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《ヒロイン》なればこその苦悩


 本当にいた……


 扉を開けて目に入ってきたのは栗色の髪をした女子生徒の後ろ姿。

 予想していた通りだったからこそ思わず声を出すのに躊躇したが吸い込んだ息をそのまま吐き出すように緊張を解き放った。



 君だったんだねーー




 そんな俺の問い掛けに彼女は肩を弾ませピクリと反応。


「かいと?」


 親しい人の名を呼ぶが、それは人違いというもの。ただ分かりきってる様子なら屋上から見下ろすように否定してみせた。




「な、わけないか。ドッペルゲンガーだったらともかく、ここから"姿が見えてるもんね」



 海音君は今まさにグラウンド上で部活に励んでる最中、この場所にいるはずもないと、彼女、滝川さんは呟きつつも、景色を眺め見るのをやめて此方に振り返った。栗色の髪を揺らしながら……




 滝川真央さん。



 肩までに伸ばした波打つような髪型ショートウェーブの女子で。

 海音君グループというより、信也くんと小鳥さんと同じく仲間内の1人。


 特徴的な声からツンツンとした耳触りのいいーーツンケンとした言葉使いに身長が小さめながら威圧感のある風貌と佇まい。少なからず海音君と話す中で滝川さんとも言葉を交わしてるはずだけど。


 たぶん向こうは俺の印象なんてこれっぽっちもないように思う。いや、もしや海音君の妹、唯華ちゃんの事で根に持たれてるかもしれない…… それはさておいて。



 こうして前を向かれると目線が同じ、面と向き合うと吐き出した緊張感も戻ってきたみたいで。しどろもどろに……




「で、あんたは。わざわざ屋上に足を運んで来たってことは私に用があるんでしょ」


「ああっ、うん。君に話があるんだ」




 今、教室中で噂が流されてることの有無。

 意図的に引き起こされた二つの事象。立花さんの問題以前に元のもと、噂の出所という発端を辿れば行き着いた先には彼女、滝川さんがいたということ。それが全ての元凶になったと言えるのかは分からないけど、火の元であることに変わりはしない。



 だから屋上にまで来ていたワケは聞かない。

 おそらくそうした前置きも要らないはずと。




「"芽森さん"のことでーー」




 それを口に出した途端、緩やかな風が頬を逆撫でる。どこか察したかのように彼女の雰囲気も変わり、場は沈黙に包まれゆいたが表情を崩さないまま返答が返ってきた。




「…… 私がやったという証拠でもあるの?」



「まさか、そんな探偵みたいな真似事は出来ないよ」


「なら、当てずっぽうで決め付けちゃってるわけ?」


「決め付けに、なるのかは、一旦置きに」



 臆すことなかれよ…… 

 耳に入ってくる声が心地良いだけに尚のこと尖ってる宮村さんや辛辣な楓さんに比べたら全然まだかわいい方だと。

 ツンケンとした威圧感はあっても視線を外さない。視線を逸らしたらダメだと俺は。八神さんに同じく判断材料となった箇所を口から出していく。




「えっと、決定打になった。違和感を抱いたのは海音君達が映ってる写真を見た時かな。あの中で誰が一番怪しいのかと考えてみた時、まずは芽森さんと海音君は当人者として省けて。次に楓さんは芽森さんの親友でいてるから確実にない。立花さんも結果的に被害者でいたなら、僕と信也君は互いに犯人を探そうと結託、小鳥さんも人柄的に裏があるようには見えずーーそんな風に色々想定して絞り込んで行くと滝川さんしか思い浮かばなかった。何より海音君と一緒にいてる中でも芽森さんに敵意を向けてるとしか思えない様子でいたり」


「……」


「あ、それから、今日の昼休みにも。信也君の言葉に何か苦虫を噛んだような、俯き加減で沈んだ表情をしていたから…… それから」


「白々しいわね。十分、そろえて来てるじゃない」



 矢継ぎ早それ以上はいいと止められた。

 ムカッとしながらも決め付けじゃないことは分かってもらえたみたいだ。と、そうなると早くにも。

 



「聞いてれば不服な所もあるんだけど、でも、正解も正解よ。材料(写真)を投下したのは私」



 サラりと正直に白状はくじょうしてくれてみせた。


 信也君の家で見せてもらった学校の裏サイト、掲示板の中で仲間内でしか取れない写真が何枚か貼られていたならそれが一番のヒントとなりけり。

祭り行事の時の集合写真、そして海音君と芽森さん二人だけを切り取ったような写真まで…… その時は気付かなかったものの信也君も何か察してた感じだったって……




「あれ…… そういえばサイトには何らかのパスワードが必要だったはず」



 疑問が思わず口からこぼれた拍子ーー





「知ってる? 女の子はね。"好きな人"の為には何だって出来るの。少なくても…… 私は」





 その顔に浮かんでいたのはニヤリとした打算的な邪悪な微笑みーーなんかじゃない。どこか含みを持たせたような不安気な笑みにも見えて。


 ただそれがどういうことを意味するのか、理解を示している様子なら俺は彼女に向けて問い掛ける。



「だったらなんで、海音君はこんなことをして喜ぶ人じゃあーー」




「そんなこと、あんたに言われなくても分かってる!!」



 

 察すれば。こちらの声が書き消されるほどの声量で感情を露にする滝川さん。取り乱したのも一瞬。息を整わせると、静かな声のトーンで。




「ねぇ…… 【わたこい】って観たことある?」



「え、ああ。確かテレビドラマの」



 なぜ今その話題タイトルを出したのか。

 またしても疑問に思ったのも僅か、滝川さんは鬱蒼とした顔でそれを告げいた。





「あれ、あの主役の子、芽森さん(……)だと思わない?」




ラブコメ渦に巻き込まれる。


ここまでもがあらすじ通りではあるんですけども。

お節介と対話による主体(受動)的行動、影の薄い主人公が介入するなりで《ヒロイン》と接点を持っていけば話の形も変化していくとーー


200話数近くまで掛かっての持たざる説得力の程。

それを成長と捉えられるか、ご都合主義に感じるのかは……



※エピソード87、88部分参照

<ある日の話題、わたこい>

<彼女が勝利者としてーー>

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