【番外編】過去の淫行
王太子ジュリアン様という「極上の獲物」を狙い定める、少し前のこと。
神殿の見習い巫女として暮らす私の日常は、表向きは朝から晩まで雑用に追われる退屈で哀れな日々だった。
けれど、そんな退屈な日々に甘んじるような私ではない。
神殿の最下層、神官たちも滅多に立ち寄らない薄暗い裏手の回廊の奥に、見習い用の小さな自室がある。
石造りの冷たい部屋には、粗末な木製のベッドと、ガタのきたチェストが一つあるだけ。けれど、その一室こそが、夜な夜な私を渇望する男たちが這い寄る、淫らな「聖域」となっていた。
「――ん、ふぅ、あ……そんなに急が急いじゃ、だめ、ですよ……?」
深夜。
静まり返った自室のベッドで、私は二人の男を同時に侍らせ、極上の愛撫を施していた。
一人は、神殿の警備を担う若き神殿騎士・レオン。
逞しい胸板と鍛え上げられた太ももを持つ男だが、今や甲冑をすべて脱ぎ捨て、私の細い指先に触れられるだけで「ひぅ、ん……っ」と情けない声を漏らしている。
もう一人は、神殿に毎日のように出入りする若き御用商人の跡取り・アル。
端正な顔立ちを赤く染め、私の潤んだ瞳に見つめられるだけで、息を荒くして腰を揺らしていた。
(あはは、本当に男って単純。お祈りなんかで神様にすがるより、私のこの身体にすがっている方が、ずっと幸せそうな顔をするじゃない)
私は二人の男の間に寝そべり、ふんわりとした癖毛をシーツに散らしながら、上目遣いで彼らを見上げた。
「レオンさん、ここがこんなにピクピクしていますよぉ……。私のこと、そんなに我慢できなかったの? 可愛いですね……」
私はレオンの引き締まった下腹部を爪先で優しくなぞり、先端を親指で軽く弾くように弄んだ。それだけで、頑強な騎士であるはずの彼の体躯がビクビクと激しく跳ね上がる。
「は、はぁ……っ、エルザ……! お前のその指、どうしてこんなに気持ちいいんだ……。もっと、もっと強く握ってくれ……!」
「だめです。じっくり、ゆっくり……ね?」
私はいたずらっぽく微笑み、もう片方の手をアルの髪に滑り込ませた。
そして、おねだりするように唇を寄せ、彼の耳朶をちろりと舌先で濡らして熱い息を吹きかける。
「アルさんも、私のこと、たくさん愛してくださいますよね……? ほら、こんなに熱くなって……」
「あ、う……っ、エルザ、お前が、お前が愛しすぎるのが悪いんだ……っ! 今日も新しい香油を持ってきた、だから、俺だけにその甘い声を聴かせてくれ……っ!」
「ふふ、嬉しい。でも、私……欲張りなんです。お二人同時に、私をいっぱいに満たしてほしいの……っ」
私はわざと大袈裟に、か弱く、震えるような声で囁いた。
男というものは、自分が一人の女を支配しているという錯覚を好む一方で、他の男と競い合いながら、目の前の一輪の花を貪り合う背徳感にも、脳を焼かれるように興奮するものなのだ。
私は、焦れて腰を浮かせるレオンを制するように、彼のモノに唇を寄せた。
「ん、むぅ……れ、あ……」
あえて濡れた音を大きく立てながら、包み込むように吸い上げる。
ただ咥えるのではない。舌の裏側の柔らかい部分を巧みに使い、レオンが最も敏感な筋の部分を執拗に、優しく、時には強く押し潰すように這わせるのだ。
同時に、空いた右手でアルの秘部を優しく転がすように揉みほぐす。
「ひ、ぐっ……あ、あああ! エルザ、それ、は、だめだ、頭が、おかしくなる……! あぁっ、はぁ、はぁっ!」
レオンは安物のシーツを強く掻きむしり、腰を浮かせて悶え始めた。
彼の硬い腹筋が私の顔の横で波打ち、端正な顔が歓愉に歪む。
その横で、アルは私とレオンの淫らな絡み合いを目の当たりにし、興奮のあまり自身のモノを握りしめ、荒い呼吸を繰り返している。
