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12_サロンで特訓

サーシャが必死になってあげている教養だが、エリスもまた十分とは言えない。

特待クラスに通う必要最低限は満たしているものの足りていないのはエリスも理解していた。

今日もまた作法の時間で合格できず再受講となってしまった。

特待クラスの食堂で頭を抱えるエリスを宥めるトレイシー。

お茶の作法は女性の独壇場で男性はそこまで厳しくない。

「エリスの場合、知識は十分だから足りてないのは実践ね。」

アリサはお手本とばかり目の前で優雅にお茶を飲む。

幼い頃から高位貴族と付き合ってきたアリサの所作は美しい。

「それは分かっているんだけど・・・」

学者系の低位貴族であるエリスにはお茶会など開く機会も参加する機会も無い。

淑女科ならばそこを学び実践する機会も多いのだが特待クラスは他に学ばなければならないことが多すぎる。

クラスメートも教えたいと思っているがそこに時間が取れないのだ。


まず前提として特待クラスでは全員揃っての授業と言うものはない。

皆自分が必要とする授業を選択して受講する。

そこに学年と言う括りは無く、授業によっては第一王子やその側近と学ぶことになる。

既にエリスも何度か一緒に授業を受ける機会があった。

ただし、好きなように授業を受けても良いとは言っても必修はある。

期の始めにテストを受けて合格すれば良いが合格しなれば何度でもその授業を受けないといけない。

幸い3人は1年度の必修は全て合格している。

しかし、2年度3年度では要求されるレベルは上がる上に他に学びたいことは多い。

苦手なものは余裕のある1年度の内にある程度合格しておかないと卒業が厳しくなるのだ。

正確には卒業は出来ても学びたいものを学びきれないで卒業することになる。

「二人共外交官を目指している訳ではないから作法も最高位を合格する必要ないけど、卒業に必要な中級は合格する必要があるわね。」

高位貴族なら常識なので大抵の生徒は1年度で合格している。

苦労するのはエリス達の様に低位貴族以下だ。

これを合格できずに卒業式の1か月前に特訓が組まれたなんて言う話は結構耳にする。

まあそのお陰で特待クラス出身はどこに行っても重宝される。


そんなエリスに微笑みを浮かべてアリサは言った。

「サロンに参加してみて如何かしら。」

「サロン?」

「ええ、イーダ様のサロンではご自身の派閥の低位貴族向けに作法の実践の場を提供しているの。」

「それは嬉しいけど私がそこに参加しても大丈夫なの?」

「ええ、前にお会いして相談したら誘って下さったわ。」


サロンとは高位貴族、主に女性貴族が派閥の結束を保つ為に開催しているものである。

申請すれば一般クラスと特待クラスの境界の建物を一つ借りることが出来る。

現在、公爵であるシュトルム家、王家の他、二つの侯爵家がサロンとして建物を借りていた。

ゲームでは後半王家やシュトルム家が他のサロンと対立し、死傷者の出るイベントが発生している。

その心配が顔に出たらしいエリスを見てアリサが安心させるように微笑んだ。

「大丈夫、第三王女様はもういないから。」

「そうなの?」

「ええ、5年以上前に王女様は皇国に行かれたわ。」

「そうなんだ・・・良かった・・・」

この中で唯一話の分からないトレイシーは問い質した。

「すまん、話が良く見えないのだが・・・

第三王女って噂には聞いたが実在するのか?

また、皇国に行ったなんて話聞いたことがないのだが?」

「トレイシー様は第三王女の話をどこまで知っていますか?」

その言葉にトレイシーは周囲を見る。

ここは特待クラスの食堂、そろそろ夕飯時に近い今は誰も居ない。

「僕の聞いた話はわがままで贅沢好き、実は王家の血は引いてないって噂も聞いた。

それで表に出せず、離宮に閉じ込めているって・・・」

「その認識に間違いは無いですわ。

私も最近知ったのですが、イーダ様が倒れて領地に引っ込んだ後に、皇国に向かわれたと。」

「それって・・・」

エリスとトレイシーは顔を見合わせる。

アリサは黙って微笑みを浮かべてカップの紅茶を飲み干した。


翌日、エリスはアリサに伴われてシュトルム家のサロンに向かった。

入り口で門番に名前を告げて中に入る。

サロン内は一種の治外法権、中で起こったことはサロンの責任者の問題となるのでどのサロンも門番を置いて出入りを管理している。

「サロンへようこそ、歓迎するわ。」

イーダは話を聞き、手元の週間スケジュールに幾つか丸を付けて渡してきた。

「貴方なら合格するまでこの授業を受けると良いわ。」

「有難うございます。・・・こんなに開かれているのですか?」

「ええ、作法は繰り返しが大事なの。

苦手なら合格しても時々通うと良いわ。

繰り返せば繰り返すだけ所作が美しくなるから。」

「有難うございます。

イーダ様は何でこんなことを?」

低位貴族向けの講習は他のサロンでは聞いたことが無い。

「そうね。私が一時期領地に籠っていたことは聞いているでしょう。」

「はい。」

「その時にね、領地の子達と交流する機会があって、色々あって初歩の学問やマナー教育を実施したわ。」

「それでね、気が付いたの。平民も貴族も関係なく学ぶ機会があれば輝けるんだって。」

「平民もですか。」

「ええ、領地ではここの初級まで学ぶ気があれば学べる環境を作ったわ。

サロンでの活動はその延長。

作法は特に上位と低位の差が出やすい部分なの。

それで嫌な思いをする子を無くしたくて私がここに居る内は続ける積りよ。」

「居なくなった後は続けられるように協力はするけど。」

とイーダは呟いた。

閲覧、有難うございます。


ゲームイベントのサロン抗争は第三王女が引き起こしました。

エリスとアリサは回想シーンでそれを知っています。

トレイシーにはそれを伝えてませんがその内話すかも

サーシャもそれを知っていますがそこまで意識が回っていません。

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