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第75混ぜ 上手く事を運べれば……くくく


ゆったりやります……暑いですしね……

 


「やっとアトリエまで戻って来れましたね……」

「おい、ホムラよ! どうしてこんなに人が多いのじゃ? またお祭りかの?」

「あぁ……なんか、別の世界から勇者を名乗ってる子達が来たらしくて、そのお祝いなんですって」

「……何を祝うのだ? 妾も魔族の国から来たぞ!」

「そうですけども……特別な力でも持ってるんじゃないですかねぇー」


 王都の住宅街の端の端、自分のアトリエに戻ってくるまでにいつもの倍の時間が掛かっていた。途中、借りていた馬車をお店に返してそこからは歩きになったが、歩きにくい事この上なしと言わんばかりの人混みだった。

 お腹の空き始めたディールがちょっと不機嫌になりつつある。

 それもこれも、全ては勇者がパレードなんかしているせいで……帰りながらミルフが集めた情報によると、この国に来た勇者は三人で、男が一人と女が二人だけらしい。

 歳は成人したてぐらいらしく……つまり十五か十六くらいの高校生だ。俺や師匠とはまた別の方法でこの世界に来た子達で、言葉とかどうなのかも気にはなるところだ。

 ただ今は、帰りたいのに時間が掛かったことでちょっと嫌いになっている。


「まぁ、ほら……アトリエには着きましたし、ミルフにお腹一杯になるまでご飯を奢って貰いましょ」

「うむ! むふふー、ミルフよ早く連れていくのじゃ!」

「うぅ……約束したとはいえ、冒険者の所持金は少ないのに……というか、今日は手持ちのお金が無いから別日で……」


 そんな事を言いながらトボトボと歩くミルフとは別に、俺は手に入れた鉱石がウハウハで、マユエルにも分けてあげようなんてことを考えていた。


「妾が帰ったけどーっ!」


 勢いよく、元気に、ハキハキと、ディールがアトリエの中に入っていった。

 それに次いで俺とミルフもアトリエの中へ入っていく。数週間ぶりの我が家だが、キャサリンさんのお陰かゴミ一つ落ちていない綺麗さが保たれていた。

 しかし……いつもならすぐ出迎えてくれるはずのキャサリンさんも、エレノアも居らず、マユエルもビスコも居ない。フランは警備やらで忙しいとしても、まさか誰も居ないとは思わなかった。

 静かなアトリエにディールの声が響いただけで、返事は返って来ない。


「……みんな、どこかに行ってるんですかね?」

「大方、パレードでも見ているんだろうさ。私は少し休ませて貰うぞ」

「うぉーい、ホムラ! この紙に何か書いてあるぞぃ! 妾は喋るけど読めんでな、読んでくれ」


 ディールが見付けた用紙にはエレノアからの伝言が残されていた。


『クルスへ、シミラーマンさんが帰ったら王城に来て欲しいと言っていたヨ。私もミルフに倣ってキャサリンさんとこれから修行するヨ。マユエルちゃんとビスコは学校で、フランは警備ネ! ――エレノアより』


 状況を分かるようにしてくれたエレノアの置き手紙に感謝して、とりあえずは目先の問題に頭を切り替える事にした。

 エレノアがより強くなろうとしているのは良い事だし、マユエルもビスコも通常運転でそこに問題は無い。

 ただ、最初に書かれていたこのタイミングで国王の側近であるシミラーマンさんからの王城へのお呼ばれ……正直に言うとあまり良い予感はしていない。


「なんて書いてあるのだ?」

「みんな、それぞれやる事をやってるって話と……」

「と?」

「ちょっと謎ですが、何故か王城に呼ばれている事ですかね」

「この国の王がホムラに用事があるのかえ? んふー、面白そうだから妾も行くぞっ!」


 何事にも首を突っ込みたがるのが悪い訳ではないけれど、流石にこの国の住人ですらないディールを王城に通せはしないだろう。

 忍び込むなら関係ないが、どうやら今回はちゃんとお呼ばれされているみたいだから、余計な火種は持ち込まない方が良いだろう。


「いや、駄目ですよ。ディールって一応空を飛んで来た不法入国者ですから……」

「うぬぅ……つまらぬのぉ」

「お金あげますから出店でも回ったらどうです?」

「うー……一人はつまらぬのじゃ……」


 肝心のミルフはもうソファーで寝始めている。その素早さは流石の冒険者だけれど、今はもう少し起きておいて欲しかった。

 たしかに同行者については書かれてないから、連れていっても良いものか分からない。今のディールを一人にさせておくのもなんか不安になるし……。


「大丈夫……かなぁ……?」


 フードを深めに被せて、勝手にどこかへ行かない様にしておけば……うーん。やっぱり厳しいか?


