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第74混ぜ 勇者側

~おさらい~

(主要キャラ)

主人公 ホムラ

嫁 エレノア

剣士 ミルフ

魔法師 フラン

神官 ビスコ

弟子 マユエル

吸血鬼 ディール

師匠 ???

メイド キャサリンさん


~前回のあらすじ~


ミルフの弱々メンタルを改善するために、ホムラとディールと三人で鉱山に行ってた。鉱石ザックザクのウッハウハ


それで王都へと戻って来たら……なんと、勇者が入れ違いで既に王都に三人来ていた!


で、今回はその連れて来られた勇者側をちょこっとだけ!を三人称的なあれでお届けです


………………ごめんなさいね?ちょっとエタってて



 

 ――ホムラが王都を出る二ヶ月前――異空間にて。


「お、おい! みんな起きろ!」


 一人の男子生徒が目を覚まし、混乱しながらも周りに倒れていたクラスメイトに声を掛けた。

 上下左右すべてが白い空間。ただ、足場はしっかりと存在しており、立つことに問題はない。


「ん、ん……あれ? ここは……」

「なんだよ、これ……」


 次々と生徒達は目を覚まし、自分達の置かれた状況を理解しようと努めるも、誰一人として理解できる者はいなかった。

 それも当然だろう、先程まで授業が開始して遅れている先生をのんびり待っていただけなのだから。誰だってこんな状況になるとは思ってすら居なかったはずだ。

 ただ少し、男子の中にはこういう(・・・・)状況を夢見ていた者が居るみたいだけど。


「きたきたきたぁっ! 勝ち確でしょ! チートでしょ! 転移パターンでしょ!」

「山本くんが錯乱しているわ。男子、誰か落ち着かせてあげて」


 騒いでる男子を何人かの男子で抑え込んでいる間に、眼鏡を掛けた女子生徒が、クラスを纏め始めた。


「状況がよく分からないけど……みんな、意識はしっかりしているわよね? 痛覚もちゃんとあるから夢では無い様だし」

「だから、委員長はお堅い文芸ばっかり読んでラノベとか読んで無いっしょ! 異世界なんだって、コレ! 今から神様が出て来て俺達に世界を救ってとか言うんだって!」

「はぁ……それなら何で私達みたいな平凡な高校生が選ばれる訳? そういうのはもっと主人公らしい人達がするものでしょ?」

「バッカ、平凡だから選ばれるんだろ?」


 埒が明かないと、委員長と呼ばれた女子生徒は騒いでる男子との会話を断ち切った。どんな状況になろうともクラスメイト達に不安を与えない様にしようとそう決心し、何かが起こるまで女子生徒達を励まし始めた。


「うーん。実に平凡平凡! 誰一人この場から動こうとしないとは平凡ね! 離れた場所で待ってたけど退屈で来ました」


 突然、何処からともなく聞こえる声に何人かの女子生徒は悲鳴に近い声を上げ、騒がしい男子生徒はより騒ぎ始めた。


「はい、そこの男子の言う事もさっき会話していた女子生徒の発言も当たったり外れたりだね」

「女神様キタァーーッ!」

「う~ん、残念! 私は女神では無いよ。ちょっとばかり権限をお借りしているただの錬金術師さ。えっと、質問は受け付けるけどまずは話を理解してね(・・・・・)?」


 錬金術師を自称する女が手を振りかざすと、それだけで子供達は自分達の置かれた状況を理解した。というか、理解させられた。頭の中に説明が一気に流れ込み、嫌でも理解せざるを得なかった。


「――は、はぁ? つまり俺達はアンタの気紛れで此処に連れて来られたのか? その上、ダンジョンを攻略して私を倒せだって?」

「おいおい。君達が何の能力も無く、ただ召喚されようとしていた所に介入してやったんだぜ? 中途半端な術式でランダムに人が召喚されそうな所に介入して君達を選んだのはたしかに私だし、気紛れではあるけれど、お礼が先だろう? 私の愛弟子だってそれくらいはするぞ?」


 厚顔無恥というか尊大不遜な態度に流石の男子生徒もたじろいだ。ここで、生徒達の中でも冷静な者から気付き始める……これは不可避であると。

 そして、目の前の人間を模したナニかは自分達の常識では計り知れないと。


「いや、その……ありがとうございます。ですが、私達は戦いとは無縁の国に居まして……」

「知ってる。だから何だい?」


 男子に変わって委員長が矢面に立ち、どうにか交渉を試みるが一蹴されてしまう。委員長は返す言葉を失い、何も言えず黙ってしまった。

 言葉が途切れたのを見て、錬金術師の女が発言を続ける。


「はい。じゃあ、与える能力だけどチート過ぎても面白くないから私の裁量で希望に近い能力を与えてあげます。相談していいけど、早くしてね。こっちもダンジョンを弄るので忙しいんだから」


