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救国の女神は本の続きを書く。  作者: さんまぐ
救国の女神が追いやられた土地を開放するまで。

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18/48

第18話 救国の女神は自身が眠っていた間の事を知る。

真っ青な顔で老神官を見るメーライト、その眼差しを前に、老神官は涙を浮かべて「真でございます」と言う。


老神官は「では、司書様は!?」と聞くメーライトの問いには答えずに、「まだ続きがあります。これは始まりに過ぎません」と言って話を続けた。



メーライトが倒れていてよかったのかもしれないと、アーセワ、アノーレ、老騎士に老神官は口々に言った。

メーライトが気絶して半日程進んだ所で、第二陣の馬車隊は壊滅していた。


苦悶の表情で手足を引きちぎられ、木に吊るされていたバナンカデスの父、カオデロスとその妻達、周りにも逃げ惑う医療班や生産職の面々の死体が散乱し、文字通り血の海になっていて、歴戦の兵士たちですら吐き戻す者がいた。


「これ、さっきの奴だろうな」

「アルーナ殿?」


「複数いたら手口がバラバラになるが、これは全部1人でやってる。アナーシャ、二陣で出て行った馬車は50はあったよな?人々は歩きも含めたら千はいたはずだ」

「ええ、軽くそのくらいはいたわね」


「ぐちゃぐちゃになってるから数はわからねえけど、恐らくそれくらいは居るな」

「第二陣なんて言って逃げ出さなきゃ生き残れたのにね」


問題はそれだけではなかった。

第二陣には、第一陣に間に合わなかった生産職や医師達が多かった。

色々な素材や医薬品を馬車に積んでいた。

それらがやられては砦に移動できたとしてもジリ貧になる。


足止めを食う形でアルーナ達が警戒する中、兵士達が洗えば使える資材の確保を進めていく。


不思議な事に資材はほぼ無傷で血に汚れているだけのものばかりだった。


「大体こういう時は、ジリ貧に追い込む為に薬とか食べ物を滅茶苦茶にするのに…」

「何であれ助かった事は事実、良かったと思いましょう」


一晩の足止め、徒歩の人々は足止めせずに歩を進め、馬車組だけが薬と資材を確保し、馬車に乗せられるだけ乗せて、怪我人や病人、妊婦以外は貴族であろうが歩いていた。




メーライトがベッドの上で聞いていて良かった。これが立って聞いていたら間違いなく崩れ落ちていた。


「バナンカデスさんのお父様達が?」

「はい。私も確認をし、この手で埋葬を行いました」


「ば…バナンカデスさんは?」

「全てを知り、泣き崩れられて…、いまだに憔悴されていると聞きました」


そもそも、この木の家は何なのか、老神官はそこから説明を始める。


「ここは砦の向こう側になります。追いやられた土地とはいえ、アルデバイト側は侵攻の危険があります。砦には国王陛下達がお住まいになっています。私は女神様もそちらにとご提案しましたが、使徒様達がこちらの小屋をご所望されました」


メーライトからすれば生家に近いこの家に不満はない。

かえって落ち着くくらいだ。それにアルデバイトの人達全員に住まいはない。それからすれば天国のような住まいで申し訳なくなる。


「続けます」と言って老神官はそれからの旅路を説明した。

10日してようやくヤヅマーミ砦に到着した馬車、だが殿ではなくいち早く食糧と医薬品を届ける為に人々を置いていく事になったが何とか砦まで到着する。




「何とか、到着したな」

「ええ、後は神様が目覚められてからの事が問題になります」

「本が足りない」

「だね。どう見てもこの荒地と砦じゃ、娯楽は本じゃなくて酒だね」


漏らすアーセワ達は目の前の景色に肩を落としたくなる。



メーライトの馬車を見て、ワルコレステ達が出てきて、撤退時の強襲と第二陣の話を告げると「不幸中の幸い」と言い、逆にこの状況で第三陣、国王がいる馬車隊が無傷で到着できた事に感謝を告げて、昏睡から目覚めないメーライトを案じて砦に招こうとするのを断り、小屋を所望すると砦の向こう側で兵士達が使うものならと言われた。


小屋に案内したワルコレステは「アーセワ殿、この先のお話を」と言う。


アーセワは「勿論です。神様が目覚められるまでの話と、その先の話をする必要があります」と言い、砦の中で付近の地図を見ながら本を求め、シムホノンがこの先の事を見越した本選びを行い、何が何でも届けると言っていたが、あの状況では難しいだろうから寒村にある本や、死に瀕した老人が物語を書けないかと提案をした。


ワルコレステは兵士を使い、近くの村に行かせたが新しい本は無かった。そんな中でも日々増え続ける難民達。

そんな難民となったアルデバイト人達全員が砦に到着したのは、メーライトの到着から5日後の事だった。



「本が無いのですね…」


表情を暗くするメーライト。

自身の唯一の能力が発揮できない事に肩を落とすが、老神官が「いえ、本はございます」と言うと、扉の向こうに控えていた老騎士が、豪華な装飾がされた箱を持ってくると、中からは十数冊の本が出てくる。


メーライトは驚きと共に「これは?」と聞くと、老騎士は涙ながらに「シムホノンは約束を守り、メーライト嬢の為に、我々に必要な本を用意しました。褒めてやってください」と言う。


「司書様が?では!では司書様はご無事なのですか!?」


メーライトは目を輝かせて喜ぶが、老騎士も老神官も首を横に振り、「シムホノンはここにはもういません」、「見事な最後でした」と言い、何があったかを話し始めた。





最後の難民が到着した翌日、砦の見張り台に居たアナーシャは、天高く飛んでくる何かに身体の芯から震えた。


あれは撤退戦の時に、アジマーの氷魔法を砕いた何かだとすぐに理解をした。

メーライトが倒れ、人より少しだけ力が出せる程度の自分達にできる事は限られている。


「緊急事態!アーシル!皆を集めて!アイツだ!氷漬けの竜を粉々にして第二陣を葬った奴が来た!」


アナーシャの言葉で、砦は臨戦体制になるが。なす術はない。諦める者も出てくる中、落下してきた何かは、以前のような衝撃も出さずにフワリと降り立つと砦に向かって歩いてきた。

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