第0.1話 プロローグ1
この話は、第0.0話 プロローグ の続きとなっています。
その研究所は同じ都心にある大学、電車を乗り継いで一時間の場所。久しぶりの外で戸惑ったけど、あの研究者に会えると思うと勇気が出てくる。すれ違う人の視線も怖くはないわ。
校門にいた受付の人に聞いた研究室のチャイムを鳴らす。
「ドラゴンの番組を見て、ここに来ました」
「お前も、俺の研究を批判しに来たのか! 俺はドラゴンの研究をしてるんじゃないんだぞ」
「ち、違います! あなたが言っていた世界に、私行ってみたくて話を聞きに来たんです」
しばらく無言だった扉が静かにスライドして開き、番組で見た研究者がそこにいた。無精ひげを生やし、少しやつれているようにも見える。
「あの世界に行ってみたいだと……本気で言っているのか」
「はい。番組では行けないと言ってましたけど、調べれば行く方法が見つかるんじゃないかって」
その人はしばらく私を見つめた後、研究室の中に入るように言ってきた。
「俺は……」
「知っています。里見 守さん、この大学の准教授ですよね。番組の出演者欄に書いてありました」
まだ二十八歳なのに准教授の役職に就いているだなんて、すごく優秀な人だわ。
「私は、遥 カナエって言います」
「君は高校生かな」
「そうですね、でも高校には通っていません」
「遥くん。君は本当にあの場所に行きたいと……」
「こんな世界で生きるよりましです。里見さんの言っていた世界の事を詳しく教えてくれませんか」
すると彼は小さな机に歩いて行き、タブレットを手に戻ってっ来た。そこに映る画像を私に見せてくれる。
「これは惑星の写真ですか? 加工された画像?」
まん丸じゃなくて縦長の楕円形。こんな形の惑星は存在しないはずだわ。
「よく知っているね。宇宙で惑星は球形になるからね。でもこんな形にしか撮影できなかったんだよ」
他の映像も見せてもらったけど、不鮮明だったり歪んだ画像が多い。その中には番組で紹介されたドラゴンの姿もある。
「カメラで撮った写真? これらは実在すると言う事ですよね。その惑星を私も見る事はできるんですか」
「これは宇宙望遠鏡で撮影した加工していない生データだ。残念だが今見れるのは、こんな映像だけだ」
見せてもらったのは星野写真。黒い背景に白い星が点々と写っているだけの写真。中央の光る点に丸印が描かれている。
これはドラゴンの居る惑星が回っている恒星の写真で、最高倍率でもその惑星の姿を捕らえる事はできないと言う。
「番組で見せたのは、重力レンズによって遠方の惑星を写し出したものだ。十二年後にならないとその条件は整わないんだよ」
私達の住む太陽系と、写真の惑星の間にあるブラックホール。その巨大な重力による時空のゆがみで、遠くにある惑星が拡大されて写るらしい。
そんな特殊な条件が揃うのが十二年後。だから番組でも、これ以上の証拠は見せられないと言っていたんだわ。
「遥くん、君が本当にその世界の事を研究したいのなら、まずはこの大学に入学しなさい。高校に通ってなくても受験する事はできる」
大学に合格すれば、この研究室に入って研究に参加する事も可能だと言う。
これで私の目標ができた。家に帰ってまた部屋に引き籠る。でも今度は大学に合格するためだ。希望の光が遠くに見えた気がした。




