藤乃宮特区
刹那さんはアレのパイロットを希望しないのかな、とも思ったけど、多分希望してたら向こうに残っててこんな所にはいないかな。
俺としてもアレの乗組員はないかなぁ。燕三条のモンスターに対する特効は魅力的ではあるけど、今の体ならともかく変身後だったら逆に足かせなる気もするし、何より、
《トワが乗るのは私だけですからね! ぷんぷん!》
アイリスが騒ぎそうだもんなぁ。あとその言い方はなんとかしろ。
「……ねぇトワさん」
「……あ、はい、なんですか?」
アメル達が持ち込んだ例の機体に思いを馳せていたところで刹那さんから声を掛けられ、俺は意識を引き戻す。
「まだ、引っ越し先決めてないのよね?」
「はい、関東かその周辺にはしたいところですけど……」
「だったら藤乃宮特区はどうかしら」
「藤乃宮特区って、探索者協会の本部がある?」
「そうそう。あそこなら一応関東だし?」
「でもあそこって、入場制限があるんじゃありませんでしたっけ」
藤乃宮特区は神奈川の西側にある、探索者関連の施設が揃った場所だ。協会の本部施設の他実験や検査施設、訓練施設などの様々な関連施設の他、居住区も確かにあったはずではある。だけど、
「あそこって、基本協会関係者しか住めませんよね」
本部や研究施設で働いている人、それに協会所属や契約を結んでいる探索者以外は住めないんじゃなかったっけ。
「いえ、直属や契約している人じゃなくても二級以上で協会に貢献している人間なら居住可能よ。私も今はあそこに住んでるし。私結構協会からの依頼は受けてるしね」
確かに。房総ダンジョンの時も佐渡ダンジョンの時も参加してたし。
「トワさんも短い期間で複数依頼を受けてるし、何より協会としてはルーティエさんの能力は借りたいだろうし」
「それは確かにそうですね」
るークラスの転移能力者って他にいないだろうし、どこまで行ってもリスク少なく撤退できる。探索へはもってこいの人材だしその有用性は佐渡ダンジョンで証明された。間違いなく協会からしたら協力を得たい人材だろう。
「あそこ、居住証をもっていなければ許可を得ないと中に入れないから、余計な人間に絡まれる可能性は低いし。日常生活に必要なのもの区域内で入手できるから、普段の生活を送るだけなら区域から出ないでも可能よ。メディアの対応や仲介も頼めばしてくれるからトワちゃん達にとってはかなりお薦めだと思うけど」
「確かに」
藤乃宮特区は街から離れた場所にあるから外出するときはちょっと面倒だけど、それ以外の点を考えるとメリットだらけだなぁ。
「希望するなら、私の方から確認してみてもいいけど」
「いや、さすがにそこまでお願いするのは……」
「大した手間じゃないし、それくらい構わないわよ」
「……でしたら、お願いできますか? 最終的な判断はるーは戻ってきてからになりますけど」
「わかったわ」
多分るーがダメっていう事はないとは思うんだけど、まぁ一応ね。
そこまで話したところで丁度頼んでいた軽食がやってきたので、この話に関しては後日連絡をくれるということでひとまずお終いとなった。その後は軽食に手をつけつつ最近の事や佐渡での事などを話しているうちに気が付けば30分程時間が経っていた。
軽食もとっくに食べ終わったし、一応この後ちょっと店を見て回りたいけど、刹那さんはどうするかな? そう思って声を掛けようとしたところ、
「あのね、トワさん」
先んじて、刹那さんの方から声を掛けられた。……ただ何故かちょっと上目遣い気味になっている。さっきまで普通に喋ってたのになんで?
「ちょっと、そのね、相談があるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
さっきこっちも相談に乗ってもらったし、俺でなんとかなる相談なら聞きたいところだけどなんだろ?
「あのね、一緒に藤乃宮ダンジョンに潜らない?」
特区内でも探索者向けの商店はあるけど品揃えはこちらの方が豊富なので、刹那さんはこっちの店に来ています。




