第16話 救国の女神はアジマーを喚ぶ。
【魔術と魔法】
なんの変哲もない村にある洞窟。
仲の良い4人の若者。
村人達は洞窟の奥にある御神体にお詣りをしていた。
御神体には「2人の仲が永遠でありますように」と書かれていて、恋愛の神様だと思って祀っていた。
ある日、地震で洞窟の奥にさらに奥への道が見つかる。
若者達はその奥で魔法書と魔術書を見つけ、1人の若者は魔法書、もう1人は魔術書を手に入れる。
魔法と魔術を知った2人は、研鑽を続けて様々な力で人々を救う。
そのうち「魔術は魔法より凄い」、「魔法は魔術より凄い」と競い合いは争いに発展していく。
2人の争いは激化してしまう。
激化をしても、初めは治水や地盤強化に力を入れていて、人々も生活が豊かになって感謝しかなかった。
だが最後は直接対決になる。
決闘は相打ち、どちらが優れているなんて事はなく、どちらも優れていた。
残されたお互いのパートナー達、1人は世界を悲観して、ある朝一枚の手紙を残して行方をくらませた。
[あの像の意味がようやくわかった。きっと昔も魔術書と魔法書が外に出た為に、彼等のような人達が現れていた。あの悲劇を起こさない為に洞窟の最奥に封印されていて、あの像が置かれていた]
残された1人は本を持って、洞窟の奥に封印に向かうところで本は終わっていた。
メーライトは行方不明になった魔法使いのパートナー、アジマーを思い浮かべる。
彼女はパートナーと共に魔法を習っていた。
パートナーからは「覚えたり応用はアジマーの方が優れてるけど、力や威力は俺だな。危ないから内緒にしような」と言われていたが。それこそ驕りで、アジマーは本気を隠していた。
彼女が本気になっていればこんな事にはならなかった。
アジマーは自身の噂が村に届かない場所で、人々の為に力を奮っていた。
「書けた!アジマーさん!お願いします!」
メーライトの声に応じたアジマーは、現れると「魔法使いに全て任せなさい」と言って儚げに微笑む。
そのタイミングで「準備完了!偉いさん達はもう逃したよ!神様!行くよ!」とアノーレが部屋に入ってくる。
「司書様は!?」
「まだ無理だって言ってた。でも安心しなよ。顔でわかる。ああいう男はキチンと有言実行するさ」
メーライトは「アジマーさん!この城に残る司書様は、私達のために本を探してくれていて、敵が来るからなんとかしなければならないの」と、わかりにくい説明をするが、アジマーは「城を守って、敵を皆殺しにすればいいわけだね?任せなさい」と返す。
「バカ!現れたてなんだから無茶だって!」
「大魔法使いと神様ならやれるよ。盾使いの守り、戦乙女の攻撃力、弓使いの面制圧、それらを1人でやるんだ。3人より私の方がマシなはずさ」
アジマーは自信に満ちた顔で、「アルーナ!アナーシャ!アーシル!過度の力を控えて、撤退用意。大魔法使いの力を見せてやるよ!」と声をかける。
馬車が全て出るのを待ち、城に残るのはシムホノンのように使命のある者や、国の為にシムホノンを守りたいという者、中には国で死んでいきたいと言う老人達もいたが、それ以外の者達が、全て外に出て、メーライトと使徒達を乗せた馬車を老騎士が発進させると、幌の上に立ったアジマーが、「神様!悪いんだけど踏ん張ってよね!右手!あのデカブツを起点とした氷魔法!エンドレスフリーズ!」と唱えると、進軍してきた巨大なドラゴンの足元から攻め込んでくる魔物が全て凍り付いて氷像のようになる。
「凄いです!」と喜ぶメーライトに、「ね?まだ大丈夫だよね。左手でもう1発放つよ。こっちで司書を守らないとね」と言ったアジマーは、「左手!演算終了!城のサイズ把握!ドーム状!アイスウォール!」と唱えて、内壁より分厚い氷の壁で城を覆った。
「えっへん!キチンと出口は塞がなかったから司書は出てこられるよん。神様もよく頑張ってくれたね。ありがとう」
メーライトはアジマーの言葉に首を振って、「ううん。ありがとうございます」と言い、メーライトが倒れなかった事に、アーセワは「お見事」と言い、なんとかなった事に皆がホッとした。
城の図書館でメーライトを見送ったシムホノンは、少し照れくさそうに「やはりメーライト様なら私の想像を遥かに上回りますね」と言葉を送る。
シムホノンが喚ぶ事を考えていたのは、魔術書と魔法書を洞窟に封印に向かったワイリィだった。
封印直前に2つが分かれて争いになるのならと、1人で魔術と魔法を学んだワイリィは、才能には恵まれなかったが、全ての魔法と魔術を獲得したと提案する紙を書いていた。
「私も負けていられません。メーライト様とアルデバイトを復興する為にも、次の使徒様をご用意しなければ」
シムホノンは本棚へと向かいながら呟いていた。




