41.王達の会議
広い部屋に円形をしたテーブルが置いてある。
その周りに8つのイスが並べてあり、今はシシリアとメイト、エルフ族の長老、海の種族の王、ドワーフの首長、妖精族の王、獣人族の王が座っているが、一つのイスが空席になっている。
「ふむ。やはり魔法は慣れぬな。」
エルフ族の長老が言う。
長老と言っても見た目は30代前半くらいの精悍な面差しをしたエルフだ。エルフは老化が遅く、寿命が600年ほど。この長老はおそらく、400年ほど生きているだろう。
「にししっ。魔法の民は少なく、魔法の民以外魔法を使える者は少ない。慣れないのも当たり前だろう。」
海の種族の者。水人と呼ばれる者達の王は尖った歯を見せ笑う。この王は魚人の形をしていて、エラがある。
水人の寿命は200年と人より長い。
この世界で、魔法を使えるものは妖精族、魔法の民。そして、今空席になっているイスに座る者の種族。魔獣や魔人も使えるが、敵なので除外。
「甘いものあるか?」
そう言って目をキラキラさせているのは妖精族の王。
背中にとんぼのような透明な羽を三対持っている。見た目は小さな子供だが、エルフよりさらに寿命が長い種族なので、やはり、かなり生きているだろうと思われる。
詳しくはわからない種族だ。
妖精族は甘いものが大好きだ。
妖精族の国にお菓子を持っていくと、お菓子がなくなってることもある。だけどちゃんとお金がいくらかお菓子の袋に入れてあるので、文句はあまり出ない。
「しょうがないのう。ほれ。」
孫にお菓子を与える祖父のごとく、妖精王にクッキーを手渡したのは、ドワーフの王。
妖精王より大きいが、他の種族に比べると、ドワーフなので背が低い。ひげを伸ばし、まるでサンタクロースのようだ。
ドワーフの寿命は水人と同じくらいだ。
妖精王は、クッキーをすぐに受け取り、食べ始める。それを見て、ドワーフの王は嬉しそうに笑う。
「ぐるぁ……ぐるぁ。」
獣人族の王は寝ている。
イスが壊れないか心配だ。
獣人族の王は大きい熊の姿をしていて、鋭い爪や牙がある。
獣人族には、このように動物その者の姿をしている者もいるし、人に近い姿の者もいる。
「いつも通りだな。」
メイトがあははと笑う。
そして空席に目をやり、はぁとため息をついた。
「天魔族の王はまだか。また寝坊か。」
「同意見。」
シシリアが呆れたように空席に目を向ける。
メイト様も苦笑いで、シシリアの予想に同意する。
しばらく経って部屋の扉が乱暴に開かれた。
「遅れた。すまん。」
気まずそうに頭を掻きながら現れたのは、赤と銀のオッドアイと黒い片翼を持つ女性。
「来たか。」
天魔族の王だ。
天魔族は、魔法の民の祖先と言われており、魔法を使える種族でもある。あまり他の種族とは暮らさないので、天魔族のことはあまり知られていない。
「して、精霊の民の王よ。何故、我らを招集した?」
獣人族の王を起こしたエルフ族の王が訊ねる。
その横で獣人族の王があくびをしている。
「先日、この国にある学園に魔物が侵入した。」
「国の結界は?」
国のひとつひとつに大規模な結界を張っている。
結界のエネルギーは国によって違う。
「問題無い。地上も地下も、国の上空も壊れていない」
水人の王が首を傾げる。
「なら、どうやって魔物は侵入したんだ?」
「それを考えて欲しくて招集した。何か手掛かりや案はあるか?」
各国の王はそれぞれ考え込むがなかなか思いつかない。
天魔族の王はおもむろに手に魔力を集めた。
そしてできたのは小さめの白い珠。
「我ら天魔は魔物を閉じ込める術を持っている。だが、弱い。魔獣以上の魔物ならば、この術を扱えると考えられる。」
メイトはふむと頷いた後、詳しく説明するように目を向ける。
「例えばだな。魔物がいたとして、この術を魔物に使うと、魔物はこの術でできた珠に閉じ込めることが出来る。だが従わせられるかどうかは術士の力量だ。魔法の民は血が薄くこの術を使えない。」
こっそりとしようとしていたシシリアに向けて天魔族の王がいう。シシリアはがっくりうなだれる。
「ほう。その従属した魔物を封じた珠であれば結界を通り抜けられると?」
ドワーフの王が興味深そうにその珠を眺める。
「分からない。あくまで可能性だ。」
「分かった。情報感謝する。」
獣人族の王がそこで口を開く。
「天魔族じゃないんだな?魔物を侵入させたのは。」
「当たり前だろう。我らはほとんどほかの種族に干渉しないからな。」
「ならば、魔獣以上の魔物。知性ある魔物や、魔人が考えられる。」
その場の空気が張りつめる。
「まさか、ね。あまり嬉しくない事態だなぁ。」
妖精王が軽い口調でいうが、表情は厳しい。
妖精王とエルフ族の王にとって、魔人によって起こされた戦争はそんなに昔のことではない。
「情報がほぼ無い。今、判断するのは難しい。」
シシリアが冷静な声でいう。
「各国で情報を集めよう。妖精王、頼む。こちらでも情報を集めるが、妖精族の方が能力が高い。」
「分かったよ。その代わり甘いもの頂戴?」
「用意しとくよ。」
妖精王はやはり甘いものが大好きである。
各国の王もそれに苦笑する。
メイトが会議で決まったことを言う。
「知性ある魔物、魔人の存在の可能性がある。ここ最近で行方が分らなくなった者、近辺の魔物の変化などの情報収集を頼む。結界の強化も忘れずにな。問題が解決するまで定期的に会議を開く。」
シシリアがその後、魔法の民を各国につけることを言った。
テライトはというと、会議の途中、部屋の前で誰も入らないように立っていた。




