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二百七十七話

 一日休み魔力の量を回復させた。さぁ、ダンジョンに再戦だ! と言う訳だけど、今回はちょっといつもと違う装備を用意していく。


「……見た目は悪いよね。ていうより、少し動きにくいかも」

「仕方ないさ。完全装備状態の防寒具だからなぁ」


 これでも一応研究所で作られたダンジョン用の防寒具だ。

 ただ、今まで必要で無かった為に開発の優先度は後回し。念のために作られて……他の開発や研究が忙しくなって放置された代物で、新装備としてもテストはしなくても良いって言ってたからなぁ。

 まぁ、作った人達が着用して冷蔵庫の中で生活したらしいから問題は無いと思う。

 だから、見た目も重装備なのも……割と仕方ないと思いたい。


「マナシールドで中の温度調整が出来たら良いのに」

「それはまぁ……燃費的に悪くなりそうだなぁ。まぁ、今回はテスト感覚で良いんじゃないかな? 改良点は……早速見つけた訳だけど」


 体温を守る事を重視した作りだ。しかも、装備としては地上を奪還してから少し後に作られた物。うん、本当に質で言うなら微妙な素材を使っている。

 それ故に、美咲さんの言う通りで動きにくいと言う欠点が有る。恐らく今作れば、もっとこう軽くて硬い装備が作れるはずなんだけどね。


「兎に角、今回は遠距離戦主体だからな。動き回る事も無いだろうし」

「防御はどうするの?」

「其処はイオや双葉にお任せかな? 緊急時は何時ものようにマナシールド」

「ミャン!!」「ん!!」


 今回は魔法重視の戦闘という事で、イオ達には俺達のガード主体で動いてもらう。

 いつもより動きが制限される装備な上に魔法乱発戦だ。動き回るのは色々な意味で厳しいだろうからな。

 それにしても、その作戦上やる事が無いと思っていたのか、しょぼくれていたイオ達は俺にガードをして欲しいと言われると、とたん元気いっぱいになった。……ワーカーホリックではないよな?


