プロローグ: 戦いの後の静寂と会議
元素狩りによる大規模襲撃から三日後、地下都市は静けさを取り戻し始めていた。破壊された防壁の修復は急ピッチで進められ、負傷した守護者たちもセレンやジンク、そしてオクシアの回復魔法によって徐々に快方に向かっていた。しかし、戦いの爪痕は深く、人々の心には、リーダーであるアルケミスの圧倒的な力、特に全ての元素魔法を封じる「元素崩壊」の恐怖が、重い影を落としていた。
秀城は、都市の最深部、守護者たちの拠点にある円卓会議室にいた。そこには、守護者たちの幹部であるアルゴン、セレン、そして彼の仲間であるジンク、ナトリ、オクシア、プラチナが一堂に会していた。テーブルの上には、戦いの報告書と、秀城の今後の身の振り方についての提案書が置かれていた。会議は重々しい雰囲気に包まれていた。
「アルケミスのあの力…元素崩壊を無効化できたのは、メンデレ君、君だけだ」
アルゴン・ノーブルは、白く長い髭を撫でながら、静かに言った。彼の声は落ち着いているが、その言葉の背後には、地下都市全体の運命がかかっているという重みがあった。
「はい。ですが、俺の力の限界も知りました。レベル16では、まだレベル20以上のアルケミスには遠く及びません。特に、彼の切り札である空間転移の能力には、全く対応できませんでした」
ジンクがテーブルに拳を打ち付けた。
「あの卑怯者め、最後の最後で空間転移を使いやがって!俺たちがMPを回復するのを待つこともなく、さっさと逃げたのは、メンデレの魔法を食らったくせに動揺していた証拠だ!」
セレンは腕を組み、冷ややかな瞳で秀城を見た。
「メンデレ。君の全元素習得は、確かにこの世界の希望だ。だが、君は今、元素狩りにとって最大の獲物になった。この都市に留まるのは、君一人だけでなく、私たち守護者全体を危険に晒すことになる」
彼女の言葉には、私情を挟まない厳しさがあった。
「セレンの言う通りだ」
アルゴンが立ち上がり、壁に掛けられた巨大な周期表のタペストリーを指差した。
「アルケミスは、君の力を狙って必ず再び襲撃してくる。次回は、今回のような陽動ではなく、確実に君を仕留めるために、全勢力と、更なる未知の力を伴って来るだろう。その時、この都市が耐えられる保証はない」
秀城は、仲間たちと都市を守るために戦うべきだと考えていたが、彼らの論理は冷酷なまでに正しかった。
「では、どうすれば…?」
秀城は苦渋の表情で尋ねた。
プラチナが口を開いた。彼女の優雅な声には、強い決意の響きが混ざっていた。
「メンデレ。あなたには、更なる強さが必要です。アルケミスのレベル20を超える、圧倒的なレベルと、彼を出し抜くための新たな元素の力、特に希土類元素の真の力を習得する必要があるわ」
「その通りだ」
アルゴンが言葉を続けた。
「君の習得元素は、現在60個。アルケミスに対抗するには、残された第6周期の元素、特に深奥に秘められた希土類元素の修行が必要だ。この地下都市の防御が完全に回復するまでの間、君を人里離れた元素の聖地に送り込む。そこには、希土類元素の力を極めた隠れた元素の主たちが住んでいる。彼らの厳しい修行を受け、一気に力をつけなさい」
アルゴンは秀城の目を見て言った。
「これは命令ではない。この世界を救うための、君の使命だ」
秀城は、円卓を囲む仲間たちの顔を見た。ナトリは寂しさと期待の入り混じった表情を、オクシアは静かなる激励の眼差しを、ジンクは熱い闘志の目を向けていた。
「分かりました、アルゴンさん。俺は、行きます」
秀城は深く頭を下げた。
「アルケミスを倒すために、必ず、より強くなって戻ってきます」
こうして、メンデレ秀城の次なる旅、希土類元素の奥地を目指す修行の旅が、彼の意志と使命のもとに決定した。
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