二百七十六話
魔法を乱射しながらの撤退は上手く行えた。
まぁ、最後の方はマナシールドのバッテリー切れになり掛けていたんだけど……。無事だから良しとしよう。
ただ、困った事が発覚した。
「基本の四属性が使いにくいとはね」
「火は飛んでくる実に当たって実が爆破したり炎上したりする上に、周囲を誘爆したりするし……」
「風も似たようなものだな。重い実ならまだ良いけど、軽い実だと飛ばした先にある他の実に当たって爆発か炎上」
「水や土魔法だと大木が活き活きとしだすからね……」
と、美咲さんと話している様に四属性は使い方が難しい。
風や火なら実の攻撃を防ぐのに良いのでは? と思ってしまうかもしれないが、実は全く違っていて……飛来してくる実の数が大問題だったりする。しかも、重さの違いや速度の違いが割と大変なんだよな。
軽い実の後ろに重い実が有る場合、防御の為に弾き飛ばそうとしても……重い実は風で飛ばされないものだから、軽い実がすぐ後ろの重い実にぶつかり爆発。うん、風で飛ばして防ぐと言う意味が無い。
そしてまた、位置が逆転した場合も……重い実が風での防御を防いで後ろの軽い実を守る。
火魔法なんて二次災害しかないのは美咲さんと会話した通りだ。
それならば土や水と考える訳だが、これまた美咲さんの発言通りで相手を強化するだけ。
水魔法による水のやり過ぎで根腐れを起こさせたり、土魔法で栄養過多にするなんて方法もあるかもしれないが、あれだけの大木な上に相手はモンスターだ。
そこに至るまでどれだけ魔法を使い続ければいいのかと言う話になる。
「まぁ、四属性は無しの方向だろうなぁ……となると、派生か?」
「派生だと植物に通用しそうなのは……やっぱり鋼でサークルソード?」
「其れも有りだろうけど、相手が太すぎるからなぁ」
因みに、美咲さんは丸鋸魔法をサークルソードと言っている。
工具で言うならばソーなんだけどなぁ、と思いつつ……イメージが崩れる可能性なども考え、あえてそのままにしていたりする。うん、口にするとイメージがしやすいからな。
それに、ゲーム等の武器をベースに考えるのであれば、サークルソードも間違いじゃないし。円月輪かっこいいよね。
と、それは良いとして、丸鋸魔法を使うもしくはチェーンソーなんて方法も有るが、此処で問題になるのが相手がモンスターで巨木という点だ。
相手のサイズを考えれば切り倒すまでに相当時間が掛かるだろう。そして、その間相手が何もしない訳が無い。
「となると、大量に魔力を送り込んでバカみたいにでかい丸鋸を作るか?」
「それなら、大木を燃やす火魔法ってのも有りじゃないかな……」
……そうなんだよなぁ。馬鹿みたいに大きい丸鋸を作ると大量の魔力が必要だ。そして、其れをやったところで想像通りの効果が出るかは別。
相手がモンスターで大木である事は当然だが、丸鋸を巨大にすればするほど……巨木にたどり着くまでに、丸鋸に対して重くて硬い実などがぶつかる確率があがる。
そして、そんな実にぶつかればどんどん勢いと言うか、魔法を形成する魔力が削られていくだろう。うん、それなら火で木も実も同時に燃やす方法でも大差ないだろう。
どうせ、同じ量の魔力が必要だろうし……確実性なら火だ。まぁ、二次災害で自分たちへのダメージを考慮しなければだが。
「個人的に一番押したいのは氷魔法かなぁ……これが外の世界なら風魔法でも、ある使い方が出来るんだけど」
「凍らせるの? でも、それも割と魔力消費しない?」
「他よりもましかと思うよ。それに、凍結なら恐らくだけど実による被害を抑えられる」
「どちらにしても、魔法主体だよね……はぁ、大変だなぁ」
「接近する方法も何か有るかもしれないけどね……そうじゃないと、魔法を使える人が居ないパーティーとか詰みだし」
まぁ、魔法ベースで考えるのは俺達が魔法を全属性使えるからに他ならない。……いや、今確認されている全属性だな。もしかしたら、他にも有るかもしれないし。
ただ、他にも何か道具を使う……なんて方法も有る。それこそ除草剤と言う手も有るけど、通用するんかね? 今有る除草剤だと、効果が弱くて逆に栄養にされてしまいそうな気もするんだけど。
