借り物競争 そのお題は偶然?
色々端折った部分もあり短めになってしまった。
競技一つ一つの模様を展開するのもアレですしね......
文章を何度もつけ加えてしまいすみません......
色別対抗の5走者で競い総合順位を決める借り物&障害物競争。
借り物競走は通常の徒競走と違い指定された品物を友人や観客から借り、それを持ってゴールするというもの。通常の徒競走と同じようにスタートし、走者はコースの途中に置かれた紙を拾いそこに指示された品物を借りてくる。今回はそれに障害物を取り入れたものになっており、スタート時と指定の物をとってからの、合わせて二回トラックを周回しゴールする。
単に走るだけじゃなく、引く物によって有利か不利になるかが決まる運気も左右される競技。
俺は頭の中でルールを念入りに確認しスタート合図を待つ。
第1走者は紅組からは俺、蒼組が海音君、翠組が眼鏡、黄組が長身、桜組がチビ......
俺もチビだから人のこと言えないけど、俺がそう印象づけてるってことは逆にそう思われててもおかしくない。しかし良く見ると若干、勝ってるような気はしなくもない。まぁそんなちっぽけな差で喜びを感じても――
チビ男では数センチの誤差さえ比べても虚しいだけ...... か。
僅かながらも優越感を満たせない背の有無は置いとくとして、グラウンドを見てみる。
競技の準備は出来ているらしく、それぞれのレーンに沿って設置された遊具が数個。
まずは、ぐるぐるバット。次いでジャンピングホッパー。次に両足を制限し移動する為の紐。そのほか平均台、キャタピラ、編みくぐり等――
これまた鉄板の障害物だけど、お題によってはやり辛く感じる箇所は必ず出て来る。
ハンカチやタオルなどの軽い物だと俄然、有利に。逆に借りづら――ある意味では入手し辛いカツラや、取ってくるのに時間が掛かる黒板消しなどは不利になる。
時として、重量過ぎたり、入手が困難なもの、探すのに手間が掛かかりそうなもの、ヒ〇タよりサ〇ラ派に見える人、というような判断に困るお題なんかも出てこないとは限らない。そんなことがあるのは稀だと思うけど...... ましてや校内、借りれる物にも限度ってものがある、一つの競技に時間をかける訳にもいかないだろうし。
だから基本的には。
・みんなが持ってるもの。
・誰でもすぐ貸してくれるもの。
・軽くて誰でも簡単に持ち運べるもの。
・壊れにくいもの。
それらが出て来ると考えていい、心配は杞憂だろう。
《さぁて準備は整いましたでしょうか――》
俺がそこまで思考した所でアナウンスが始まった。
自分を含め、四人とも構えに入る。当たり前に自分のレーンから逸れたり、一つでも障害を避けたりすれば失格だ。早さよりかは慌てず、一つ一つの障害を越えることに集中しよう。
《鬼が出るか蛇が出るか、はたまた恋が生まれるかも知れない。果たしてどんなお題が出て来るのか私自身、非常に楽しみな競技でもあります...... お題によって左右されるであろう、借り物&障害物競争。いち早くゴールテープを切るのはどの組になるのかっ!》
「では、位置に付いて、用意......」
――豪快なピストル音と同時にみんな一斉に前へ出ると置いてあるバットを手に取った。
俺も同じくバットを手に取り、柄に額をつけぐるぐると回る。
多分ここまでは皆一緒だろう、5回まわり終えると次はジャンピングホッパーだ――けど全力で回ったせいで頭がクラクラして身体が思うように動かない、そうこうしてる間に皆は先にいってしまい俺はやっぱり遅れを取ってしまった――
***
遅れを取ってしまったけどキャタピラを何とか動か、ない...... 少してこずりはしたものの次はいよいよお題だ、他の皆はもう借りにいってるだろう、早く追いつかないと。しかしこれは酔う、初めのぐるぐるバットが地味に効いてるな...... 個人的には一周で良いと感じる。
俺はやっとのことでコースの途中に置かれた箱の中から紙を引くとそこに書かれていたのは。
『自分の性別と異なる異性』
異性、俺は男つまりは女性を選ばなければならない...... うん、無理だ。
そもそも人間である必要はないか、人も動物の一種なんだ。犬か猫を、いやどうだろ見つかるか――そう考えた所で紙にはまだ続きが書いてあることに気づいた。
なお、紙に指定されたもの以外の物や性別が違う異性を連れてゴールテープを切った場合失格と見なす。
第一、異性は人間でなければならない。
第二、指名人は任意でなければならない。
第三、両手を使う障害物以外は常に手を繋いでいなければならない。
第四、一度選ばれた人は次の走者では選べない。
と書かれてる。
人...... それは頭に入れてなかった。しかも異性だって? これじゃ借り物競争じゃなく借り人競争じゃないか。借り物競争は人も含まれることはあるにしても、異性、それも任意って――――
「芽森さん俺を選んでくれ! 決して後悔はさせない」
「こ、こんな所で言うのもなんだけさ。俺実は芽森のこと......」
「いや、俺と、 俺、お前となら一人だけじゃ辿り着けないような世界にも、二人でなら行けるような気がするんだ...... だから」
「君と二人で走りたいんだ。ただ純粋に、決してふしだらなことは頭にないから、アクシデントで密着したりとかこれっぽっちも期待してないから。だ、だから、僕を選んで欲しいですっ」
なにかプロポーズや告白みたいな台詞が聞こえてくるような、いやそれもう出ちゃってるから、ってかRさんこんな所で何してるんですかっ。そもそもこれただのお題、だよな。
そういえば、今気づいたけどちょうどコースの横は紅組のテントだ。
でも何で紅組のテントに集まって――そう思った直後、疑問はすぐさま解決された。
近づいて男子達の紙を見ると『自分の性別と異なる異性』と書いてある。
同じお題が数個、偶然にしては出来過ぎる。誰かが仕組んだのか、それとも初めから......
