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死者たちがあまりにも悲しそうだったので手を伸ばしていたら、いつの間にか精霊に愛されていました  作者: ちょこだいふく


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18.ノアとエルマ

エルマが静かに部屋の扉を閉める。


朝の身支度を終えたリシュアは、まだ少し涙の跡を残したまま鏡の前に座っていた。

けれど表情は、とても穏やかだった。

エルマはそっと息を吐く。


——本当に、頑張ってこられたのですね。


胸の奥が、少しだけ締めつけられた。

そのまま廊下を歩き出した時だった。


「……エルマさん」


声に顔を上げると、廊下の窓辺にノアが立っていた。

窓から差し込む朝日が、髪を照らしている。

エルマは軽く礼をした。


「おはようございます、ノア様」


「おはよう」


ノアはそう返しながら、エルマの表情を見る。


「……シア、元気そう?」


「はい。今日は少し顔色も良いですよ」


その返事に、ノアは小さく息を吐いた。

どこか安心したような顔だった。

エルマはそんな様子を見て、ふっと笑う。


「ノア様は、本当にお嬢様のことがお好きですねぇ」


「……家族だから」


少しだけ早口だった。

エルマはくすくすと笑う。


「ええ、存じております」


ノアは少し気まずそうに視線を逸らした。

けれど、そのあと不意にエルマを見る。


「……話したんだね」


その言葉に、エルマはわずかに目を瞬く。

だがすぐに、柔らかく微笑んだ。


「ノア様は、もうご存知だったんですね」


ノアは静かに頷く。

廊下へ朝の光が差し込んでいた。

窓の外では、小さな風の光がふわりと漂っている。


しばらく、静かな沈黙が落ちる。


やがてノアがぽつりと呟いた。


「シア、自分のこと後回しにするから」


その声には、心配が滲んでいた。

エルマは困ったように笑う。


「本当に」


「昔から、優しい子でしたから」


ノアも小さく笑った。


「優しすぎるんだよ」


その言葉に、エルマは少しだけ目を細める。


きっとこの少年も、ずっとリシュアを見てきたのだろう。無理をして笑うところも、誰かの痛みに、自分のことみたいに苦しむところも。


エルマは静かに頭を下げた。


「一緒に、お支えしましょうね」


ノアは少し驚いたように瞬きをする。

ノアにとってその言葉が、不思議と嬉しかった。

自分一人だけじゃない。

シアのことを大切に思っている人が、ちゃんといる。

ノアはゆっくり頷いた。


「……うん」


その瞬間、ふわりと風が吹き抜ける。


窓辺の光たちが、朝日の中で嬉しそうに舞った。


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