ウインドウショッピング
「うーん、やっぱりそうそういい感じの奴はないかー」
《久遠にはアタシがいるから別になくても問題ないわね!》
「アイリスを使わなくても戦える武器が欲しいんだよ、俺は」
頭の中に語り掛けてくるアイリスとそんなやり取りをしながら、目の前に並んだ武器の類一つ一つに目を向けていく。
今俺は、郊外のとある施設にやってきている。ここはいうなれば、探索者向けのショッピングモールのようなものだ。中に入るには探索者としての免許が掲示が必要な探索者専用施設。だから中に入ってしまえば変な集団に絡まれる可能性はないし、配信のファンとかに声を掛けられる可能性もない。
いや同業者のファンとかいたら可能性はあるけど、それはダンジョンとかでも同じだしな。
あ、あとちなみに中に入るまでも反探索者の集団はみなかった。ま、住宅地とかとも離れてるし、どこにでも出現するような規模の大きい集団でもないんだろう。
そうして今その場所で行っているのは、いわばウインドウショッピングである。
やってきているのは刀剣類を扱っている店舗。その中から自分の魔力の波長に合いそうな武器がないかチェックしにきていた。今のこの体用じゃなくて、変身後の体用だ。
当初は男としての体の時に使える武器を作るつもりだったんだけど、結局の所当面こっちの体でダンジョンで戦う事なさそうだからなぁ。協会からの発表だと今後佐渡で起きたイレギュラーのような事は増えそうだし……そうなると、るーの存在もあって協会から声掛かる事増えそうだ。なんだかんだいって協会からの依頼って報酬は結構いいので、今回みたいに明確にしばらく動く気のない時以外は女性体を維持している方がいい状況は続きそうなんだよね。
で、女性体でいるとしても、俺の場合燃費の問題があるわけで。アイリスを使うための力は回復速度に支障がある以上、必要な時以外はカートリッジにためた魔力ではなく自身の魔力を使って戦う方が望ましい。アイリス使わなくてもこっちの体なら技術的には完璧に魔術使えるしさ、魔力の使い方が馴染んでいる体だもの。そして戦うなら肉弾戦の方がより消費が少なくなるので、自身の魔力と波長のあう装備品を探しに来たんだけど……
やっぱり既製品だと中々いいのがないね。自分にあった武器を望むとなるとやっぱオーダーメイドじゃないと駄目かぁ。特に俺の変身後の体って異世界人としての体だから、こっちの基本的な魔力の波長とは合わないかぁ。
オーダーメイドは高くつくんだよなぁ……細かい調整が必要だから当然だけど。だからこそ自分で素材を持ち込んで費用を浮かそうと考えていたんだけど、とある事情で現在燕三条ダンジョンは潜れないから素材取りに行けないんだよな。
うーん、買えないまでもよさげな装備があれば大体の値段が判ればって気持ちでここまで出張って来たけど、無駄足かぁ。いや、一応既製品では自分に合いそうな装備はなさそうっていうのが分かっただけでも収穫だ。
《やっぱり久遠と一番相性がいいのはアタシよね!》
そりゃ元々現在ではお前と適合する唯一の存在な上に、お前を扱えるように体まだ作り替えられているんだから当たり前だろうよ。
んー、どうするかな。せっかくここまで出てきたし、他の装備品見ていくか。でも防具に関しては見た目はともかくとして性能的にはいつもの戦闘衣装一択なんだよな。んー、なんか消耗品の類でも見ていく?
回復系のアイテムとか変身してからはほぼ消費していないけど、確か残りはそれほどなかったハズ。一応保険として買い足しておくか?
んー、それ以外でもなんかいいものあるかもしれないし見ていくか。以前の男の時に買いに来た時は金銭的な余裕があまりなかったから、必要なものは最初から決めてて余計ないのは見なかったからな。
うん、ちょっと見ていこう。
そう思って、別の店に入ろうとそちらに足を向けた時。丁度聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「トワさん?」




