四百十三話
北上して岐阜市を目指す。
そう決めたのは風に空から偵察を行って貰い、橋が健在かどうかを調べて貰ったからだ。
「あ、そういえば風ちゃんに橋が在るか見て貰って来たら良いんじゃないかな?」
と、夕飯を作っている最中の美咲さんが口にした事で、俺も思い出したんだよね。
何と言うか、随分と二人揃って間抜けな事をしたものだと思う。……良い訳をするならば、風の偵察は対モンスター用の運用がベースで、地形やら道やらを調べる事に重きを置いて、その為に忘れていたと言った感じだろうか。
まぁ、其処からは風が素早く空へ。物凄いスピードで飛んで行った風は、夕飯が出来る頃に簡易拠点へと戻って来て、双葉を通じて橋の有無についてを説明してくれた。
どうやら、北上するルートはしっかりと残っていて、西に行くルートにあった橋は、どうやら今にも崩れ落ちそうだったらしい。
という訳で、俺達は北上して岐阜市へと行くルートを選ぶ。と、言うのをこの周辺の状況やらと合わせて協会へと連絡。
『なるほど、白河君達は一宮に簡易拠点を造り、その次は橋が残っている北上ルートで岐阜市に行く訳ですか』
「えぇ、岐阜市にまた拠点を造ろうかと思ってます」
『それはありがたいですね。とは言え、其処まで行くのに物資は残ってますか? しっかりと帰りの分も考えていますよね』
……品川さん貴女は私の親ですか、と問いたくなるような事を。
とは言え、物資の事を考えれば、岐阜市まで行った後は一度戻らないといけないかもしれない。
計算上十分残るだけの量は持ってきたはずなんだけど、思った以上に移動速度が出ていないみたいだからな。……まぁ、安全と情報収集を重視した進行をしている訳だし。
「とりあえず、周囲のモンスターデータや此処までのマッピングデータも送っておきますね」
『了解しました。では、無茶をしないよう引き続きお願いします』
と言った感じで、協会にいる品川さんには報告をしておいた。
これで、後続で来る人達が居るのであれば、道に迷うことなく簡易拠点まで移動出来るはずだ。……折角用意した拠点だからな。しっかりと整備して有効活用して欲しい。
こんな感じだったのが昨夜寝るまでにあった出来事で、今はと言うと目下岐阜市を目指して北上中なんだけど……。
「よっと! 少しモンスターの襲撃が増えて来た気がするよ」
「奇遇だな。俺もそう感じてる」
どういう訳か進むにつれ、モンスターの襲撃がかなり増えて来ている。
普通に、野良モンスターであればイオの気配やら、美咲さんのアラクネアーマーから出るアラクネの魔石と言う強者の気配。さらには、俺と共にある精霊のウォルの存在でほとんど近くに寄る事が無い。
モンスターの生存本能と言うのは、ダンジョン外だと相当高いからな……間違いなく強者相手に近づく真似はしない。
「となるとだ、よほど自信過剰なモンスター達なのか、それとも異常状態が起きているのかだけど」
「襲ってくるモンスターだけど、なんか恐竜っぽいよね!」
何と言うか「フォンフォン」とでも言う感じで鳴きながら、仲間を集めつつ襲撃を仕掛けて来る恐竜。
あれだ、某恐竜映画で出て来たラプトルみたいなやつ……ただ、そのサイズは五割ほど大きいけど。
跳躍しながら、鋭い鉤爪で攻撃して来たり、体を捻らせながら太い尻尾で叩きつけ。うん、中には空中で一回転しながら尻尾アタックをしてくる奴も。
「討伐自体は割と問題ないけど、数が多すぎて面倒すぎるな」
「突破しようにも次から次へ湧いて出て来るよね」
これは、もしやダンジョン内に入ってしまっているのだろうか? それとも、ダンジョンが近くに在って其処から外へとモンスターが出て来ている? 何方にしても、この状況は非常に面倒臭い。