「あ、アルさん、そんなに寂しそうな顔をしないで……? ほら、ここ、私の温かいところで、アルさんを迎え入れてあげますから……っ」
私はレオンの口内奉仕を一度切り上げ、溢れた蜜を指先で拭って、自分の太ももの間に塗り拡げた。
そして、アルを私の上に招き入れる。
「ゆっくり、入ってきてくださいね……? 壊れちゃうくらい、おっきいですぅ……っ」
「あ、ああ……っ、エルザ、エルザ……っ!」
ゆっくりと、けれど確実にアルが私の中に沈み込んでいく。
私はわざとらしく首を反らし、大袈裟に、けれど最高に可愛らしい喘ぎ声をあげて彼の首にしがみついた。
「ん、あぁ……っ! アルさん、すごいです、おっきくて……私、壊れちゃいそう……っ!」
「は、はぁ……っ、エルザ! お前の中、どうしてこんなに……あ、熱くて、私を締め付けるんだ……! 離したくない、このまま、お前を、融かしてしまいたい……っ!」
アルは我を忘れて激しく腰を振り始めた。
私は彼の動きに合わせて、体内の筋肉を細かく「締め、緩める」という高度な技術を繰り返す。
男のモノを根元から先端まで這うように締め付けるこの技術は、どんな男も一撃で虜にする。
さらに、私はそれだけで満足しない。
アルに抱かれ、彼が激しく突き入れる衝撃に身を任せながら、横で息を切らせているレオンの方を向いた。
「レオンさん……寂しいですか……? ほら、お口で、もっと私を気持ちよくして……?」
私はレオンの口元に、自分の熱を帯びた指先を差し出した。
レオンは獣のように私の指を吸い、そのまま私の胸元へと這い寄ってくる。
片方の手でアルの背中を抱き、もう片方の手でレオンの濡れた髪をかき混ぜる。二人の男が、私の身体一つを求めて、汗を散らし、荒い息を吐き散らしている。
「あ、あんっ……そこ、すごいですぅ! アルさん、もっと、激しくしてぇ……っ! レオンさんも、もっと、私を、吸って……っ!」
私の自室は、男たちの甘い喘ぎ声と、肉が擦れ合う下品で淫らな音で満たされていく。
神殿の神聖な祈祷の音なんて、この快楽の嵐に比べれば、ただの雑音に過ぎない。
私は、国中が崇める「本物の聖女」コレット様の、あのすました鉄仮面のような顔を思い出し、心の中で嘲笑った。
(ねえ、コレット。あなたは今夜も、冷たい礼拝堂で神様にお祈りを捧げているの? かわいそうに。男をこうして跪かせて、自分の身体一つで世界を支配する快感を知らないなんて。あなたにどんな強大な魔力があろうとも、女としての幸福は、私の足元にも及ばないわ)
「おおお! エルザ、エルザァ! お前は、私の、私の女神だ……っ! はぁ、あ、あ、出す、出すぞ……っ!!」
アルが限界を迎え、私の最奥に熱い生命を何度も注ぎ込んできた。
彼はぐったりと私の上に覆いかぶさり、心地よさそうに息を整えている。
「ふふ、アルさん、お疲れ様です……。でも、次はレオンさんの番ですよ?」
私はアルの体をそっと押し退け、今度はレオンを私の体の上へと導いた。
すでに限界まで硬り狂っていたレオンは、飢えた獣のように私を押し伏せ、強引にその熱源を突き入れてきた。
「ひゃうっ……! レオンさん、激しいですぅ……っ! でも、もっと……もっと私を、壊して……っ!」
二回転目の、激しい交わりが始まる。
アルはベッドの脇で、私たちの淫らな行為を恍惚とした表情で見つめながら、私の手を握りしめ、指先を吸っていた。
こうして、私は毎夜、複数の男たちを私の毒で満たし、従順な犬へと仕立て上げていった。
この技術とあざとさがあれば、どんな高貴な男だって、私の足元に跪かせることができる。
そう、あの若く端正な王太子ジュリアン様だって、私のこの身体一つで、簡単に寝取って、おもちゃにして差し上げられる。
暗い自室のベッドの上で、私は男たちの熱い吐息に包まれながら、さらなる高みへの略奪劇を思い描き、冷たく、優雅に微笑むのだった。




