No. 13
【ガスマスク】
<ガスマスク>
《ガスマスク》
[ガスマスク]
{ガスマスク}
〔ガスマスク〕
・ガスマスク・
#ガスマスク#
*ガスマスク*
ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマ
スクガスマスクガスマス ア ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガ リ マスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマ エ クガスマスクガスマスクガスマスクガスマスク ナ スマスクガスマスクガスマスクガスマスクガス イ スクガスマスクガスマスクガスマスクガスマス ダ ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガ レ マスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマ ダ クガスマスクガスマスクガスマスクガスマスク ア スマスクガスマスクガスマスクガスマスクガス レ スクガスマスクガスマスクガスマスクガスマス ナ ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガ ニ マスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマ ア クガスマスクガスマスクガスマスクガスマスク レ スマスクガスマスクガスマスクガスマスクガス イ スクガスマスクガスマスクガスマスクガスマス ミ ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガ ガ マスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマ ワ クガスマスクガスマスクガスマスクガスマスク カ スマスクガスマスクガスマスクガスマスクガス ラ スクガスマスクガスマスクガスマスクガスマス ナ ガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガ イ マスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマスクガスマスク
思考停止。からの、混乱。
混乱によって僕の脳内を一つの単語が掻き乱す。あちらこちらへと行き来するその単語。それらの動きを止めるために、つまり混乱を鎮めるために僕が行ったことは、思考の海に己を沈めることであった。
つまりは思考し続けるということ。
早い話は、単語の解説による、現実逃避。
ガスマスクというものを、ご存知だろうか。
防毒マスク、防塵マスクといくつかの種類があり、それらの共通点をあげるならば、それは人体に有害なものが体内に侵入することを阻止する、ということである。
口元だけを防護するものもあるが、ほとんどのものはその役割上顔面のほとんどを被う代物である。
どういう場合に装着するのか。それは、コスプレ等の例外を除けば、何かしら人体に有害なものが存在する、またはその可能性がある場所で活動する場合だろう。
つまり、何が言いたいのか?
僕が何を言いたいのか。それは、ガスマスクは普段の日常では使用しないということ。北海道内で生活しているなら普通は装着しないものである、ということである。
…………ふぅ。どうやら、ようやく、思考が安定してきたようだ。混乱が鎮まってきたようだ。いつもの僕ならこの程度でここまで取り乱しはしないはずなのだが、やはり、今日一日の出来事による僕への精神的負担がかなり大きかった、ということだろう。
まぁそれはともかくとして。
──ここまで言えば、僕がなぜ今の説明を唐突に開始したのか。今僕が、どういった状況に陥っているのか。それがわかる人が、きっと少なくはないだろう。
そうだ。今僕の目の前には、先程説明した常識が当てはまらない人物がいるのだ。まわりくどいことなしに、率直に簡潔に言いなおすならば。
目の前に、ガスマスク人間がいる。
ここ最近、驚かされてばかりだ。寿命が縮んでしまっていてもおかしくない。このままのペースで怪異や謎人物と出会っていれば、あと一、二ヶ月程で死んでしまうなんてことも……なくはないかもしれない。いや、流石にあり得ないだろうか。
──そういえば、よく思い出すと今日の朝に会ってるなこの人……。会ったというか、すれ違っただけだけれども。まさかあれがフラグだったとわ……。
いや、それにしても、一度会っているならここまで驚く必要は無かったじゃないか。なんだ、驚いて損した。
「……」
「……」
というか、この人、僕に気づいて目の前に来てから一言も話さないんですけど……。あ、僕もか。
僕は、目の前のガスマスク人間の姿を確認していく。
……いったい、どんな奴なのだろうか。性別すらわからない。身長は、僕と同じか少し低いくらいか……。
服装は、黒のタンクトップのような服に、大きめなズボン。腰には何かはわからないが小さい物がいくつも付いていて、小物が入りそうなポーチの様なものも付いている。
髪は黒髪ショート……。そして顔は……わからず。性別の判断が出来ない……! ついでに表情もわからない……。何だ、何なんだこれ……? めっちゃ怖いんだが。
「…………」
「……? うぉ!?」
ガスマスク人間が突然腕を動かし、僕の顔の前に指を突きつけてきた。
大丈夫かこれ……!? 突然「バン」とか言って指先から紫色の光線出してきたりしないよな……? デスなビームが出てきたりしないよな……!
