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四百十二話

 街の中を散策しているとでも言えば聞こえは良いかもしれない。まぁ、どちらかと言えば廃墟探索なんだけど。


 さて、目的のモノを手に入れようと思えば一番最初に思い付く場所はコンビニだろうか。コンビニであれば店名だったり、タウンマップぐらいは有るはずだ。

 そう言う訳で、真っ先にコンビニを探してみたは良いのだけど……うん、こうきれいさっぱり店名が書かれている場所は破壊され、中に有っただろうモノは綺麗に無くなっていた。


「これって、誰か他の人達が来たのか、それともモンスターが襲撃した後なのか?」


 棚は倒れ、ガラス窓は割れ、壁のあちこちに穴が空いている。

 昨日はさらっと流して見ただけだったから気が付かなかったけど、此処までボロボロだったのか。まぁ、念入りに確認しようとは思ってなかったからな……欲しい物資なんて無かったし。


 とりあえず、これでは他のコンビニ関連も期待出来ないだろう。となると……他だと何処が良いだろうか。

 あまりいい案が思いつかないので、鞄から双眼鏡を取り出して周囲を見渡してみる。


「むむ……こう、何か有りそうな建物は無いか」


 これだと、何処かのお宅にお邪魔するのが一番かもしれないな。……とは言え地図持ってる人って居たのだろうか? どちらかと言うとスマホやらパソコンに入ってるよな。……まぁ、そういった類のモノでも良いから発見出来れば良いんだけど。

 とは言え、民家に入るのはいくら廃墟化しているとは言え……こう、罪悪感が在ると言うかなんというか。


「ま、そうは感じても今は必要な物だし、此処に戻る人は居ないだろうしな。……居たとしても使えないものだし利用させて貰うとしよう。とは言え、持って行くのはどうかと思うからデータだけ貰うとするか」


 開き直っちゃえば楽なんだろうけどね。崩壊した後なんだし、もう捨てられた場所なのだからと。ま、其処まで切り替えられるほど心臓が強く無いって事か。

 ……生き残る為の取捨選択が出来ていないと嘆くべきか、それとも人間性を失っていないと喜ぶべきか悩ましいな。

 とは言え、不法侵入と言う点を考えれば既にアウトなんだけど。いや、この場合って住民ってどういう基準なのだろうな。


 とりあえず、今はどんどん探索をしていくしかないな。当てが外れたわけだし。




 日が良い感じに沈みだす頃まで、街の北部を徹底的に探したモノの全くといって成果がなかった。

 なにこれ、もしかして呪われているのか? と、疑ってしまうレベルだ。

 なにせ、看板や標識などは場所が解りそうなところだけ剥げていて、コンビニやスーパーなどは全て空。パソコンなどは電源を魔道具で何とかしても、どういう訳か全てのデータが飛んでいた上に、スマホはその姿すらなかった。


 そんな訳で、思いっきり落ち込みながら集合場所へと帰還すると……。


「えぇぇぇぇ……ナニコレ」


 思わずと言った感じで呟いてしまったけど、仕方の無い話だと思う。

 何せ、拠点にした場所では既に美咲さん達が戻って来ていて、まったりとお菓子を楽しんでいた。

 しかもだ……。


「そのテーブルの上に広がってるのタウンマップだよね?」

「あたりー! いやぁ、最後のコンビニに入ったら、沢山残ってたよ! ねー」

「一杯有ったの! パンパンに膨れ上がった缶詰とかもあったけど……持ってっちゃダメって言われたの」


 最後のコンビニか……そうか。それならラッキーと言えるのかな?

 後、双葉ちゃんや。その缶詰は爆発するから持ってこなくて正解だよ。


「そっか、こっちは収穫が無かったから良かったよ」

「あー……私達も最後はもう諦めモードだったから。他の場所なんて何も無かったし、住所とか書いてある場所全部削れてたから」

「美咲さんの方もか……こっちも標識とかアウトだったし、何か違和感しか覚えなかったよ」


 こう、人為的な物と言うべきか……。とは言え、誰がこの場所を教えたくなかった者が居るとか、理由が解らなさ過ぎて謎だけどな。


「ま、この辺りに人の気配すらなかったから大丈夫だとは思うけどな。さて、で、此処はどこら辺か解った?」

「えっと、一宮みたい」


 一宮市か……そらまた、随分と北側に進んでしまった様だ。北西に進んでいたつもりだったのにな。

 ただ、そうなるとこの先のルートについて考えるべき事はだ……。


「先に進むとして、問題になるのは川だろうな」

「あー……木曽川」

「そ、今まで通った事が有る川に比べて大きすぎる川だからな……当然だけど橋の問題がある」


 まぁ、関ケ原に向かおうと思ったら、木曽三川である木曽・長良・揖斐を全部通らないといけない……果たして残っている橋があるのか疑問である。


「恐らくだけど、残っている可能性がある橋が在るとすれば……電車か国道が通っていた場所だろうな」


 パッと地図を見た感じだと、電車であれば東海道本線か東海道新幹線の二つ。道路関連ならば高速が有ったE1Aの名神か国道二十二号線だろうか。

 まぁ、電車も自動車道もそれぞれ被ってるような感じだから、ある意味ルートとしては二つなんだけど。


「少し戻って西に向かう東海道新幹線および名神ルートか、このまま北に進む東海道本線および国道二十二号線ルート。そのどちらかが橋が残っている可能性が高いルートだろうな」