《おおっと、どうしたのでしょう。走者が全員紅組のテント内に集まっている、一体どんなお題が出ているのか気になる所》
アナウンスの反応からしてそうなるようにはなってないようだ。
どちらにせよ早くい、異性を見つけないと。
それにしても男子達の魂胆が見え見えだ、異性ということで芽森さんを譲ろうとしない様子が伝わってくる。別に可愛い人や華奢な人等の制限は書かれていないんだ、他の女子を指名する選択だってあるだろ。芽森さんや芽森さん、芽森さんに芽森さんとか......
かくいう俺自身も芽森さんを指名しようとしてることは否めない。どうする、芽森さんを諦めて他の女子を指名するか。でも俺にそんな度胸は...... けど問題は彼女自身だ、任意ってことは断ることも出来る訳だし。
決めかねてる俺と、芽森さん一択の男子達。こんな所で時間を喰ってるとプログラムにも影響が出てしまう。早く決めないと——
紅組のテント周りに走者が四人、違う。海音君も合わせて五人だ。
いつの間にか俺の隣に立っている彼もこの状況の空気を読んだに違いない、けれども流石にあの中には入っていけないのか、俺同様に男子達を傍観しながら決めかねてる様子。
少し離れた位置で俺達が客観視してる間にも三人の男子は芽森さんに選ばれようとジリジリと迫る。
犯罪ギリギリの顔とは言わないにしてもその何ともいいからぬ欲が表情に出てしまっており、同じ男であってもどこか引いてしまう。とはいえ、あんなに欲をさらけ出せるのは凄いことだ。
「あ、あの......」
笑みを作ってはいるも明らか眉毛が下がっていて、傍から見ていても臆しているのが分かる。
男子が一歩距離を詰めれば、彼女もまた一歩距離を開けるように恐る恐る後退してる。
「芽森、さっさと決めろよ。時間推しちまうだろ」
「こういうお題はほんと、アレだよね、アレ? 何だっけ。けどけど~、メモリンは何て罪作りな女...... なんてね、でも早く決めないと次の走者が困っちゃうのは確かだと思うよ」
宮村さんや立花さんが急かすのは当然、こうしてる間にも次の走者が待ってるんだ。
芽森さんもそれは言われるまでもなく分かってると思う。
決めあぐねること数分、後ずさっていた芽森さんだったがやっと動き出した。
顔を上げ前を見据えた芽森さんに期待を膨らましたであろう男子達、しかし残念ながら彼女はその三人をすり抜けこちらの方へ...... 来る?!
テントのすぐ横で見ていた俺の期待は高まるがすぐさま頭を冷やす。
いやいや俺の可能性はないか、多分海音君だろう、海音君か...... というかお題を選ぶだけで何でこんなにへこまないといけないのか。借り物競争ってこんな気持ちになる競技だったのかと今更ながらに思う。しかしお題がお題だけに緊張感が凄い。
少なくてもそこで全て出し切り真っ白になっている男子達より俺を選んでくれ――いやそれは多分慢心だ。
単に俺が彼の横に立っているってだけかも知れない。俺も向こうにいたら彼らと同じ灰になっていた可能性が......
《この状況、なんとなくお題の内容が分かってきました、これはずばり、『好きな異性』ということでしょうか。しかしながら珍しいこともあるんですね。全員が同じお題とかわたくし見たことがありません。これはもしや不正か、細工なのか、いやっ大いに結構結構コケッコこう...... さて現在の惨状ですが、翠組、黄組、桜組がいち早く紅組の紅一点、芽森文音に近づいていくもことごとく惨敗、つまり彼女に選ばれなかったということですね、好きな異性ではないと》 」
アナウンサーもようやく状況を理解したようで実況を再開させ始めた。
けどその内容は、男の自身を失いかねない......
こういうのを死体蹴りというんだろうな、彼らのライフはもう0だろう。
大勢が見てる前でこれ以上の説明は恥ずかしいことこの上ない。ただ一つの救いは彼らが別のクラスの男子であること。自分のクラスが気まずくなるのは嫌だしというか今、絶賛喧嘩中だった。
《見ている私までドキドキしてきました、男子達の求婚、もとい誘いを断り向かう先は二人の男子、しかし私ならイケメン男子に行くかな、隣の男子は...... うん。さて彼女の心を射止める男子は》
もはや言いたい放題の実況アナウンス。
誰か彼女の今しがたスベッたギャグを掘り下げてやればいいのに......
そう頭の中でぐるぐる思考を巡らせてる中でも、芽森さんが近づいてくる。
これは奇跡、はいいすぎか。それにこんなチンケな奇跡はないだろうし。
一つ仮設と立てて見る。
海音君=イケメン、背が高く男を感じてしまい恥ずかしくて近寄りがたい。
俺=自称フツメン、少しばかり面識があり背が低く男を感じなく近寄りやすい。
結論がでた、そういうことなのだろう。
もしくはアナウンスに早されたからか、単に面食いと思われたくない私情からか、芽森さんは左に立っている海音君、ではなく俺が立っている右方向にゆっくりと歩いて......
けど今は消去法でも妥協でもなんでもいい、この中で一番芽森さんにとって俺は信用に至るということだ。
多分そうであって欲しい......
そして、芽森さんは「あ......」と俺に声を掛けよう——とした瞬間、誰かが俺の手を握る感触がした。咄嗟のことで思考が止まる。
俺の手を握ってきたのは楓さんだった――
やっぱり一回では終われなかった......
次話に続きます、それで今度こそ体育祭は終わりです。




