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【本編・二ノ国編完結】前提条件が壊れた結果  作者:
二ノ国編

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22_フィル

可愛いは正義

予定より遅い時間の夕食。

部屋の隅に風呂に入りブラッシングされてフワフワの毛並みのフィルが山盛りの木の実の皿の前でお座りしている。

その近くにはハンスとフランが席についている。

前菜が出揃い、食前の祈りを捧げた後、食事が始まった。

「フィル。食べて良いよ。」

フランの声に一声鳴くとフィルはゆっくり味わう様に食べ始める。

「あら、随分お行儀が良いのね。」

王女の声に、ハンスがサーシャの方を見ながら答える。

「そちらの方が行きがけに木の実を色々と買ってくれて、帰りの馬車でこいつはそれを結構食べたので。」

側から一緒に馬車に乗っていた先輩が口を挟む。

「世話をしていた使用人に聞いたが、この二人が捕まって以来ろくすぽご飯を食べなかったらしい。」

「はい、それで急に食べても体に悪いだろうとゆっくり少量ずつ食べさせました。」

「聖獣が賢いって本当だな。ちゃんと二人の言ったことが理解できている。」

先輩の言葉に当然だと言う様にフィルが鳴いた。


食事が終わると団長が立ち上がった。

「羽化の儀は明後日の夜行われる。

明日はその準備に宛てて欲しい。

羽化の儀に立ち会うメンバーはお昼にここを出発するのでその積りで。」

それからハンスとフランの方を向いて

「二人の部屋にフィルの寝床を用意した。

後、王宮から届いた君達の私物も置いてあるから確認してくれ。

他に必要なものがあったらカンテラ技官に言ってほしい。

彼の部屋は君達の隣の部屋だ。」

団長の言葉が終わると王女が立ち上がった。

「明日は色々聞かせて貰うことになると思うけど、

二人共、後フィル君も今日はゆっくり休んでね。」


使用人に案内されて食堂を出ていく二人の後をフィルは機嫌よく短い尻尾を振って付いていく。

王女はエリスとトレイシーの顔を見た。

「2時間後にまた昨日の部屋に集まりましょう。

それまでにまとめておくように」

皆が頷き解散となった。

エリスとトレイシーは鑑定結果の置いてある部屋に行き、アリサとサーシャは王女の部屋に移動。

クレスとポリーはエリス達の護衛も兼ねてそちらに同行する。

王女の部屋に入ると侍女がお茶を淹れ遮音魔道具を起動して部屋を出ていった。

「で、どうでした。」

王女の問いに

「フィルが滅茶苦茶可愛いです!」

アリサが扇子でサーシャの手を叩く。

その様子に王女はクスクス笑う。

「フィルが可愛いのは私も認めるわ。

あの子、2歳を過ぎているのでしょう?それにしては子供っぽいけど。」

サーシャは真面目な顔に戻って話し始めた。

「はい、野生の猪であれば1年経てば大人になります。

ですがあの子は特異体で聖獣です。

そして赤ん坊と言っていい頃から人に育てられています。」

王女とアリサは続きを待った。

「多分ですが聖獣、人と契約を結んだことで契約者の影響を受けているんだと思います。」

「と言うと?」

「あの二人は大人びていますがまだ子供です。

肉体的にも成長期です。

その影響で体は成長しても精神的には子供のままなのでしょう。」

ここでアリサが口を挟む。

「人に飼われている犬や猫も外で働く牧羊犬とかはともかく、ペットとして飼われている個体は子供っぽいままであることが多いです。

そして特異体は生殖能力が無い。子を持ち親になることがない個体です。

フィルにとってハンスとフランは親替わり、自身は子供のままなのでしょう。」

「そうですか。」

「それで預かると言いましたが何時までを予定していますか?」

「そうね。芝居の話と同じなら親の取り調べには時間が掛かるわ。

私達がここに居るのは1週間、長くても10日。その間に終わるとは思えないでしょう。」

「王家に戻しますか?」

「その積りならこちらで預かったりしないわ。

本人の希望次第だけどほとぼりが冷めるまで国に連れ帰ろうと思っている。」

「フィルと明日顕現する神獣もですか?」

「その積りだけど・・・サーシャのところで預かって貰えない?」

「無理です。」

即答したサーシャに王女は驚いた顔をする。

「うちのところでは特異体は獲物なんです。

フィルは間違いなく狙われます。」

「領主の権限で何とかならない?」

「領民なら何とでもなります。

問題は余所か来た連中なんです。

あいつらこっちが飼育している個体を時々狙ってきますから。」

「まあ。それって犯罪では。」

王女は扇子を口元にあてる。

「はい、犯罪です。見つけたら捕まえます。

余所のものでも真っ当な狩人ならこちらに挨拶に来ますし、他人の飼っているものには手を出しません。

問題は騎士崩れ、兵士崩れの俄か狩人なんです。

こいつらはルールを守らないと言うかそもそもルールを知らないんです。」

「捕まえたらどうするの?」

「相手次第ですが賠償させて本人が希望すれば地元の猟師や狩人に預けて修行させます。

そうで無ければ出禁にして領地に入ってきたら速攻捕まえて追い出します。」

はあっとため息を吐く王女。

「怖いの魔物や獣より人間なのね。」

サーシャとアリサは頷いた。

「特待クラスの森なら部外者出入り禁止だからそこの居て貰うことにしましょう。」

閲覧、有難うございます。

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