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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第六部~夏の夜空と彼女の想い~
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第4楽章〜フィナーレ〜⑤

 同日 午後9時すぎ〜


 〜佐倉桃華の想い〜


 きぃセンパイたちが出発すると、すぐにワタシたちのペアを呼び出す声が掛かった。

 

「19番のペアの人たちは、準備してくださ〜い」


 タイムキーパーを務める早見先輩の声に応え、ワタシと宮野さんは、スタート地点に移動する。


「はい、懐中電灯。折り返し地点にある展望台に御札が貼ってあるから、それを持って帰ってくれば、目標クリアだよ。でも、1年生の女子同士のペアだし、途中で棄権したくなったら、すぐに私に連絡してね。それじゃ、暗い道だから気をつけて」


 丁寧にアドバイスをしてくれた早見先輩に「ありがとうございます」とお礼を言ってから、ワタシと宮野さんは、森のように木々が茂る小道を進んでいく。


「向こうでも夜道には慣れていたつもりだけんども……やっぱり、不気味だすな」

 

 こちらに身体を寄せながら話しかけてくる宮野さんに対して、ワタシは問いかける。


「宮野さんは、転校して来る前、どんな所に住んでたの?」


「わたすが住んでいた所は、東北の田舎の街だったから……夜もすぐにお店が閉まるし、日が暮れるとサッサと家に帰らないと、自宅の周りは真っ暗になってたべな」


「そうなんだ……でも、そうすると、夜の星空はキレイだったんじゃない?」


「だすけよ〜。わたすの地元は、むかし軽便鉄道(けいべんてつどう)っていう、ちっちゃい鉄道が走っていたらしくて、そこの沿線風景が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のモデルになったと言われてるべ……」


「へぇ〜、そうなんだね。なんだか、ロマンチック……きっと、ここの星空にも負けないくらいキレイな夜空なんだろうね」


「だすけよ。その軽便鉄道は、いまは無くなってしまったけんども、近くには、『めがね橋』と呼ばれるJRの鉄橋が通っていて、その鉄橋もスゴく写真映えするべな。夕方から夜にかけては、ライトアップされて、『恋人たちの聖地』なんて言われてるべ」


「そっか〜。ワタシも一度、そんな場所に行ってみたいな」


 相づちを打つように、何気なくつぶやくと、宮野さんは、興味深そうにたずねてくる。


「いま言ったみたいに、『めがね橋』は『恋人たちの聖地』と呼ばれているんだけんども……佐倉さんは、一緒に『めがね橋』を見に行きたい相手とかが居るべか?」


「い、いや、いまのは、言葉の綾と言うか……恋人同士とか、そういうことじゃなくて……」


 突然の質問にアタフタしながら返答するワタシに、彼女は済まなさそうに返答する。


「あっ! 申し訳ないべ……急に変なことを言ってしまって」


「だ、大丈夫、気にしてないから! そもそも、ワタシにそんな相手がいるはずも無いし……そ、それより、宮野さんは、そういう相手とかいないの? こっちの学校には、春に来たばかりだから、向こうの学校の話でも良いんだけど……」


 宮野さんとは、高校野球の開会式の取材を通じて、ある程度、色々な話をするようになったものの、とこうした類の話をしたことは無かった。それが、よりによって、肝だめしの最中に自分が不慣れなガールズ・トーク的な内容を語り合うことになるとは思わなかった。話の流れとは恐ろしいものだ。


「わたすは、向こうの学校では男子にからかわれるばかりだったから……そんな風に思える相手は居なかったべ」


「そうなの?」


「わたす、鈍臭いから、男子には良くからかわれてたのさ。ほんでも、ヨツバちゃんの動画とかを見て、自分なりに少しでも垢抜けようとしたべな。そうして、《ミンスタ》でコメントをするようになったら、ヨツバちゃんの方からも、わたすの投稿にコメントをもらったりして……それが、ちょうど、さっき言った『めがね橋』の写真だったんだ〜。あん時は嬉すかったなぁ」


「ふ〜ん、そっか〜」


 ワタシにとっては、くろセンパイに絡んでくるイケ好かない上級生という存在でしか無い白草四葉という女子生徒も彼女にとっては、憧れの存在なのだということが、よく分かる。そして、その女子生徒が慕われているのは、どうやら、宮野さんのようなフォロワーに対するきめ細かなケアに理由がある、ということは、なんとなくわかってきた。


 そんな相手に対して、自分自身がどのような感情を抱いていようと、この場でそのカリスマ的女子を悪く言うことは避けておこう、と考える。


 ただ、それでも、ワタシには気になることがあった。


「ねぇ、宮野さん。ひとつ気になっていることを聞いてイイ?」


「ん? なんだすか?」


「宮野さんは、男子とからむのがあまり得意でないかもだけど……あなたが憧れる白草さんに交際相手が出来たりすることは、気になったりしないの? 白草さんと一緒に、相手の男子も()()()?」


「ん〜、そうだすな〜。相手にもよるけんども……ヨツバちゃんが選んだ相手なら、応援したいと思うべ。もちろん、ヨツバちゃんを傷つけるようなクズなオトコなら許せないけんども――――――」


「あっ、やっぱり、そうなんだ」


「んだ! だども……」


「だども?」


「いつも、わたすたちに色んなことを教えてくれるヨツバちゃんが、余裕の無い表情を見せてくれるのも、フォロワーとしては、嬉しいべな。ヨツバちゃんには、幸せになってほしいけんども、これからも、色んな表情を見てみたいと思うのも事実だべ」


「そ、そうなんだ……」


 ファン心理というのは、よく分からないけれど、そこには、自分たちには理解できない濃い闇が広がっているような気がして、これ以上、詮索しない方が良い、とワタシは判断した。


 そうして、自分たちの間に、しばしの沈黙の時間が流れそうになった瞬間、懐中電灯の先に白い浮遊体があらわれた。

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