身の丈に見合った、身の上話し
果たして。
問題がこれで無事解決出来たかどうか……
先輩達の他、八神さんについての有無。
先行きが心配とはいえ広がり行くような火種は説得の末に防げたと、思っていいはず。と。
俺が、そんな不安を抱えんとしている一方。
「だから言ったろ、裏腹に感情を逆撫でるじゃなし。ひょうきんな性格を正せとまでは言わねぇけどもだ。これに懲りたらちっとは周りを見るようにすることを覚えておけってこった」
「塚っち……」
一息ついた今、この場に置けるお邪魔虫が誰かは言うまでもなく。
いつぞやの乙女チックな宮村さんの手前。
一歩引いた位置へ下がれば透明人間と化す。
「おいおい。かといって、そんな急にしおらしくされたんじゃあ調子が狂っちまうよ。ただまぁ、少しは自分自身の視野を広く持てよっつう話であってだな」
横並びに<信也君>と<立花さん>は事を終えたという意味でも何だかイイ雰囲気に…………
「ーーこれ、バレてないと思ってた?」
否、秘めたる純情心。
『ぜ、絶対だかんな…… !』
釘を刺されたのなら以外な一面があった宮村さんの時とは違う。
間に雰囲気も何もあったもんじゃない。
先程の盾となりて話し合いに興じる様が嘘だったかの如く、不協和音な空気が漂い始める。立花さんは身体を折るように謝り姿勢を取ると見るや、ゆっくりな動作で手を足にまで伸ばすと靴を脱いでは何かを取り出した。
「私さ、自分が利用されたりするのは嫌いなタチってなもんで毎日使ってるサイトやアプリなんかを汲まなくチェック入れてるんだよね。で。ふと、なーんか妙に違和感を感じるなと確認してみたんだよ。そしたら……」
一転して何やら雲行きが怪しくなってきたが。
周りをかき乱そうも自身に関してはノーチェック気味。情報に長けた疑い深い立花さんの靴に入っていたものの正体、それは。
「見たところ"GPS"ってやつかな」
そうチョコ○ロネ、じゃなかったよん……
超小型GPS、分かりやすくは発信器。
色々とおかしい部分はあるがそこは気にすることなかれよ、予め立花さんの靴に仕込んでおいたんだ。追跡機能を組み入れた小さな電子道具。また使用用途によっては悪い行いにも使われることが多いアレ。その印象通り、立花さんは手に持った物をかざしつつ信也君をじっとりと睨み上げる。
「共有してるならいざ知らず、本人の合意がない状態でこういう行為をすることを何て言うか知ってる?」
「え、なにって」
動かぬ証拠だと言うがまし。
信也君は知らぬ存じぬな振りをして見せるが……
ここであれ? ちょっと待てよと。
思考を巡らせれば、つまりは俺の方から信也君に連絡するまでもなく。既に立花さんの居る場所を特定出来ていた…… だとしたら無駄骨無駄足じゃないのか。
心狭しとやるせなく感じてしまうが。いやにそう考えること自体おこがましいというもの。むしろ、それこそが自分にふさわしい有り様だと納得する他ない。身の程知らずが身の丈に合った振る舞いをした結果なんだ。
あの日、友を裏切った時点で成りはしないのだと…… 脳内がマイナス寄りで渦いてしまう中。
彼はやがて観念したようにーー
「ちなみにこんなのもあったりして……」
あろうことか。
手を服に入れてはゴソゴソ、中から取り出したのはGPSと似たような代物だ。そしてその流れから。ちゃららら~ん……
ボイスレコーダーぁー
お馴染みかつ、まるで便利な道具とみるかのように高々と名前を読み上げると立花さんには物を言わずしてくるりと、後ろ手の俺に目を合わせてはドヤ顔且つ。パチンと片目を閉じて目配せ。
「まっ、こういう証拠は録っておくのが早いからな」
「そんなの考えもしなかった……」
ボードゲームで例えれば2手3手先を読むこと。用意周到なら保険を掛けるなり準備を怠らないという意味。
無鉄砲野郎との比較から驚いた拍子。