「とは言えだ。双葉は作戦上的に色々と大変になるだろうから……何かあったら直ぐ知らせる様に」

「ん!」


 双葉も人型をしているが、ベースは植物系だからな。一応だけど、双葉用の防寒具も用意はしたけどな。

 まぁ、俺達の防寒具よりも素材としては質が高かったりするが……素人が作った物だ。見た目も動きの制限も良いと言える物ではない。

 ただ、双葉の場合はイオに乗って蔦を使って戦うから、動きの制限と言う点で言うなら問題無いだろう。




 準備も完了しダンジョンの二十五層へと移動。

 それにしても、二度目だけど本当この木は大きいな。


「さて、見れば見るほど……作戦が成功する可能性が低そうに思えてくるけど、お試しみたいなモノだからな。気楽に行こうか」

「通用するかどうかを試す。で、良いんだよね」

「そうそう。だから、直ぐ撤退出来るポジションはキープで」

「解った」「ミャン!」


 退路をキープ。そう告げると美咲さんとイオが返事をする。

 双葉は……まぁ、イオに乗ってるのでお察しくださいという訳だ。因みに風は今回お留守番。鳥に防寒具は……流石にね。

 イオも一応もふもふとした物を着てはいる。まぁ、動きを制限されるだろうが……俺達よりはマシなハズだ。


「それじゃ、戦闘開始!」


 開始の合図と共に大木の周囲に氷魔法を使い、温度をどんどん下げていく。

 そして、かなりの温度を下げてから、魔法第二弾目に移行する。

 それはキラキラとした輝く氷の粒で、とても綺麗ではあるが、アレは生き物にとって死を告げる輝きだ。うん、いわゆるダイヤモンドダストみたいなもの。

 ただ、通常の其れとは違い、これは魔法で作られた細氷だ。普通で有るはずが無い。


「とはいえ、時間が掛かるな! っと、イオガード!!」

「ミャン!!」

「双葉ちゃん反対側も!」

「ん!!」


 そう、普通で無いのは効果を出すまで時間が掛かるという事。まぁ、常温から一気に温度を下げつつ、氷を作ってと……まぁ、手間がかかるから仕方ないのだが。

 ただ、その間イオと双葉は大活躍。飛んでくる実などを銃撃やマナシールドを使い、右へ左へと動き回りながら防いでくれている。


 そして、普通で無い理由その二。


「そろそろ来るぞ。マナシールド展開!」


 大木が有る方向に向かって全員でシールドを展開。

 すると、大木に向かって集まっていた細氷達が大木や実に大量の細氷同士でぶつかり……大爆発を起こした。

 ただし、その爆発はこれまた通常の爆発で無く……。


「爆発地点を中心に、一気に巨大な氷を作ったな」

「だね……でも、あの大木。上の方まで凍っては無いよ?」


 この点はちょっと予想外。もっと一気に凍ってくれると思ったんだけどな。

 とは言え、凍結による浸食はじわじわと大木の幹を上へ上へと移動している。

 その内、全て凍るとは思うが……それまでのロスタイムが長い。


「動きは鈍ったけど、まだまだ実による弾幕が来るな」


 まぁ、途中で凍結し落ちる実もあるのだが。それでも、こちらに届く弾は十分ある。

 そんな訳で、イオ達にはガードを続けてもらい、俺と美咲さんは追い魔法をして行く。


「さっさと凍っちゃえ! アイスコフィン!」

「棺と言う割には……全く氷で囲えてないよなぁ」

「それは言わないお約束ぅ!」


 まぁ、余裕が有る。という訳では無いが、多少こういった話が出来るぐらいにはイオ達のガードは硬い。

 ただ……相手もこれで終わる訳が無かった。うん、コンセプトが変わる階層のボスだしな。当然だろう。

 大木がブルブルガタガタと急激に震えだしたかと思うと、それは次第に地面にも及び……。


「地震かよ!!」


 思わず叫ぶ。震度だけで言うなら五や六ぐらいは有るだろう。まぁ、身体能力が向上している俺達にとっては普通に立っていられるのだけど。

 ただ、それを起こしているのが目の前の大木となると……。


「凍った部分が破壊されないのかな?」

「砕けて行くのも織り込み済みじゃないのか? ほら」


 バキバキと音を鳴らしながら、大木の凍っている部分に罅が入り……幹と一緒に砕け始める。

 ただ、驚愕する点と言えば……砕けた大木は立派に形態変化を遂げた。


 うん、あれはどう見ても植物人間です。


 ただ、双葉との違いは、人の姿がベースなのか植物の姿がベースなのかと言った具合だろうか。

 大木だった其れの見た目。それは蔦? 根? 枝? まぁ、それらが集合して形成されている訳で。


「何と言うか……凄く気持ち悪い?」

「まぁ、形を形成している植物の部分が蠢いてるからなぁ……」


 不規則に動く其れは、見る人の正気度をどんどん削って行きそうに感じる。それぐらいに不気味な動きだ。

 そして、その強さも……双葉の蔦を考えれば、脅威と言っても良いと思う。


 何せ、全身を双葉の蔦の様に使える前提で考えればなぁ……しかも、トカゲの尻尾みたいに切り捨てられるだろう。うん、双葉も良く使い物にならなくなった蔦を切り捨ててるからな。

 そして、あの蠢いてる事を考えると、再生能力もあるだろうなぁ。何と言うか、どんどん成長しているというか、大きくなってるように見えるし。


「とりあえず。凍結はある程度まで通用したって感じだろうけど……これ、接近戦闘仕掛けられたら不味いか」

「温度を戻して防寒具を脱ぐ?」


 動きを重視するのであれば、美咲さんの提案がベストだろう。

 だが、このまま温度を下げて凍結を狙うのも有りだろう。と言うか、現状温度が氷点下だからこそ奴の動きが低下している可能性だってある。

 実に悩ましい判断を強いられている訳だが……さてさて、どうしようかな。


 このまま凍らせるのも良いし、あの姿であれば実による弾幕は無いだろうから炎を撒くのも有りだと思う。

 はたして、どちらの選択肢が正しいのやら……いや、接近戦闘をするのも有りか? いやいや、相手が双葉の蔦よりも多い数の蔦攻撃を出来るならば……接近は厳しいか。


 とにかく、今はこのまま氷点下を維持して様子を見るとするか。

 間違いなく、あれは瀕死では無いからな。下手に攻撃をすれば痛い反撃に合いそうな気配がする。

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変身系! いや、これは変身と言うよりもパージ系だろうか?

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