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第18話 ライダノス攻略1

「賢者様のお力をお貸し願いたく……」


 現地の作戦会議の場に呼ばれて、恐縮する将校からそんなことを言われてしまったよ。

 ここはエキソスの町に設置された軍事司令部。辺境伯の側近を含む将校が詰めていて、今後の作戦を検討し指揮する場所。


「君達の軍が帝国貴族の居るライダノス市を包囲したんだろ。もうボクの力は必要ないんじゃないのかい」

「敵は籠城して出てこようとしません。攻めるにしても他の辺境伯様からの増援は見込めず……」


 帝国との長い国境の内、侵攻して来たのは北と南だけ。現在、王国国境にいる四人の辺境伯の内、中央の二つが国境を挟んで睨み合いをしている状態だそうだ。


 中央は陽動とはいえ、動くことができない。国軍は南端の戦闘の激しい地域に援軍を出さないといけないから、こちらへの増援は無いと言う事か。


 今はライダノス市周辺を包囲して兵糧攻めにしているそうだ。でも大きな町だからね、四、五ヶ月は持ちこたえると予想されている。完全に決着がつくまで半年ぐらいかかりそうだね。


 今のところ、眷属の里の安全は保てている。でもここで攻略に時間がかかり、帝国軍が体勢を立て直して反撃されると困るんだけど。

 だからと言って弾道ミサイルでライダノス市を攻撃するわけにもいかない。民間の獣人が一万人以上も住んでいる都市だからね。


 ここまでの道は作ってあげたんだから、後は軍事の専門家であるこの人達で何とかしてもらいたいんだけど……。打つ手がなく困り果てている将校を前に少し考える。


「籠城するという事は、どこからかの援軍を待っているんだろう」

「帝国の国力からすると、国内に出せる戦力は無いと思われますが……」


 南と北で戦力が分散されているし、貧しい帝国にこれ以上の戦力は無い……となると鬼人族のキノノサト国からの援軍か。


「キノノサト国から、ここまでの進軍ルートの予想はどうなっているんだい」

「包囲前に鬼人族と思われる部隊がここより東に向かって撤退していきました。多分その先にある砦に向かったと思われます」


 王国が持っている地図によると、鬼人族の国境まで二つの砦があり、それを使って援軍を出すと予想しているようだね。でもあやふやな地図で、街道も描かれていない。これなら里にある地図の方が詳しいね。


「それじゃ、その砦の様子をボクが見てくるよ」

「リビティナ様ご自身が! それは危険すぎます。そこまでしていただく訳には」

「あっ、いやいや。妖精族のエルフィがいただろう。あの娘に頼むのさ」


 あぶない、あぶない。ここでは賢者だからね。今から里に戻って、地図を書き写してキノノサト国の国境まで飛んでも、二、三日で大体の様子は掴める。


 四日後にまた軍議に参加すると言う事で、今日はお開きになった。

 これだから戦いに首を突っ込むのは嫌だったんだよ。辺境伯にはエキソスの難民達をお世話してもらっているし、借りがあるから仕方ないんだけど。


 敵の状況が分かれば、対処のしようもあるだろうから後は任せたらいいよね。

 書き写した地図を持って、早速国境へ行ってみよう。王国の地図にもあった東にある一つ目の砦はすぐに分かった。でも空から様子を見る限り誰もいないみたいだね。


 森に囲まれた砦の城壁に降り立って、その上を歩きながら中の様子を見てみたけどやはり誰一人いない。この城壁も途中で壊れているし、中庭も雑草だらけだ。もう使われていない砦みたいだね。


 さびれた砦を後にし、街道を目印に飛んで次の砦を目指す。

 その先には大きくて上空から見ただけでも、兵士がウロウロしている砦があった。でも援軍の部隊が集結しているようには見えない。


 まだここに来ていないのかな。ここからキノノサト国への道は二つ。真東へ向かう道と、首都へ向かう南東の道。援軍が来るなら南東の道かな。

 ついでだ、国境を越えてキノノサト国内の首都へ向かう道も見てみるか。


「おや、あの馬車の列は軍隊かな」


 大型の馬車が車列を組んで街道を南東に進んでいる。幌付きの馬車や単なる荷馬車のような物まで形の違う馬車が走る。中には三十人ぐらいがすし詰め状態になって走っている馬車もあるね。


 向かっているのは、鬼人族の首都の方向。軍事行動なんだろうけど、統一できていない感じだから、慌てて撤退している途中かな。

 その街道の先も見に行ったけど、軍隊が集結している場所はどこにもなかった。状況を確認して里へと帰る。



「エルフィからの報告だと、鬼人族が援軍を出す気配は全くないね」


 軍議の場で王国の地図を指差しながら、エルフィに偵察に行ってもらった態で話をしていく。


「この砦には人が誰もいないよ。その先、キノノサト国に近い砦には帝国の兵士がいたけど、鬼人族は見かけなかったらしい」


 里の地図を見せる訳にはいかないけど、砦から延びる二本の街道や鬼人族の町や村の位置を描き示す。


「このような詳細な偵察、さすが賢者様ですな。するとライダノス市を落とせば、この北部の戦いは終結しますな」


 とは言え、籠城している敵の町を陥落させるには時間がかかる。

 援軍は来ないと情報を流して、降伏勧告をしてみると軍の上層部は言っている。


 そして二週間後、またリビティナが軍議に呼ばれた。


「敵は降伏勧告に応じる事もなく籠城したままです。このまま半年待つよりも、犠牲を払ってでも町を落とした方が良いとの意見もあり……」


 一度力を貸せば、何度も頼ってくる事は分かっていたけど……これだから戦争に加担するのは嫌だったんだよ。とはいえこれ以上人が死ぬのは見たくないしね。


「この町にいる領主はどんな人物なんだい」

「歳は四十五歳。地方貴族としては中堅と言ったところでしょうか。皇帝の意に沿う行動はしておりますが、積極的な戦いは好まないそうです」


 捕虜からの情報だと、今回の戦いも賛成はしてなかったようだけど、表立って言う事もできず、皇帝の指示通りに戦いを進めたようだね。


「それならその領主だけを納得させればいいんじゃないのかい」


 ライダノス市は今や孤立無援の状態、それを納得させて降伏してもらえばいいよ。


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