買い物デート
春花と秋葉が引っ越してきた週の土曜日。
俺と美咲はデートの約束をしていたため、近所のショッピングモールに来ていた。
「お待たせー!」
ショッピングモール前にある広場で待っていると、美咲が俺のことを呼びながらこちらに歩いてきた。
何故か、春花と秋葉を連れて。
「な、なんで春花と秋葉が一緒に......?」
「えへへ。実は、さっき偶然出会っちゃって......。せっかくだから、一緒にどうかなーって。引っ越してきたばかりで、この辺のこと知らないだろうし」
「す、すみません......。二人のデートを邪魔しちゃって......」
春花は、申し訳なさそうにペコペコと謝る。
「いやーすみませんねぇ」
一方秋葉は、謝ってはいるが、そこまで申し訳なさそうではない。
「ま、まぁ一緒に居てもいいけど......」
本当は二人きりで出かけたかったが、こうなっては仕方ない。
「それじゃ、レッツゴー!」
美咲は拳を空に突き上げ、ショッピングモールの入口に向かい、歩き始めた
「それじゃ、私たちも行こうか!」
「う、うん......!」
春花と秋葉は、二人並んで美咲の後に続いた。
「はぁ......。なんか、疲れそうな一日になりそうな予感だ......」
俺はため息を吐きながら、三人の後を追った。
ショッピングモールは三階建ての吹き抜けとなっており、開放感がある建物だった。
「わぁー! おおきーい!」
「わ、待って......! 秋葉ちゃん......!:
十メートル以上の高さの天井を眺め、目をキラキラさせる秋葉。
「秋葉ちゃん。注意散漫にならないように気を付けてね? 人が多くて、ぶつかっちゃうかもしれないから」
「はーい」
美咲に注意された秋葉は、周りに人がいないことを確認しながら、建物をキョロキョロと見始めた。
「......ねぇねぇ。今の私、お姉さんっぽくなかった?」
「あ、あぁ......」
本当にお姉さんだけどな、とは言えなかった。
「そういえば、二人は何か目的があって来たのか?」
秋葉に置いて行かれた春香に聞く。
「えっと、お洋服でも見てみようかなって......。それ以外は、特に予定は......」
「じゃあさ、みんなでお洋服を見に行こうよ!」
「え、いいんですか......?」
「いいよね、風峰」
「美咲が行きたいなら、それに合わせるよ」
「よし、けってーい! 秋葉ちゃーん! お洋服買いに行くから、こっちに戻っておいでー!」
「はーい!」
美咲の呼びかけを聞き、こちらに戻ってくる秋葉。
「じゃ、風峰。行こっか」
美咲は俺の手を握る。
「あ、あぁ」
俺は美咲に手を引かれ、服屋へと向かった。
「わぁー!」
「可愛いお洋服がいっぱい......!」
美咲が選んだのは、ガーリーな服を揃えているお店だった。
当然、客は女性ばかりであり、男である俺は店に入りずらかった。
「俺、店の外で待ってるよ......」
「ダーメ! 一緒に見るの!」
美咲は俺の手を強く握り、店へと引きずりこんだ。
ピンクを基調とした可愛らし店の雰囲気に、浮いてしまっていないか気にしながら店内を歩く。
「ねぇねぇ秋葉ちゃん......! このお洋服どう......?」
春香は、トータルコーディネートされているマネキンを指差し、秋葉に確認する。
レースが付いた白い服と、フリフリのミニスカートの洋服だ。
「可愛いけど、こっちの方が春香に似合うんじゃない?」
秋葉は別のマネキンを指差す。
こちらは薄ピンクのワンピースのような服だ。
「こっちも可愛い......! それに、私にピッタリかも......!」
「そうでしょそうでしょー? あ、これはどう?」
二人は仲良く洋服を見ながら店の奥へと進んでいく。
そんな二人を、微笑ましく眺める美咲。
「あ......。なぁ美咲。この服とか似合うんじゃないか?」
ふと、視界に入った服を美咲に伝える。
「可愛いけど、私の雰囲気に合う感じではないかもなぁ」
「そ、そうなのか。......難しいな、服選びって」
「まぁ、男子の風峰からしたら、女性の服って縁が無いもんねぇ。......もしかして、退屈?」
「いや、そんなことないぞ! みんなが楽しそうなら、俺は......」
「......春香ちゃん! 秋葉ちゃん!」
美咲は突然、二人に声をかける。
「どうしたんですかー?」
商品棚からひょっこりと顔を出す秋葉。
「ちょっと、別のお店で急ぎの用事を思い出したから、ちょっとここを離れるね。 ちょっと時間かかりそうだから、後で入口に集合しようね」
「分かりましたー!」
秋葉は元気よく返事をすると、再び洋服選びに戻っていった。
俺は美咲に手を引かれ、店を出る。
「急ぎの用事って、そんなのあったのか?」
「無いよ」
「え、じゃあ嘘付いたのか?」
「......だって、二人が楽しめないと、デートじゃないでしょ? ほら、行こ。一緒に楽しめそうなお店、探そう?」
美咲は案内図を見ながら、お店を探す。
「ごめんな、気を使わせちゃって......」
「いいよいいよ。それよりさ、ここのお店はどう? ここなら、風峰でも楽しめるんじゃない?」
「雑貨屋か。いいな」
「よし。それじゃ、行こう?」
俺と美咲は、手を繋いだまま、一緒に歩き始めた。