「大きい通りだし、橋もそれだけ頑丈に作ってあるから?」

「そういうこと……まぁ、予想に過ぎないけどね」


 とは言え、ダンジョンが出来てからというモノ何か有った時の為に、橋梁補修工事はしていたはずだ。一時期道路の補修工事も頻繁に起きてたからな。

 今思えば、国としてはダンジョンからモンスターが出る可能性を考えていたのだろう。……最悪なパターンで的中した訳だけど。


「で、どっち行くの?」

「悩んでる感じ。関ケ原を目指すなら最短ルートは恐らく西に向かうパターン。だけど、今後の事を考えていくなら岐阜市に向かうのも有りかと思う」


 拠点作りをしようと思えばそっちに行くのが良いだろうし、川幅の広さとかも考えたら……ね。

 とは言え、これらは全て崩壊前のデータを基にした予想だ。ぶっちゃけ、地形が変わったり森が出来ていたりするのだから、川ががらっと変わっていても可笑しくはない。……例えば、更に巨大化していたりとか、寧ろ全く無かったものになっているパターンだって。


「ま、ゆっくり夕飯でも食べながら考えようか」

「そうだね。考える時間は有るよね! じゃ、夕飯準備しちゃうね!」


 さてさて、どっちのルートが正解なのやら。




――守口達――


 さて、此処で装備の違いをチェックしてみよう。

 守口達の装備だが……実は、遭遇する事を考えて実に普通と言えるような装備で来ている。とは言え、普通と言ってもそれは見た目だけの話。使われている素材が全く違っていたりする。

 守口達が見守る彼等の装備が、崩壊前から見て全く変わっていないのだが……守口達の装備は総魔鉄製の装備だ。はっきり言って質が違いすぎる。


 ドレだけ違うのかと言えば……もしこれが、モンスター達が元々居た世界ベースならば、魔鉄製の装備と言えば一人前になった後、ある程度稼げるようになった人達が装備する様な物。言うなれば、一番最初の憧れと言った装備だろう。……次にミスリル辺りだろうか。

 それとは別に、魔鉄製でも無ければ、魔物素材も魔石も使われていない武器と言うのは……駆け出し処かとりあえず装備してみましたと言うレベル。


 そう、明かに装備に違いがあるのだが……その違いを知っているのはそんなにいない。

 何せ、元自衛隊や警察官であっても、魔鉄製の装備などダンジョンで運よくドロップして手に入れた精鋭クラスしか持っていなかった。

 そして、そういった装備は良い言い方をすれば切り札、悪い言い方をすれば秘匿と言う事で、公どころか同じ自衛隊や警察でもその情報が流れる事が無かった。


 そして、今ここで戦っているのは到底精鋭とはいえないような者達。


 訓練はしているのだろう。しっかりと剣を振る事は出来ている。重心もしっかりとしていて安定感はある。

 だが、守口達からしたら、全くレベルが足りてないと言えるような……子供のお遊戯と言っても良い動き。


 守口達がどう見ても……踏み込む力が足りない、力の入れ方や抜き方が雑、駆け引きが出来ていない、更にはスピードが全く足りていない。

 普通に見れば、それでも十分強いのだが……高難易度ダンジョンにすら挑める力を手に入れた守口達にとっては、何もかもが足らなく遅く感じる。


「これ、様子見しなくても制圧出来たのでは?」

「余計な戦闘は要らんと言っただろう。それにモンスターも騒いでいるんだ……っと、ほら来たぞ」


 あまりにもの騒音で、森に居るモンスター達が目を覚ましたり、縄張りを主張したりする為にとこの場に集まり始めた。

 隠れている守口達ならば、今は大丈夫だろう。だが、暴れまわっている二つのグループに関しては……確実にモンスター達にロックオンされている。


「モンスターが襲い始めて、彼等がモンスターを捌ききれなくなったら……出るぞ」


 敢えて最初は助太刀しない。そして、此処と言うタイミングで手を貸して恩を売る方針だと言う守口。

 はたして、その目論見が成功するのだろうか。正直、此処までいがみ合う様な彼等相手では……余計な事を! と言われて終わりの様な気もするのだが、守口は少しでも交渉の余地が出来そうならばというつもりの様だ。

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