「知ってっか、考え無しに突っ込んで行く。そういう奴を"馬鹿って言うんだぜ。ただし。バカはバカでも救える方のな」
思わず口に出してしまったものの……
掛けられた言葉にはマイナス思考からポジティブ思考に塗り替えられるような力を感じるというか。良い風に言い換えられれば今回の一見で何だか一皮剥けたような気さえしてくるのは、そこはさすがに気のせいだよな。
(でも、なるほど<ボイスレコーダー>か……)
向こうからすれば普通のこと。
ただ知恵を得た子供のように感心していたせいか。信也君はおもむろにこちらへ近付いてくると。それを差し出さんとしてからに。
「つー、ことでこれは黒やんに渡しとくな」
「え? でも」
「そういう役割は柄じゃないんでね。心配すんなよ。身を呈して飛び出した奴の声が入ってるだけだ。俺の声なんて微塵も入っちゃねぇから」
「え……」
二回続けての唖然。
彼は何を言ったのか
そもそもに何時から見ていたのか。食えない人とはまさに。だけど肝心の信也君と十六夜先輩方のやり取りは記録されていないということは……
「でもそれだとさっきのやり取りは分からないんじゃあ……」
俺は思ったままに疑問符を投げ掛けたが。
「その為の話し合いっしょ。通じる相手と分かればそれまで。脅しの中にも本音を混ぜこんでんだ。先輩方の態度から見て解ってもらえたと俺はそう思ってるよ」
そこも心配無用だとして。
ボイスレコーダーを必要としない是非を話してくれた。その上で。
「だからそれを使うかは黒やん次第、その場合、何かしらのペナルティーは免れはしないだろうがな」
…… 信也君の中での線引き。
許せざる行いをした人達に更正の余地があるなら、懲らしめではなく分からせという方法を取る。騒動が広がっていたならどうなっていたかは隅に。火種を消せたからそれで済んで良かったと。彼もまたお人好しというのか。
ボイスレコーダーを手に受け渡ったタイミングで、鋭利な刃を突き付ける者が1人。
「あーあ、あまっちょろいよね。考えが」
じっと話を聞いていた立花さんは再び口を開き。辛辣に批判してみせるが言葉と真逆、その顔には笑みが浮かんでいて。
「でもまぁ、その甘さに救われたんだから、今回はこっちが折れるしかないね」
物腰柔らかく信也君に語り掛けた。
「ねぇ、塚っち。勝負の話し覚えてる」
「んぁ? ああ…… 報道部と写真部だけに、負けた方は秘密を1つ暴露する。だったか」
「そうそう」
「それなら俺の敗けだな、豪語しておいて大したネタを掴めてねぇんだ」
「違うね。逃げるが勝ちと意気込めば、忠告を聞き入れなかった私の負けだよ……」
ーー俺を付け狙っていた時の出来事。
険悪、反発し合う中から信也君が持ち掛けた勝負ごとの話だったはずだが。立花さんはあっさりと敗北宣言。
勝ち負けが関係あるかはともかく、救われたという形には変わらない。今回の事で立花さん自身も思い直すに至ったようで、それを引き合いに出したというものだった。
「暴露といっても、ちょっとした身の上話しに過ぎないんだけどもね。私がこういう性格になったわけ」
間を空けることもせずに早速。
立花さんは話し始めようとするが「ちょい待ち」と信也君は小休止を入れた。
「こちとら飛び入りで参加しただけ、止めに入ったのはそういうことだろ。内輪ネタってんなら、わざわざ聞くこともないし。云うにこと書いてのハイエナ"ストーカー"野郎はさっさと退散するに限るってな」
そんなこんなんで立花さんの暴露話……
ひいて身の上話しは、何故か俺だけ聞かされることとなった。
区切ってしまう形になるならなるで
その内容に見合ったサブタイトルをどう付ければいいのかも悩ましいところ……
信也君と立花さんの勝ち負けをどうこじつけるか、どういう経緯で主人公を立ち合わせるか、という意味でも。
次話
【 】成らざる者の一歩




