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季節は夏から秋へうつりかわって、世界すべてが色づきを変えていく。
けれど、みどりを失ったぼくには、すべてはモノクロでしかなかった。
みどりは、どれほど待っても相変わらず公園にはこなかった。
ぼくの中で、時がたつほどにみどりは存在を大きくしていくのに、肝心のみどりが、そこにはいない。
みどりのいない、空白の時を重ねるごとに、あのとき抱いたみどりの体温が、感触が色彩をなくすどころかより鮮やかになっていく。
みどりに会えない今となっては、それほど狂おしいものはないのに。
みどりの不在になれさせられるほど、ぼくの想いは軽いものではなかったから、それは当然だろうか。
みどり、みどり、みどり、みどり―――…。
何度呼んでも、もう、もどらないのに。あえないのに。
もしかしたら―――、なんて希望のために、ぼくは何度も声をからした。
手をのばしても、どうしてもどうしても届かないきみに、やっと合間見えることができたのは、それから数日後だった。
その日は、雨がふっていた。
誰もが傘のなかに身を隠して、急に冷え込んだ寒さを感じつつ町をあるいていた。
ぼくは逢坂といっしょに、町を散策していた。
流れていく人、人、人。
その中で、みどりと出くわしたことは、奇跡よりもかがやく、なによりもすごいものだったのかもしれない。
もし、これが運命とよばれるものならば、ぼくは、神様に何回も何回も感謝したい。