第1章: 旅立ち、そして追跡者の影
会議の翌朝、地下都市の秘密の裏口。秀城は旅立ちの準備を整えていた。新たな修行の地は、東方にある巨大な山脈地帯、通称磁鉄山脈。
今回の旅の同行者は、ジンクとオクシアの二人だ。彼らは秀城を守り、共に強くなることを志願した。
「メンデレ、この旅は俺たちも一緒だ。アルケミスの魔の手からお前を守るため、そして、俺たちももっと強くなるために」
ジンクが、大きな背負い袋を担ぎながら、決意の言葉を述べた。
「私も同行します。私の酸素と回復魔法は、どんな過酷な環境でもあなたを支えられます。特に、次の修行地が希土類元素の奥地であれば、私の支援が必ず役立ちます」
オクシアは冷静ながらも、強い決意を秀城に伝えた。
ナトリとプラチナは、都市の守りを固めるために残る。ナトリは涙目ながらも、秀城を送り出した。プラチナは、白金族の秘蔵である磁鉄山脈の地図と、隠者たちへの紹介状を秀城に手渡した。
「気をつけろ。アルケミスの奴は、空間転移でどこからでも現れる可能性がある。警戒を怠るな。もし逃げられない状況になったら、迷わずセシウムの限界突破を使え。命を繋ぐことが、最優先だ」
セレンの最後の助言は、秀城の心に深く刻まれた。
秀城たちは、秘密の通路を通って地上へと向かった。地上は荒涼とした大地が広がり、彼らはプラチナの地図を頼りに、東の磁鉄山脈を目指して歩き始めた。
旅は順調に進んだ。秀城は歩きながらも、習得した60個の元素の感覚を研ぎ澄まし、いつでも魔法を使えるよう意識を集中していた。ジンクは亜鉛の魔法で斥候として先行し、オクシアは酸素の魔法で周囲の気流を把握し、回復の準備を怠らない。三人の連携は完璧だった。
三日目の夜、彼らが野営地で焚き火を囲んでいた時、秀城は突然、背筋に冷たい悪寒が走るのを感じた。それは、まるで空気そのものが凍りつくような、邪悪な魔力の波動だった。
「誰かいる…!それも、非常に強力だ!」
秀城はチタン合金剣を抜き、闇夜に潜む気配に視線を向けた。
「どうした、メンデレ!?」
ジンクも警戒し、雷のオーラを纏いながら立ち上がった。
次の瞬間、彼らの背後の空間が、黒い渦を巻いて歪んだ。その歪みは、前回地下都市で見た時よりも大きく、より禍々しい。
「やはりな。私を出し抜けると思ったか、元素の宝箱よ」
アルケミスの冷徹な声が、夜の静寂を切り裂いた。
「アルケミス!なぜここに!?」
秀城は驚愕しつつも、剣を構えた。地下都市から遠く離れたこの場所まで追跡されたのは、空間転移によるものだろう。
アルケミスは、その場で不敵に笑うと、すぐに秀城に向けて手を翳した。
「無駄な抵抗はよせ。今度こそ、元素崩壊から逃れる隙は与えない。お前の元素崩壊無効のスキルは魅力的だが、仲間を庇いながら逃げられるかな?」
黒い波動が、凄まじい速度で秀城たちを襲う。
「元素崩壊無効!」
秀城は咄嗟にスキルを発動させると同時に、オクシアとジンクを庇うようにアルゴンシールドを展開した。しかし、アルケミスの元素崩壊の力は強力で、アルゴンシールドは一瞬で弾け飛んだ。魔法を直接受けたジンクとオクシアは、全身の魔力を奪われ、その場に崩れ落ちた。
「くっ…俺たちはもう動けない…!」ジンクが苦しげに言った。 「メンデレさん、逃げて…!私の回復魔法が…使えない…!」
オクシアも顔を青くして絞り出した。
秀城は、たった一人で、再び、絶望的な状況でアルケミスと対峙することになった。アルケミスは、秀城が仲間を捨てて逃げることなどできないと見抜いていたのだ。この状況を打破するためには、セレンの最後の助言を実行するしかなかった。
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