「連れていかないなら勝手に行くぞーっ、行くぞ行くぞー! なんせ、妾は飛べるもんねっ」

「……はぁぁ。仕方ない。絶っっっっ対に大人しく……あっ! そうじゃん? マユエル連れていけば信頼はバッチリじゃん?」

「おぉ、あの小娘が居れば妾も行って良いのかえ!?」


 うにゅうにゅ言っているだけだが、マユエルは第三王女。兄とか姉とかとの関係性は微妙みたいだが、今回はひっそりとシミラーマンさんと面会するだけだ。

 ならば、俺だけで行くよりも執事やメイドさん達からの信頼はあるし、ディールが居ても友達とか言って誤魔化せるかもしれない。

 鉱石を学園のアトリエに置いておく為に立ち寄れるし、効率的ではある。


「ディール、マユエルを迎えに一度学園に飛んで貰えますか? ついでに荷物も届けて欲しくて。その間に俺は王城に出向いてシミラーマンさんと連絡を付けておきますんで」

「うむ。任されたぞ! あの小娘を連れて来れば良いのだな!」

「マユエルを連れて来る時も、ちゃんと人気の無い場所に降りて、トコトコ歩いてくださいよ?」


 思い立ったら即行動。俺達はすぐにアトリエから出発をする。

 俺は混み合っている大通りは避けて、屋根を(つた)って王城へ一直線に駆けていく。ディールは羽を広げ、雲より高く飛んでから学園へと向かった。


 ◇◇


「止まれッ! 何者だっ。ここより先は王城であるぞ」


 王城へと続く通路に入る前のエリート警備兵が立つ門まで俺はやってきた。今回は真正面から堂々と入れる案件だと確信があるからこそ、こうして面倒な手順を踏みに来ている。


「錬金術師のホムラと申します。国王陛下の側近であられますシミラーマン殿に面会を願いたい。連絡は取れますか?」

「用件ならばここで聞こうっ! 今は知っている通り王城は勇者様がお泊まりになる場である。不用意に通らせる訳にはいかない」

「そうですか。私もシミラーマン殿に呼ばれただけですので用件は分かりません。ここで待ちますのでシミラーマン殿との連絡をお願いします」


 丁寧を心掛けたのが良かったのか、怪しまれてはいるが荒事にはならなそうだ。

 兵の一人が門に併設されている建物に入っていく。おそらく連絡手段はそこにあるのだろう。今はただ、ジッとしておくだけでいい。


(あー……せっかくだし、マユエルをダンジョンに連れて行く件。もう一回ちゃんとお願いしてみようかなぁ)


 錬金術師の発表会の前に少しだけ話をさせてもらった時は、リスクが高いとか考えてみるとかの反応しか貰えなかった。

 ただ、今は……勇者というピースがある。王女を国の外へ出すリスクがあるとしても上手いことやれば事を運べるかもしれない。


(ふふふ……勇者だろうがなんだろうが、使えるものは使わせて貰うぞ……)


 いろいろ考えながら待っていると、連絡が繋がったみたいで離れていた兵士が戻って来た。


「しばしここで待て。シミラーマン様がお迎えにあがるそうだ」

「分かりました」


 普通の貴族や大商人ならば、ここで幾らかの金を握らせるのだろう。だが俺は、ただの錬金術師であり一般人だ。そんな常識に則る必要性は無い。

 チラチラと視線を向けられようが待てと言われたなら、静かに待つだけである。

 それに……そろそろ来るだろうしな。


「ぬぉーい! ホムラよ、妾が連れて来てやったぞえ!」

「先生~、久し振りなのよ~?」


 少し離れた所から同じ背丈の子供が二人、パタパタと駆けて来る。

 一人は認識阻害付きフードを被って、もう一人は薄紫色の髪を風に(なび)かせながら。


「な、な、なぜ貴女様がっ!?」

「おい、とりあえず頭を下げろ!」


 先輩エリート兵士の判断は早く、少し若い方の兵士にすぐさま指示を出す。

 それも当然。自分達が守る国を代表する一族の者に対して、許しも無く立ち塞がるのは不敬に値する行為だからだ。


「マユエル、ちゃんと練習はしていたか?」

「うにゃ! バッチシなのよ~」

「オーケー。鉱石を大量に手に入れたからな。後で『声』を聞きながら何か作ってみると良い」

「うにゅ~っ! 先生、ありがとなのよ」

「ホムラよ、妾が連れて来たんじゃぞ! 妾が連れて来たんじゃぞっ!」


 プンスカしだしたディールにも、今は飴ちゃんを与えて大人しくさせる。

 きっと兵士達からすれば、マユエルが居るのにどうしてこの男は偉そうなのかとクエスチョンマークが頭に浮かんでいるだろうが、そんな事をいちいち解決してやる義務は無い。


「シミラーマンさんが迎えに来るから、大人しくな。マユエルはディールと手を繋いで、友達という事に。ディールも勝手に何処かへ行かない事。良いですね?」

「うにゅなのよ~」

「分かっておるわ!」


 遠目にシミラーマンさんが乗っているだろう馬車が来ているのが見え、今の内に、王城へ入る際の注意点を俺から二人にしておいた。

 どういう用件なのかはまだ勇者関連だろうとの、予測程度しか立てられていないが、上手くやれば風向きは良くなるだろう。

 それに、召喚された勇者は師匠も予期していなかったこっちの世界の人間が行った行為だ。

 神を味方に付けている以上、介入している可能性も否めないがそれも含めてその勇者から話を聞いてみるのも今後の参考にはなるかもしれない。

 脳内で、やる事、聞きたい事をいくつかリストアップしながら、まもなく到着する馬車をマユエルとディールと共にジッと待っていた。


「――門を開けよッ!」


 シミラーマンさんの声が響き、大きな門がゆっくりと開いていった。




誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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2020/1/11~。新作ラブコメです!٩(๑'﹏')و 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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