「とりあえず、魔法によるトライアンドエラーかな? 最悪……研究所に新しい除草剤いや、もう草じゃないから除木剤? 朽木剤? まぁ、名称は解らんが其れを頼むのが良いだろうな」
いや、まぁ、枯葉剤って名前も有るけど……余り良いイメージじゃないしね。毒性とか。
うちの村で作っている除草剤は、魔物素材と魔粉を使った人体に影響が無い仕様となってますので!! と、言ってみるか。……なんだかほのかに感じるブラック臭がする言い回しだけど。
「どちらにしても、消耗品系の道具を作ってもらうのは最終手段で行くから……今日はしっかり休んで、魔力の回復に備えようか」
「そうだね。それじゃ、夕飯を食べて、お風呂に入って、さくっと睡眠かな」
そんな訳で、明日に向けての話合いを終えてから、各自自由行動に……まぁ、夕飯はどの道、協会内にある食堂で取るから一緒に行く訳だけど。
それにしても、一番可能性が有ると踏んでいる氷魔法。これが通用してくれると楽なんだけど……さてさて、どうなるのやら。
━━とある場所━━
「穴が……穴が塞がらないのぉぉぉぉぉ! てか、増えて行くのぉぉぉ!!」
「ダマッテ手ヲ動カセ」
神々しい者や禍々しい者が協力して壁の修繕を行っている場所。
其処では、幾ら修繕をしても拡張されたり、新たに増えたりする穴に対して、全員が悪戦苦闘している。
そして穴が増える度、流れ込んでくる魔力の量も増え彼らの存在を強化しているのだが……強化されたとしても、全く追いつかないのが現状だ。
いや、寧ろ強化されるという事は、現状が更に悪くなっている証拠でもある。
彼らにとっては頭が痛い事を告げる鶏鳴でしかない。まぁ、告げられるのは日の出でなく落陽だが……世界の。
「手は増えないし! ズーちゃんはダンジョンのボスも兼ねてるから、度々呼ばれて持ち場を離れるし!!」
「ソレハ仕方無イダロウ。我ノ仕事ダカラナ」
「あぁぁぁぁ! 早く! 誰か管理者が居るダンジョンをクリアしてぇぇぇぇぇ!! 生贄をよこしてえぇぇぇぇ!!」
「……我等ハ生贄デハ無イノダガ」
生贄などと物騒な事を言う者に対して、ズーフが違うとツッコミを入れるのだが……このような休む事無く、来る日も来る日も壁と向き合い修繕をする。どこぞの当選した時に目玉を入れられるマスコットの元になった大師見たく、壁と向き合い悟りが開けるのではないだろうか。
……否、そもそも此処に居るのは悟りを開いた者達のコピーだったりするので、もう開く意味も無いかもしれない。
とはいえ、このような環境に呼ばれる。それは間違いなく生贄と言っても過言ではないだろう。
ズーフもまた、突っ込みを口にしながらも「コレデハ生贄ト変ワラナイカモ知レナイ」と考えていたりする。
まぁ、世界を維持する為に柱となっているのだから。
「そろそろ! ズーちゃんがこっちに来てから半年ぐらいだよ! もう一人! いや二人ぐらい増えても!!」
「……人には人の生活が有るからな。こちらからコンタクトを取るのが難しい以上どうしようも無いだろう」
愚痴を言いながらも手を動かす。
よく見れば、手を増やしたり毛を飛ばして分身したりと、一人で数人分の働きをしている者も居たりするのだが……。それでも手が足らない。
「うぅぅぅ……結ちゃんリューズをぉぉぉぉ! もしくは生贄をぉぉぉぉ!!」
「奴ニ其レヲ望ンデモナ……」
唯一彼らとコンタクトを取った結弥の名前を叫ぶが……其れが聞こえるはずも無く。ズーフに突っ込みを入れられてお終いである。
とは言え、壁の維持をしなくては世界を守る事など出来る訳が無い。
彼ら行動が報われるのは……何時になるのだろうか。
ただ、言える事が有るとすれば、もう少し頑張れば一人ぐらいは生贄が捧げられる。そんな可能性が有るという事だろう。
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風魔法を使ったアレとは……上空の冷たい空気を一気に下に落とすあれです。ある作品で有名になった、強技ですが……知ってる人も多いのでは?




