82 伝説に支えられて
モンテ領の周囲は、遠くから敵に囲まれていた。
そして、モンテ領内では、白丸たちが監察官姫子を盛り立てて、悪を成敗しようとしていた。
姫子は、赤いプレートを空に掲げた。
「輝け! モンテマニーの紋章」
悪人たちを倒して懲らしめて、1件落着のはずだった。
しかし、今回は違った。
目の前の敵だけではなく、遠くから飛んで来る矢が、雨のように降って来た。
剣術が得意な白丸
体術が得意な大地
忍術が得意な姫子
それでも、いつまでも避け続けることはできない。
☆ 48 モンテ領への入領審査 参照
◇
ミエルは、空中を見て、誰かと話している様子だった。
真帆はミエルの様子を見ながら、アリスに聞いた。
「ミエルさんは、ネコが見えないナニカを追うようにされていますね」
いつもは明るく冗談ぽく返事をするアリスだったが、今回は違った。
「ええ、なにか起こりそうね。早めに食事を終わらせて、準備しましょう」
真帆は、驚いた様子だった。
「はい、そうですね」
ワカルは、アランに聞いた。
「ミエルさんは、もしかして、なにか神様からのお告げを受けているのでしょうか?」
アランはうなずいた。
「ワカルは上手いこと言うな。その表現がぴったりかもしれない。」
ミエルは、見えない誰かに返事をしていた。
「分かりました。すぐに準備して向かいます」
空中を見ていたミエルが、みやび、アラン、アリス、真帆、ワカルの方を向いて、真剣な表情で告げた。
「みんな戦闘準備をしてください。
真帆さんとワカルさんは、お留守番してください。
今日は、閉店して、家で静かにしてください。
みやび、アラン、アリスは、防具を付けて、ボクと一緒に来てもらいたい。
すぐに準備をして!」
ミエルたち4人は、食事を手早く済ませて、トイレも済ませて、防具に身を固めた。
ミエルは、留守番予定の真帆とワカルに釘を刺した。
「しばらく帰れないかもしれない。夜ご飯は先に食べてください」
真帆とワカルの返事を待たずに、ミエルたちは駆けだしていった。
◇
白丸は降ってくる矢を紅丸剣術を駆使して、叩き落していた。
大地は体術、姫子は忍術で避け続けていたが、無傷ではなかった。
「まさか、紅丸剣術を使い続ける日が来るとは思わなかった...」
「どう、白丸、満足できた?」
「大地は満足したと言って欲しいのだろうが、こうも防戦一方ではな、満足からは遠いな。剣士同士の戦いで使いたかった」
「白丸、弱音を吐かないで、わたしも監察官として、最後まであきらめないわ」
「姫子を巻き込んで済まなかったな。後悔しているか?」
「少しね。でも、監察官が居なかったら、世の中、救いが無くなるわ」
「そうだな。もう一人、誰かを誘うべきだったな」
「月夜役は、姫子。紅丸役は、白丸。ボクは、黄庵役というよりは、青兵衛役だから、医者を探す必要があるね」
「その通りだな。だが、矢が無限にあるとは思えない。ここをしのげれば、勝機はあるはずだ。」
「今までは、目の前の敵を倒せば良かったからなあ。姫子、がんばって矢を避けてね。忍術が得意だよね」
「大地は、体術が得意なんだから、がんばって矢を避けてね」
3人は覚悟を決めつつも、生き残りたいと考えていた。
『しかし、白丸も、大地も限界が近いわ。どうやって、鼓舞すれば、士気が戻るかしら?』
姫子が悩んでいると、声が聞こえた。
「あなたの手には、赤いプレートがあるでしょ!」
姫子がモンテマニーの紋章を見ると、目の前に優しく微笑む少女の姿が見えた。
「さあ、いっしょに声に出して!」
ネコ耳を付けた短い黒髪で、白い着物に、黄色とオレンジの帯、腰巻を付けた少女だった。
少女も赤いプレートを天に掲げていた。
「「輝け! モンテマニーの紋章」」
少女と姫子は、力強く唱えた。
少女の姿は、白丸と大地には見えていないのかもしれない。
それでも、姫子の声に気力を取り戻したみたいだった。
少女は、優しく姫子に微笑んだ。
「紅丸たちは呼べないけれど、それでも、強力な味方を呼んであげるわ。
全騎士召喚呪文レバルト」
倒れかけた姫子を柔らかく抱きしめる手があった。
「もう大丈夫さ。ミエルたちなら、なんとかしてくれるさ」
みやびが言うと、白丸たちの外周で、ミエル、アラン、アリスたちが呪文を唱えていた。
「「「見えない刃大」」」
迫りくる全ての矢が斬り落とされた。
「「「火球大」」」
矢はすべて燃やされた。
大地は驚いた。
「すごい」
みやびは嬉しそうに答えた
「まだまだ、これからさ」
ミエル、アラン、アリスたちが、さらに呪文を唱えていた。
「「「氷の矢大」」」
遠方からの矢が止まった。
姫子は目の前の光景が信じられなかった。
「まさか、弓兵をすべて倒したの?」
ミエル
「そうだよ。みんなの傷を治すね。
アラン、アリスも治すのを手伝って!」
ミエルは、白丸を。
アランは、大地を。
アリスは、姫子を。
「「「回復 大」」」
白丸は、力強く礼を言った。
「感謝する」
みやびは笑顔で、白丸に声を掛けた。
「剣士さん、私と競争しようさ。
どちらが多くの敵を倒せるか?」
白丸は嬉しそうに笑った。
「ああ、もちろんだ。だが、背後関係を吐かせたい。
殺さないように頼む」
みやびはうなずいて答えた。
「じゃあ、始めようさ」
白丸は手当り次第、敵を鞘打ち※で倒していた。
※鞘打ち(さやうち): 刀を抜かず、鞘に収めたまま警棒のように扱う。
降り注ぐ矢を防ぐことに比べると簡単だったようで、白丸は涼しい顔をしていた。
みやびは、相手の顔面には有効打を入れないことで手加減をしてきた。
ただし、顔面は打ってこないと下卑た笑顔を浮かべた相手の顔面だけは人中※に入れていた。
※鼻の下、前歯の辺り
◇
戦いが終わって、白丸は、ミエルたちにお辞儀をしていた。
「おかげで、命びろいをした。感謝する」
ミエルは、真面目に応対した。
「お役に立てて良かったです。おかげさまで、幸せに暮らせています」
白丸は、鑑定スキルを持っていることを隠すために、質問した。
「お名前を聞かせてください」
ミエルは、少し考えてから答えた。
「それじゃあ、わたしたちの店で買い物してください。
そのときに答えます。店の場所は、150年前に有名な人たちが住んでいた場所です」
白丸たちとミエルたちは、店での再会を約束して別れたのだった。
82 伝説に支えられて おわり
第9章 モンテ領に迫る悪と伝説の声 おわり