何が面倒って、大技を使う程の敵じゃないけど数だけは多いという事だ。何せ、この程度のモンスターなら魔力は温存しておきたい。数が多いだけだしね。
「とは言え、何処までこのウェーブは続くんだ?」
「ダンジョンの魔力的なリソースが無くなるまでかも」
確かに、ダンジョンのモンスターや宝箱の復活までの時間が合った事を考えると、なんらかの制限かリソースがあるのではという予想は理解出来る。
ただ。モンスターを外に放出した場合とか、常にリソースなり得る何かをダンジョンが持っていたら……。
「どうするべきかな。強行突破するか、それともダンジョン攻略へと進むか……」
「一応撤退って言う選択肢もあるよ」
とりあえず、今はこの恐竜共の対処は出来ている。ただ……恐竜と言う点が頭の痛い理由だったりもする。
もしダンジョンであれば、巨大な恐竜や下手をしたらドラゴンなんて物も居るのでは? という予想だ。
確かにワイバーンは狩った、狩ったがあれは俺達以外のメンバーも居た訳だし、それにワイバーン以上のドラゴンだったらと思うと。
「正直、近寄りたくないダンジョンだよなぁ」
「これは、ルート変更も考えた方が良さげ?」
「いや、そもそもダンジョンが在ると決まった訳でも無いし……とりあえず、確認が必要だな」
現状では解らない事が多い。なので少しでもその答えを導くために情報をかき集める。
とりあえず、最初にやる事はと言えばこの群れの対処だろうな……さて、逃げるべきか、留まって防戦しながら潰して行くべきか、それとも突撃するべきか。実に判断に困るのだが、どれが一番良い答えだろうな。
――守口達――
戦闘に釣られて出て来たモンスター達だが、どうやら数種類のモンスターが同時に行動していたらしい。
隠れている守口達には気が付いていないようだが、戦闘をしていた二つのグループを囲う様にモンスター達が動いている。
「む……森が騒がしいな……ってこれは!」
「あぁ? 誤魔化し……では無さそうだな」
どうやら彼等も、木々の動きや音から何かが迫っているという事に漸く気が付いた様だ。……正直、戦闘に集中しすぎて周囲を疎かにし過ぎだろうと言いたい。
と、その様なある意味間抜けともとれる行動を取った二つとグループ。それらを囲んだモンスター達がちらほらと森から顔を出し始めた。
「ゴブリンにオークか?」
「いや、こっちに犬っぽい二足歩行の奴もいるな」
「あぁ、コボルトって奴だろそれ」
更によく見れば、ウルフ種やモンキー種等も居る。ただ、少しでも救いと言えるのは、此処にゴリラ系やらオーガなどが居ない事だろうか。
「さて、守口さん。どうしましょうか……割とピンチっぽいですよ」
「まだだろ。まぁ、影でこっそり間引く位はしても良いと思うがな」
そう言って守口が取り出したのは狙撃用の弓。
勿論銃などもあるが、それを使えば音で守口達の存在が此処に居ると言う事がバレてしまうだろう。
「ほれ、お前達も弓で対処しろ。接近して来た奴等は近接武器な」
守口に言われ、全員が弓による攻撃準備。……とは言え、後衛部隊はそのまま待機なのだが。
「良く狙えよ? 間違っても奴等には命中させない様に」
「誰に言ってるんですか。そんな真似するのこの部隊には居ませんって」
「そうそう。これ位の距離なら何の問題もないですよ」
注意する守口にたいして実に頼もしい返事が隊員から帰って来た。
「それもそうか……それじゃ、奴等に気が付かれない様にこそこそとモンスターの間引きミッションスタートだ」
そう守口は宣言しながら、モンスター達の最後尾にいたオークに向かい矢を射た。
これでこの場には守口達、敵対し合っている二つのグループ、そしてモンスターととんでもない乱戦状態になった。
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