二百七十八話
スマートかつ人型化した大木だったモンスター。
奴は、大木時に受けた氷魔法を受けてもなんのそのと言った感じで、凍り付いた部分を次々と切り捨てては再生し元に戻っている。
この凍える寒さの中でその状態なのだから、植物にとって活き活き出来る温度の状態なら一体どうなったのやら……。いや、それがあの大木となった理由なのかもしれないな。
「しかし面倒だな。凍った蔦を切り捨てるついでになんだろうけど、その蔦を俺達の方に飛ばしてくるし」
「蔦だけじゃなくて根もやばいよねって言ったら来たぁ!」
地面の中を根が縦横無尽に動き奇襲を仕掛けてくる。うん、足元から串刺しにしようとして来る……まぁ、よくある戦法だ。だが、単純ではあるものの、いや単純だからこそ威力は絶大とでも言うべきか。
これ、魔力探査が出来なかったら間違いなくグサッ! と貫かれてただろうからな。
「大木の時よりも根の動きが激しいな……あれか? 大木時は実の弾による攻撃に色々と割り振ってたって事かね」
「じゃないかな! あれだけの弾幕を用意しようと思ったら相当な魔力が必要だろうし!!」
と、その様な会話をしながらも、人型植物と化したボスモンスター相手に対して攻撃の手は休めない。
奴がいる周囲の温度を下げつつ、一気に全身が凍結するようにと氷魔法を挟んで行く……が、現状鼬ごっこだな。
凍っては切り捨て凍っては切り捨ての繰り返しだ。
「撤退戦になら良いんだろうけど、倒そうと思ったらこの状態を続けるって選択肢は無しだろうな」
「でも、方法が思いつかないよ。てか、このまま相手の体力や魔力を削るのは有りなんじゃない?」
体力と魔力を削るか……確かに普通のモンスターならそれも可能だろう。しかし、奴は植物なんだよなぁ。
幾らその二つを削ったとしても、奴は地面や大気から魔力を吸収している。そして、魔力を使って体力の回復及び体の再生を行っている訳だ。実に面倒な相手と言える。
ただ、どちらも無限と言う訳では無い。ただし、それは普通の空間ならと言う話。
問題は、此処がダンジョンという事だろう。
「ダンジョンの濃厚な魔力が地面や空気に含まれてるからな……奴はそれを利用してるだろうから、ちまちまと削るのは無理だと思う」
「何それ反則!」
ま、反則と言いたい気持ちも解るけど、それがダンジョンだからなぁ。
むしろ、大木の姿だった時よりも、現状の方が倒せる可能性は上がっている。何せ攻撃するべき範囲が狭くなっているからな。
古今東西。無限に回復するような能力を持っているモノの倒し方なんて、一瞬で消し去るか封印するかのどちらかだ。
大木時であれば、そのどちらも厳しい……と言うよりも無理だ。最初は全身凍結で行けるとおもったけど、ここまで回復能力が高いのは予想外。
まさか、トカゲのしっぽみたいに切り捨ててから復活するなんて誰も思わんよ。
だが、そのおかげで奴は小型化した。うん的自体は小さくなったけど、倒すべき範囲も狭くなったわけだ。
「問題が有るとすれば、奴が簡単に凍った枝を捨てているって事だけどな」
「それをどうにかすれば良いって事だよね! えい、フリーズボムゥ!!」
「奴の全てを燃やすか凍らせるのが先か、奴が攻撃を受けた場所を切り捨てるのが先かって言うレースだな」
美咲さんの凍結する爆弾が炸裂する。が、やはり相手は凍った場所を即座にポイっと投げ捨てる。
「ミャン!!」
そして、飛んで来た凍り付いた枝をイオがその爪で殴りつけて落とす。うん、先ほどからコレの繰り返しなんだが……さて、どうしようか。
「後、気になっているのは根がどういう感じなのかって事だよな。地上部分のを殲滅しても根が残ってたら復活するのかどうかとか、掘り起こせるのかどうかとか」
「根が残ってたらダメとかやめてほしいよ!?」
「んー!?」
美咲さんの嫌そうな返事に双葉も呼応。うん、気持ちは解るがそんなに嫌そうな顔をするな。……言ってる俺だって嫌なんだから。
まぁ、それに弱点だって無いとは思えない訳で。
「ただ、あの植物にもゴーレムみたいに核が有る可能性も考えられるからな……それを打ち抜けば倒せるんじゃないか?」
「核……あるのかな?」
「最悪。魔石を砕けばいいだろ……何処にあるか解らないし、砕いたら砕いたで魔石の入手が出来なくなるけど」
