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TS☆魔法少女エンジェルステラ  作者: 天崎 剣
【4】進化の法則/第2話 予兆

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chapter.3 岸社長からのアプローチ

「金儲けの手段としてV2を利用しようとするなんてヤツが存在するとしたら、最悪どころじゃないな」


 健太郎の表情は暗かった。

 

「まぁ、金儲けならまだマシだよ。一番厄介なのは、金が絡まないパターン……」


 話の最後に、三ツ浦は不穏な事を言い出した。


「金儲けじゃないとしたら、何のため?」

「円谷君にはまだ難しいかも知れないが、いろんな考えの人間が、この世には存在するんだよ。……っと、所長のお出ましだ」


 パーティションの向こう側で、挨拶を交わすような声。カツンカツンと小気味よく響く音が少しずつ近付いてくる。


「珍しいな。朝から」

「おはようございます、所長」

「緑川さん、おはようございます」

「おはようございます」


 パーティションの内側に現れた緑川は、少し嬉しそうに笑みを零したが、それでいてピリピリとした空気を崩そうとはしなかった。


「昨日の今日であちこち大騒ぎだ。予想はしていたが、ここまでとは。今回の契約に絡んだ企業の株価はストップ高だろうな」

「予想では、今季最大の上げ幅が期待できそうって話。俺も買っとくんだった」

「……インサイダー取引で本業が懲戒免職になるだろう? そういうのはやめてもらいたいものだな」

「冗談通じねぇな、女史は」


 難しい話をして睨み合う緑川と健太郎。

 何の話をしているんだと、飛び交う専門用語に伊織は何度か首を傾げた。


「ところで、まどかとなぎさに、大事な話がある」

「大事な話……?」

「スク水案件なら喜んで承りますが」

「水着のことは頭から抹消しろ、渚」


 緑川は舌打ちをして健太郎を睨み付けた。


「ナイトスカイ・エンターテインメントの岸社長からお呼びが掛かった。お高いお店でのお食事会だそうだ。大急ぎで黒髪バージョンを実装しなければならなくなった。衣装とヘアメイク案は赤井と御園に頼んである。館花にバージョン追加を指示した」

「お食事会?」

「黒髪? 変身前を偽装するってことか?」


 目を丸くする伊織と健太郎。

 三ツ浦はほほうと感嘆の声を上げている。


「岸という男、契約だけでは我慢できなかったか」

「残念ですが、三ツ浦先生、その通りです。金は出したのだから、拒否はできないだろうとばかりに詰め寄られました。当人達は未成年ですから、食事会はなるべく早い時間にとお願いしましたが、それでも夜七時。終わりは九時頃となるでしょう。今までどうにか誤魔化してきましたが、円谷少年のご両親にどう説明するべきか……」


 ――エンジェルステラのことは、誰にも話してはならない。そういう約束。

 うっかり安樹星来にバレ、優也にバラしてしまったが、伊織の家族は未だに、彼がエンジェルステラのまどかであることを知らないのだ。


「あぁ……だったら、俺が一肌脱ぎますよ」


 健太郎がニッと不敵な笑みを浮かべながら、緑川と三ツ浦の会話に割って入った。


「どういうことだね、渚君」

「三ツ浦さんもご存じだと思うんですけど、俺の上司、こいつの父親で」

「ほう……」


「俺、色々あって今休職中なんですが、キュアキュアStoreで伊織とバッタリ会って、『課長の息子だろ? スマホの待ち受けで見たぞ』って俺が声を掛けたことにしたらどうかと。そんでキュアキュアの話で盛り上がって意気投合して、『俺んちに来ないか? 飯食わせてコレクションも見せてやる、家にはちゃんと送ってやるから安心しろ』って流れになった〜ってことにしたら……自然じゃないすかね」


 なるほどと感嘆しつつ、「強引だな」「確かに」と、緑川と三ツ浦は頷き合っているようだ。


「けど、それって微妙じゃない? 父さんに変な疑いを掛けられたりしたら……」

「変な疑いって何だよ」

「……確かに。何だろ」


 伊織の父良悟は確かに健太郎の上司。そして、健太郎がキュアキュア好きなことも知っている。これを利用しない手はないというのは、分からないではないが……


「課長のLINKは知ってるから、俺が連絡しとく。伊織、お前良い感じで話し合わせろよ」「う、うん……」


 無理矢理話をまとめられた気がしなくもない。

 困ったなと首に手を当てる伊織に、緑川が一枚の紙を差し出してきた。


「念のため、渡しておく。岸社長の経歴と人物像のメモだ。相手は大手芸能プロダクションの社長……。話も上手い。当日は私と三ツ浦先生も同席する。ナイトスカイ側には君達の素性に関する質問はNGだと念を押しているが、相手がどう出てくるかは分からない。余計なことは喋らないよう、今から警戒しておけ」


 面倒くさいことになったなと、伊織は心の中で呟いた。

 応援してくれる人達に本物を届けるための契約、ということには納得していたが、こうして戦闘以外の面倒事が増えることに対しては、どうしても抵抗がある。


「やっぱり水着になってくれとか言われませんよね……」

「それはない。安心しなさい」

「白ビキニ、喜んで着ますよって伝えなくちゃな……」

「水着はない」


 ふざけているのか真面目なのか。

 健太郎はギリギリまで、水着の話をするのだった。

お読み頂きありがとうございます!

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シルバーウィーク中、あと一回更新できるかな。

分かりませんが、書けたら……!

次はいよいよ100話目です!!!!


今後も毎週少しずつではありますが更新していきますので、お付き合いいただきますと幸いです……!!

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