というか露骨にビビってしまったけど、もしかして機嫌を損なってしまっていたりはしないか……?
「…………」
「…………」
お願いだから喋ってくれ……! できれば、日本語で……!
「お前……」
喋った……!?
「いったい、何者?」
「なっ……!」
こっちの台詞だぁぁぁぁ!! と叫びたいのは我慢して……。
最近まともな人に知り合ってないな……。何なんだ……本当に……。さっきの……ワタリさん的に言えば運が悪い、ということだろうか。悪すぎるだろう、僕の運。
「お前が言うか、お前が言っちゃうのか。それは僕の台詞だよ。何者なんだガスマスク人間」
「ボクはボクだ」
「話をしてくれ会話をしてくれ僕と。まともな会話をだ」
「意味が」
「わからないのは僕だ」
「いやぁ~、相変わらず足が速いなぁ! あ、室戸くん、無事に天邪鬼の件は解決できたんだね!」
少し遅れて柊さんが登場。扉を開けて、カランカランという入室音を鳴らして、待ち人が登場した。
「その件は助けてくれてありがとう柊さん。──で、ちょっと聞きたいんだけれど」
「あ、そうだね。交換条件のつもりだったけれど、そうも言ってられなさそうだしね」
「ん?」
「連絡先交換しよっか!」
「あ、あぁ」
確かに、彼女のアドバイスがいつでも聞けるというのは重要なことだ。さっき道に迷ったときのように突然怪異に遭遇してしまった場合にアドバイスが得られないのはとても痛い。僕の運の悪さからして、下手したら今日のうちにもう一度くらい何かに遭遇してしまってもおかしくない。
……いつからこうなったんだ、僕の人生は……?
閑話休題。
連絡先の交換。まぁ重要なことだ。重要なことではある。だが、それよりも、そんなことよりも、
「この人は誰ですか柊さん」「この、人? は誰なの柊」
「ちょっと待てお前。『人』という字にクエスチョンマークをつけるな。僕が人であるのか怪しいみたいな言い方をするな!」
「初対面の相手に対して『お前』なんて、お前は礼儀知らずだな」
「お前がそれを言うな。自分のことを棚上げしてそれを言うな!」
「ふふっ」
柊さんの笑い声に、僕とガスマスク人間が彼女の方に顔を向ける。
込めたる思いは、『何笑ってんの?』
「いやぁ、何だかさ、二人とももう仲良しみたいだからちょっとおかしくなっちゃって」
仲が言いと申したか柊さんは。どこをどう見たらその言葉が口から出るのだろうか。
「柊さん。説明がほしい」
「あ、ごめんごめん。えっとですね」
柊さんは僕とガスマスク人間の間に立つと、左手を僕の方に向ける。
「こちら室戸四津木くん。私のお友達です。私に匹敵する巻き込まれ体質だよ」
何だその紹介……。
「……わかった」
お前もその説明だけで良いのかよ。
紹介を終えた柊さんは、今度は右手をガスマスク人間へ。
「こちらチェイサー。私のお友達です」
「……ん? いや、ちょっと待って……」
今なんて言った……?
「名前をもう一度お願いします」
「チェイサー」
「チェイさん?」
中国人とかなのだろうか……?
「違うよ、チェイサーだよ」
「……チェイサー……?」
「そそ、チェイサー」
「……ちょっと待って」
え、何ですかそれ。それが名前? 名前なのか? ハーフかハーフか何かなのかこのガスマスク人間。顔が見えないから判断のしようがないぞこれ……。
「チェイサーって……」
「チェイサー。英単語。追跡者という意味」
「いや、単語の意味は知ってる」
困惑している僕の様子を見て、言葉の意味がわからない、と判断したのだろうか。ガスマスク人間がご丁寧に説明してくれた。求めちゃいないが。残念ながら。
「ハーフか何か……なのか?」
もしも外国の人ならば、そういう名前もあるのかもしれない。
自分の子供に追跡者と名付けるのは、個人的には理解できないしそんな親がいるとも思えないけれど。
「ボクは、日本人だ」
僕の問いに対してガスマスク人間……チェイサーが首を横に振りながら答える。
じゃあ、あれか。中学二年の時に発症するという、アレか。中学二年生には見えないけれど。
「チェイサーはね、本当の名前教えてくれないの。本当の名前は、好きじゃないんだってさ」
む……何か訳有りな感じなのか?