解体すればいい素材や魔石の入手が出来そうなんだけどね。ただ……その場合は放置してドロップに期待という事になる訳だが。
……果たして、この二十一層以降のドロップに期待していいのか謎ではあるけどな。
「それって結局は……一気に相手を行動不能にしないと出来ないって事だよね? 相手の核や魔石の位置解らないし」
「……そうなんだよなぁ。魔力探査も性能が追いついてないのか、その二つの位置を把握出来ないしな」
感じるのは、目の前に居るモンスターと、そいつが張っている地面の下にある根の存在。
実に悔しい話だが、ピンポイントで弱点を打ち抜く為にはレベルが足らないようだ。
いや、撃ち抜くか……アンチモンスターライフル先生の出番か? あのサイズなら奴の上半身を吹き飛ばすぐらい可能だ。いくら蔦や枝で防御しても無駄だろう。
ただ、問題が有るとすれば……奴の動きを抑える為の温度低下と、間に挟む凍結の為に使う氷魔法を美咲さん一人にやらせる事だな。
ライフルで狙いながら魔法を使えない訳では無いが……実は温度低下は結構な精度が必要だ。何せ、防寒具を着ているとは言っても、寒い物は寒い。なるべく相手だけに効果が及ぶように調整している。
凍結魔法もそんな温度調整に合わせつつやっている訳だから、相手を狙い撃ちながら魔法を使うとか事故が起きても可笑しくない話。……簡単に出力で押す魔法とかなら気にせず使えるんだけどな! 散弾銃とか。
ちらりと美咲さんを見る。そうすると、こちらが見た事に気が付いたのか、彼女はにっこりとほほ笑んだ。
学生時代のクラスメイトが見たら騒いだだろうなぁと思う表情だが、俺は知っている……その笑顔、何か面白い事でも思いついた時の顔だと!
「ちょっと試してみるね!」
そう楽しそうに美咲さんが告げ、徐に弓を取り出した。うん、ゆっくり動くとか期待してみていてねって事かな? いや、違うな。
よく見ると、かなり集中しながら矢に魔力を送り込んでいる。ゆったりした動作はあれか、集中する為の作法の様な物なんだろう。
「イオ・双葉。美咲さん集中してるから、ガードを徹底して」
「ミャン!」「ん!!」
イオ達は返事をすると、すぐにそのポジションを美咲さんの斜め前へと移動。
ガードはするけど、美咲さんが矢を撃つ時邪魔にならない様にする位置を選んだようだ。
……しかし、アンチモンスターライフルを撃つかどうか考えてたのに、先に美咲さんが行動するとはな。
って、コレ面倒な温度調整と凍結魔法を押し付けられたのかもな。
とは言え……取り込んだ魔本の事を考えても、俺の方が適材な訳だからな。此処は美咲さんの挑戦に期待するとしよう。
「撃ちます」
美咲さんの宣言が聞こえて来た。なので、まずは凍結魔法でモンスターの腕や足に当たる場所を凍らせるべく、一気に氷弾を撃ち込む。
それと同時に、美咲さんは弓を引いた。
飛んで行く矢は、普通の矢と違い鏃の後ろに何かくっついている模様。あれは、魔石だろうか。となると、あの矢が刺さった瞬間に魔法的な爆発が起こる可能性がある。
「イオシールド展開! 来るぞ!」
そう叫ぶと同時に、自分のマナシールドも展開しておく。その少し後……。
矢がモンスターの胸へと吸い込まれて行き、周囲のと言うより俺の放った凍結魔法を巻き込み? いや、取り込みながらモンスターの体内から大きな魔法爆発が起きた。
「やった! 成功!!」
喜ぶ美咲さん。まぁ、その喜ぶのも当然だろうな。
何せ、彼女の予想通りの結果なのだろう。モンスターは体内から一気に凍らされ、いや、凍結しながら体内から氷の棘を大量に出している。
あれでは……魔石も核も粉砕されているだろうなと予想出来る姿だ。
「何と言うか、巨大な氷の金平糖が体内から発生したって感じだなぁ」
「久しぶりに金平糖が食べたいなぁ……」
「……あの状態のモンスターを見てそれを言える美咲さんの精神が有る意味凄いと思うよ」
まぁ、これで根から再生する。もしくは根の部分に魔石や核が無い限りモンスターの討伐は出来たと思う。
とりあえず、少し様子見と言った感じかな? すぐにあの氷の金平糖オブジェを破壊したい気もするけど、下手に近づくのは問題だろうからな。……とりあえず、銃撃の準備だけしておこうかな。
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話していられるだけ余裕がありますよねぇw




