第17話 物語の終わり。
あれから半年が経った。冬は終わり、夏。この町は緯度が高く、日差しが強い。日没は21時になることもある。
気温は20~25度。涼しくて過ごしやすいが、日差し対策は必須だ。
麦わら帽子をかぶり、真っ黒のサングラスを付け、長袖。日差しを舐めるとすぐにやられる。
俳優兼ダンサーとして舞台に立ち、なんとか食べていけるようになった。いや、実際厳しい。
今の公演が終われば、次の舞台のオーディションが始まる。それを通らなければ、収入はゼロになる。
本当はダンスだけやりたい。けど、それだけで生きていける人なんてほとんどいない。
有名なダンサーだって、歌手だったり、俳優だったり、他の何かがある。
どうしてダンスだけじゃダメなんだろう。ってずっと考えてる。
毎日、舞台が終わって、家に帰る途中。あの海岸に行く。
リリスと出会った場所。
ほんの一回、踊りを見てもらっただけ。彼の演奏を聞いただけ。それだけだったのに。
ああ。寂しいな。と思った。
リリス。青い髪の悪魔。いや、もう天使だ。
誰もいない夏の夕方の海岸。防止もサングラスも取って、あの日のように踊る。
人前で踊れないトラウマも克服した。というか、あんな無茶苦茶な経験したら、なんかもう何にも怖くなくなった。
一回死んだんだもん。私。殺されて、生き返って、天使に出会って・・・
そして、リリスと別れた。
体が止まる。
ウクレレの音が鳴る。
「もう終わりかい?」
顔を上げる。そこには、あの場所に座って、ウクレレを弾いているリリスが居た。
「え・・・?ウソ・・・本当?なんで・・・?」
信じられない。どうしてここに。
「どうして?あなた、天使になったんじゃ・・・」
「ああ。それはね。君に会うために、天使を辞めたんだ。」
リリスは穏やかな顔で、ウクレレを鳴らしながら答える。
「辞めたって・・・」
「まぁ、ちょっとね。」
リリスがそう答えた時、ガブリエルが現れる。
「あなたは、ガブリエルさん。」
「ちょっとじゃねぇだろ。お嬢さん。このバカ何したかわかるか?」
「何をしたの?」
「天宮の半分を爆破した。」
「・・・はい?」
「地上に戻るんだ。つって、四大天使相手に殴り合いをして、その余波で吹っ飛んだ。」
「・・・」
あまりの唐突さに、開いた口が塞がらない。
「だからこいつは、もう天使じゃない。天界を追放されて、また堕天使、悪魔に落とされた。」
「・・・」
リリスは何も言わず、ぽろろんとウクレレを鳴らす。
「その後地獄に落とされて、地獄でも地上に行くんだつってサタンとアモン相手に3か月殴り合いしてとうとう地獄も追い出されたろ。」
「・・・それで遅くなったってわけさ、」
ぽろろん。
「もう二度と天界には戻れないからな。そして二度と戻ってくるな。」
そう言ってガブリエルは消えた。
その瞬間、女はリリスに飛びついて、抱きしめる。
「会いたかった!ずっと!ずっとずっと!!ずっと!!」
ぼろんぼろん泣きながらリリスを抱きしめる。
リリスもそれに答える。
「僕もだよ。」
夏の夕暮れ。抱きしめあう二人。それがふと離れて、女は言う。
「ねぇ。」
リリスは答える。
「ああ。」
リリスが演奏する。
女は踊る。
日が沈んでも。
いつまでも。
終わり。