──いや、だとしても、もっとまともな名前があったんじゃないか?
「別に趣味でつけた名前ではない。能力的に、妥当だと判断しただけ」
「能力的に……?」
「チェイサーはね、凄いんだよ~。標的にしたものをずっと追い続けることができるんだから!」
「空とか海は無理だけど、陸ならできる」
「さいですか……」
ビックリ人間さんね。はいはいわかりました。天狗に引き続きガスマスク人間。この町には普通の人はいないのだろうか。不安になる。
それにしても、なるほど。それでチェイサー、追跡者ってわけか。
「ちなみに私が名前を考えました!」
柊さんのセンスかよ……。あ、でもチェイサーがさっき言っていたか。「妥当だと判断しただけ」と。柊さんが考えた名前をチェイサー受け入れた、というわけか。
ふ~ん。でもそれじゃあ、今の紹介だけじゃあ説明がつかないことがある。ずばり、顔に装着しているガスマスクについて。
「そのガスマスク、着用している理由を聞いても?」
「…………」
チェイサーはしばらく沈黙し、一度周囲の人物を確認したかと思うと一言、「言えない」と言って静かに首を横に振った。
「……そっか」
なら、無理に聞く必要はない。人に言えないほどの事柄を聞くことができるほど僕は関係を築いちゃいない。初対面なのだから、他人のデリケートな部分に踏み入れるべきではない。言えないことの一つや二つ、あって不思議はないし、言いたくないことの一つや二つ、あって当然なのだから。
あ、そうだ。一つ聞いておかなければならないことがあるんだった。
「それで、チェイサーは男なのか? 女なのか?」
「見た通りだ」
「わからないから聞いてるんだ。柊さんは知らないの?」
「うん。知らないよ」
「ほう……」
何で友達なのに知らないのか、という疑問はさておき。見た感じで、と言われても判断できないから聞いたんだが。まさか答えがでないとは。
──ふむ、仕方ないかな。
僕は両手を胸の高さまであげてチェイサーにゆっくり近づいていく。
ワキワキワキワキワキワキワキワキ。
「……室戸くん?」
おっと、殺気。
「ははは。冗談だよ冗談に決まってるじゃないか。やだなぁ柊さん、軽いジョークだよ」
「本当かな~」
ため息をつかれた。
まぁ、いいか。別に性別くらい。
「そういやぁ、何でチェイサーを連れてきたの? 紹介のため?」
「……それもあるけど、まぁ保険みたいなものかな。最近物騒らしいからね。帰りが遅くなった時に一人で帰るのは不安だからさ」
「そんなに強いの?」
「チェイサーって凄いんだよ~? めちゃくちゃ強いんだから! 百人組手とかできちゃうんじゃないかな!」
スマブラに参戦できそうっすね。
「追跡するための力として、身体能力も強化される」
チェイサーが強さの理由を教えてくれた。
これは、怒らせたりしない方が良さそうだ。肝に命じておこう。
「それじゃあ、カガミノナノハの調査をするために、図書館に出発しますか!」
「図書館で調べられるのか」
「結構役に立つ情報を得られるんだよ~? さぁ出発しよ!」
柊さんが笑顔で「おー!」と言いながら右手を振り上げ、意外にもチェイサーも一緒に「おー!」というかけ声と共に右手を振り上げた。
そして、乗り遅れた僕に、二人の視線が刺さる。
こういうのって、タイミングを外したらやりづらくなるんだよな……。
「お、お~……」
二人の視線が痛かったため、仕方なく二人のノリに乗ることにした。
すると二人は満足気に頷き入り口へ向かい始め、その後ろを僕は、頭を掻きながら歩き始めた。




