エリスの過去3
けたたましい音がホールに響く。
発生源は崩れ落ちるエリスのお守り(防犯ブザー)から。
警備の騎士が少年を取り押さえられる。
トレイシーの姉が振り掛けられれたもののを手にした紙に包んで浄化の魔法を唱えた。
ケホケホとせき込んでエリスは目を開けた。
「大丈夫。」
「はい、有難うございます。」
幸い直ぐに目を閉じ、息を止めてしゃがみ込んだエリスは粉を殆ど吸い込まずに済んでいる。
そうして五月蠅く鳴り響くお守りのピンを戻し、音を止めた。
この後、エリスとトレイシーは直ぐに家に帰った。
数日後、ファティマ家にトレイシーとその姉がやってくる。
「・・・魔女の秘薬だった・・・」
「はい?」
その言葉にエリスは意味不明と首を傾げ、兄は呆れたように声を上げた。
「おいおい、10歳を過ぎたばかりの子供の持ち物じゃないだろ。」
「本当に。入り口で所持品チェックはしていたけど、まさかあんな子供がそんなものを持っているとは誰も思わなかったみたい。」
ここいいる4人は大人顔負けの発明や開発をし、薬剤その他の知識は豊富だ。
一般に惚れ薬と言われる魔女の秘薬がどういうものかよく知っていた。
「それを使えばエリスが自分を好きになってくれるって思ったのかねえ?」
兄の言葉は疑問形。
「もう少し年がいっていて密室で二人きりとかだったら変なことになったかもしれないけど・・・」
今回の場合、二人は大いに注目を集めていた。
少年が何かを振り掛ける様子には多くの目撃者がいる。
さらにエリスのお守りが大音響で鳴り響いたのだ。
この出来事を隠すことは出来ず、少年は処罰を受けることになるだろう。
「まあ、処罰が無くてもあの子は出禁だけどな。」
兄の言葉にエリス達は頷く。
大体エリスはトレイシーと婚約しているのだ。
婚約者の居る異性に横恋慕し、思い通りにならないからと言って薬に頼るような子と付き合いたいとは思わない。
「大先生、謝っていたわ。」
そもそも踊る気の無いエリスを取り成して今回の切っ掛けを作ってしまったことを気に病んでいるらしい。
「兄様、気にしないように伝えて頂けますか。」
「分かった。流石に予測できないよな、こんなの。」
その後の調査で少年はベツコーイ家から薬を入手したことが分る。
元々は飲み物や食べ物に混ぜて飲まれようとしていたのだが、エリス達がこの手の場で一切飲み食いしない。
主催者にもその旨伝えてあるので会場の使用人達も勧めないよう言い聞かされている。
それに業を煮やしたベツコーイ家の人間が少年を唆したとのこと。
向こうの目論見としてはエリスを家族から引き離し、別室で休んでいるところをどうこうしたかったようだ。
この一件で前世の最後を思い出したエリスは男性と踊ることが怖くなった。
家族やトレイシーとは平気なのだがそれ以外は体が竦む様になる。
それは入学試験でも後を引き、教養の試験でダンスは散々な成績だった。
再試験ではこの出来事を話して相手役を女性に変更して貰うことになる。
閲覧、有難うございます。
面白いと思ったら評価をお願いします。




