陞爵式典
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5月の終わりの頃、王城の広間で叙爵、陞爵する貴族を集めた式典が開かていた。
本来ならサーシャもこの式典で男爵位を授かるのだが王女襲撃事件に端を発する隣国と騒動を鎮めた功績が大きいのと事件により不安になった世情を鎮める目的もあって例年になく3月の終わりに叙爵となったのである。
「ファティマ家は魔力波による親子鑑定法に始まり・・・・、数多の功績を称え、本日をもって伯爵とする。」
「ネロ家は近隣の害獣被害を一手に引き受け・・・本日をもって子爵とすると同時にその功績を称え、金貨・・・を授与するものとする。」
そんな式典をエリスとサーシャは家族として見守っていた。
特にサーシャは騎士服での参加が多いので久しぶりのドレス姿である。
式典も終わり、2人は互いの家族を紹介している。
そこへアリサとトレイシーがやってきた。
続けてスティーブンにクレス、ポリーがやってくる。
お祝いの言葉に続けてスティーブンが言った。
「殿下方やイーダ様も来たがったんだが、遠慮してもらった。」
「有難うございます。」
心底ホッとしたようにサーシャの父が頭を下げた。
新興子爵、伯爵に王家所縁の方々は心臓に悪すぎる・・・
「サーシャのところの陞爵理由って害獣退治だったんだな。」
「先輩に聞いたんだけどあそこら辺を管轄している東部騎士団でネロ家と寄り親の子爵のところだけ出動要請が0だって。」
クレスとポリーの言葉にサーシャは苦笑い。
「全部私のところで片付けるからね。」
「逆に騎士団に頼まれて応援に駆り出されているって話も聞いた。」
スティーブンの言葉にサーシャの父が反応。
「我が家の良いお小遣い稼ぎです。」
現金収入の少ない田舎で騎士団の仕事の手伝いは貴重な現金獲得手段なのだ。
騎士団で手に余る獣達を鍬や鋤、熊手で一掃していくので新人騎士のメンタルをガリガリに削る東部騎士団恒例の秋の洗礼行事として知られている。
鍛えている筈の騎士が農民より弱いと言う事実に耐え切れず都落ちならぬ田舎落ちする騎士が後を絶たない・・・
ネロ家の領民に言わせれば「獣相手に剣での決闘は無いだろう。せめて槍や弓を使え」となるのだが。
サーシャの一件でその事実を知った王家は慌て、爵位の他に金品の授与となった。
土地については既に男爵家とは思えない広さを管理している。
男爵家としても土地より人手が欲しい。
貰った金貨で街道の整備を進めて人の往来を増やす予定だとサーシャの父は言った。
「そう言えばサーシャのドレス姿って初めて見た気がする。」
クレスの言葉に4人は顔を見合わせた。
「それもそうかも。私は寮で作法の練習を手伝って貰ったから見てるけど。」
とポリー、スティーブンも前期編入試験の作法の試験で見ている。
クレスが親しくなった後期での淑女科の授業はもっぱら男役。
ドレスは着ないし、3月の叙爵の時も騎士服だった。
「惚れた?」とサーシャが突っ込めば、返事をする前にポリーとスティーブンに後頭部をどつかれた。
少し離れた場所ではエリス達ファティマ家の関係者とアリサとトレイシーが話をしている。
「バルベース家は残念でしたね。」
アリサの言葉にトレイシーは笑う。
「実際、家よりエリスのところの方が功績が多いですからね。
それに姉の研究が一段落したらそっちで男爵位を叙爵される予定ですし。」
「それはおめでとうございます。」
トレイシーの姉の相手は侯爵家、ただし四男なので家を出たら平民である。
姉が叙爵したら婿入りする予定になっていることもあって侯爵家から多額の支援が出ている。
婿入りが無くても侯爵家に益のある研究なので支援はしただろうけど。
「アリサさんのところはどうなんです?
功績なら不足はないと思うのですが。」
「うちは断っている。」
「何故?」
話が聞こえたのはサーシャ達がやってきた。
それを見てエリスが言う。
「アリサさん、一人娘だから。」
サーシャの頭にクエスチョンマークが一瞬浮かんだが直ぐに消えた。
「そっかマイルズ家はアリサさんが継ぐんですね。」
アリサは頷いた。
この国では王家も含め、高位貴族の継承者は男である。
というか男にしか認められていない。
女伯爵がいない訳ではないがその者達は功績によって叙爵、陞爵したものである。
イーダが親から譲られたのも子爵。
アリサに継がせようと思ったら伯爵になる訳には行かないのだった。
「アリサが継いだら直ぐに伯爵になりそうだけどね。」
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