。
「…よかろう。君の言う中和という発想は、ウーアの世界の錬金術師にはなかったものだ。だが、アクチノイド元素に触れるには、君の現在のレベルと精神力では不十分だ。君がその覚悟と能力を証明するまで、我々は君の習得を許可しない」
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