サウナーと村
連れて行ってと言ったはいいものの、イルはこの地を知り尽くしトコトコと小動物のように歩いている。
正直俺はついて行くのがやっとという感じ。
イルは途中目当ての薬草を取りながら、いつもの仕事といったような感じで淡々とこなしてるのを、後ろから眺めていた。
更に1時間は歩いただろうか。
イルは振り返り「そんな格好で大丈夫ですか?」と聞いてくる。
俺は『この位の気温であれば暑いくらいだよ』と軽口を叩いた
イルに笑顔で「魔法使い様ですものね」と何だか尊敬した眼差しを向けられる。
苦笑いで流し、サウナストーンを出すことしか出来ないんだけどね。と心の中でつぶやく
「魔法使い様森を抜けますよ」
アーチ状の木々を潜り森を抜ける。
暗いトンネルの中から外に出たような眩しさを感じ
とっさに目を瞑る
ゆっくりと目をあける
そこは、一面まっしろの銀世界 ちらちらと空から雪が舞い降りている。いつの間にか息も白く、吐き出すたびキラキラと凍っていく。
振り返ると緑の木々が生き生きと生えている。
この森を境にどうやら銀世界が広がっているようだ。
とてつもなく寒いといったことも無く、余り寒さを感じない、転生した時着ていたシャツとズボンが特別なのかそれとも、サウナーの効果なのか、、など考えながらイルについて行くと、そこには粗末な作りの村への入口があった、例えるなら色の塗っていない鳥居のような作りの入口であった。
イルは申し訳なさそうに
「ここが、ゴーウ村です。わたしが住んでる村です」
なんだか入った瞬間に分かるほど寂れているというか虚しさすら感じる暗い村にみえた。
イルは家に案内してくれた。
木で作られた、いかにもな小屋のような家だ。ほかの村人の家も同じような作りで大小あれど、、と言った感じ。
「お母さん、お姉ちゃんただいま、お客さんが来たよ」イルは家の中だというのに白い息を吐き出しながら明るい声で話しかけている。
肝心の2人の声は聞こえない
私も『お邪魔します』と声をかけ家へ入る。
どうぞとテーブルに座るように促される。
「魔法使い様本当に薄着で平気なんですね」イルは関心しているようだ。
そうだ心につっかかってた。
『あれ?お母さんとお姉ちゃんは?』
イルは「こっち」と言って扉の奥に部屋に俺を案内してくれた。
『!?』
『これは、、?!』
粗末な作りの寝床が4つ並んでおり、そのうち2つにはイルに良く似た女性、おそらくお母さん、お姉ちゃん2人が横たわっており、体が半冷凍のようになってスースーと寝息をたてて眠っている。
イルは悲しそうに、この病気について話してくれた。
要約すると、
村の半分はこの病気(?)にかかっている。
かつてはこの村も四季があり、貧しいながらも幸せに暮らしていた。ある日を境に冬だけになってしまった。それからこの病気が1人2人と増えていった。
今2人は腰まで凍っている常態だが頭まで氷漬けになると自然に砕けてしまう。
薬草をお湯で煎じて体に塗ると少しだけ進行が遅くなると
最後まで話すとイルは少し涙を我慢している様子がみえた
言わずもがな4つ寝床があったのはイルの父親がかつて寝ていたからだと察したのであった。