最終章第8話 聖剣さえあれば
巨大な氷塊は私の頭上に出現する。
私は氷塊を避けもせず、氷塊に体が潰されるのを待った。
「すまん……フィンブル」
私は遠くにいるフィンブルに謝り、死を待った。
だが、私を助けるように、一人の少年が氷塊に向けて一撃を放つ。
「不死鳥の炎」
その少年は黄金色に輝く銃を握り、氷塊に向けて銃弾を放つ。
放たれた銃弾は火炎をまとい、降り注ぐ氷塊を水にして溶かした。
水しぶきが舞い、周囲は蒸気に包まれる。
「大丈夫か?」
その少年は膝をつける私に手を差し出してきた。
その強く大きな彼の手は、私に生を与えた。
「あり……がとう」
私は救ってくれた彼にお礼を言う。
「俺の名前は蟻村幸太郎。ひとまずこの戦場から離脱しなくてはならない」
そう言った彼は、少し怪訝そうな表情を見せる。
まるで彼は何かを止めようとしている表情を見せ、彼には戦う理由があるのだと感じさせる。
私は戦う理由があるというのにーー死のうとしていた。
私は自分を悲劇のヒロインだと思っていたんだ。いや、そうありたかったんだよ。
本当に私は、バカなんだね。
私はフィンブルと約束したのだから、ここで死ぬわけにはいかないだろ。
「蟻村幸太郎。私は霜月つらら。私と一緒にこの山の頂上まで登ってくれないか?」
「頂上には何があるんだ?」
「私はまだ見たことないのだけれど、そこには世界を変えられる聖剣があるらしいんだ。だから私は……この世界の王になるよ」
もう私は迷わない。
もう私は仲間の気持ちを裏切らない。
だって私は神の子だ。世界を変える器を有している神の子だ。
「蟻村。行ってくれるか?」
「ああ」
そして私と蟻村は屋上に向かうーー道中でトカゲを見つけたので、私と蟻村はその大きな体に乗って山を登る。
これなら二日かけてもたどり着かなかった頂上に、あと半日でつくかもしれない。
私は希望を抱きながら頂上に進む。
私たちの背には、火の球が剣山に放たれている光景が広がっている。
森は焼けるが、氷が森を固める。
背後からうっすらと漂う冷気を感じ、私はフィンブルたちが生きていると確信する。
待っていろ。お前たち。すぐに聖剣を手にして、お前たちに平和な世界を見せてやるから。
だが世界はあまくはない。
私たちは森の中で空を飛び回る奇妙な集団を見つける。
「大雀蜂!?」
空を飛ぶ大雀蜂の集団は、私たちに気づくと、百匹ほどが私たちを倒そうと向かってくる。
その蜂の集団には、剣を持った者や槍を持った者。銃を持った者や盾を持った者など、多くの武器を有している蜂たちがいる。
「ノウミソ隊。あいつらを殺せ」
剣を持ち、先導している蜂の背後から、百匹の大雀蜂が私たちに倒そうと武器を強く握る。
「仕方ない。不死鳥の爆炎」
蟻村の銃から放たれた弾丸は、蜂の群れを一瞬で死滅させる。
「の……ノウミソ隊長おおおおおおおお」
「うわああああああああああああ」
私たちに襲いかかってきた蜂の群れは一掃された。
だがしかし、一人の男が私たちの行く手を阻む。
「我が名は、マーハウス。大雀蜂の王である」
そう名乗った男は、腰に下げてある鞘から剣を抜き、天に向けてから蟻村に向ける。
「そこのガキ。俺がお前の相手をしてやる」
一騎討ち!
蟻村はトカゲから降り、銃をマーハウスに向ける。
「おいおい。その武器じゃ俺は殺せんぞ」
「死ね。不死鳥の炎」
蟻村は容赦なくマーハウスに火炎を放つ。
蟻村がトカゲに乗ろうとすると、火炎で舞い上がった砂煙の中から、一人の男が現れる。
「必殺、虚実幻罪」
マーハウスが颯爽と走り蟻村の背後に回ると、居合いで抜いた剣で蟻村の背中を斬る。
蟻村は血を吐いて倒れた。
「あ……蟻村!?」