 高校生達は何も悪い事をしていない。ただ、災害に巻き込まれただけだ。

 女子生徒はあからさまに不安を募らせ、泣き出し、帰りたいという気持ちを口に出し始めた。

 逆に男子生徒は、ゲームか何かと思う事にしたのか与えられる能力にすぐさま意識を切り替え始める。

 そんな様子を錬金術師の女はジッと見ていた。見定めていた。頭の中ではどうすれば面白くなるだろうか……とそれしか考えていない。


「質問があります。私達は帰れるのでしょうか」

「死ななくて五つのダンジョンと最後のダンジョンをクリア出来たら帰すさ。面倒だから質問はあと二つくらいね?」


 視線が委員長に集まる。委員長自身もそれを感じて頭をフル回転させた。何を聞いておくべきか、その重要性に気付かない委員長ではない。


「……言葉は通じますか?」

「通じる様にしてあげるよ。サービスサービス! 残りは一つだよ」

「……誰か、何か聞きたいことはある?」


 慎重になりすぎて最後の質問が出来ず、クラスメイトに尋ねるも誰も目を合わせようとはしなかった。

 早くも責任の押し付け合いが水面下で始まっていて……それをほくそ笑んでいるのが一人。人は嫌いだが人が好きな錬金術師の女である。

 この先、各国で振り分けられて協力出来ない事を知りつつもそれを隠し、変わらない人の営みを観察している。


「……では、ダンジョンをクリアした先には何があるのでしょうか。目指す目標があれば人は頑張れますので」

「あー、じゃあ出来る限りのお願いを叶えて元の世界へと戻してあげよう。ただし、ダンジョンで一番の成果を上げた者だけにね。他の子は普通に帰すよ」


 当たり障りの無い普通の質問に、錬金術師の女は見切りをつけて答えた。

 質問を締め切り、早速チート過ぎないチート能力を与えていく時間に移る。


 大きな魔力……与える。魔法を使う技術は別だから。

 剣の才能……与える。才能と十全に発揮する為の身体はまた別であるか。

 瞬間移動……与える。世界は越えられず、行った事のある範囲にしか行けないから。

 空を飛ぶ能力……与える。空を駆ける魔物も生息しているから。

 オート回復能力……与える。どうせ首が離れてしまえば死ぬのだから。

 アイテムボックス……与える。この世界に存在していない能力という訳ではないから。

 物質創造……与える。正しい知識を持たないと扱えないから。

 探査系の技……与える。分担は攻略の鍵であるから。

 防御系の技……与える。命は大切だから。

 即死系の技……与えない。初見殺しとはまた別であるから。


 錬金術師の女は、何もない空間の中で更なる個室を作り出して、一人ずつを防音で囲まれた空間に呼び出し、生徒達から言われるチート能力を希望に沿って与えていった。

 無意味であったり、発動条件が厳しかったりするモノでさえ、可能なモノはアドバイスはせず言われるがままに与えたいった。


「次の子で最後ね。来なさい」

「うッス、失礼します! 早速なんですが、ちょっと質問良いッスか?」

「駄目よ?」

「やっぱりそうッスよね……すみません!」


 元気な男子は最初から返ってくる答えが分かっていたと言わんばかりにあっさりと引き下がった。


「それで、キミはどんな能力を得てどういう風にダンジョンを攻略していこうと考えているの? あぁ、そうだね。面白い答えだったらキミの質問にも答えようかな」

「それが……まだどんな能力が良いか決めれなくて。最後にして貰ったんスけど、そもそも貴女の能力を知らないのにどう勝てば良いのか俺には分からねーッス!」


 少しだけ、錬金術師の女は口角を上げた。

 誰もが自分が生き抜く為の能力を欲している中で、唯一ボスである相手をどう倒すか考えていた事に少しばかり楽しさを見出だした。


「倒す能力も欲しいッスが……でも、皆を守る能力があれば誰かがやってくれるだろうと思うったりもするし……あの、何で自分の頼んだ能力についてはまだ話してはいけないんスか?」

「ふふっ……良い着眼点を評価して今の質問には答えてあげる。その方が面白いからよ。どんな能力なのか知られない方が良しとする人間が少なからず居るわ。この中にもね?」

「……本当に女神様なんスか?」

「あっはっは! 神様は隣人くらいの方が面白いわよ! 私はただの錬金術師。とても利己的な、だけどね。で、能力は決めた? いっそ人間の枠を飛び越えて触手生物(スライム)にでもなっておく?」

「本当はカッチカチの方が強そうではあるッスけど、一緒に居る人を守れるなら何でも良いッス!」


 錬金術師の女は再度、愉快そうに笑った。人は嫌いだが人が好き……三十余名の中で誰が死のうと誰が生き抜こうと興味はまるで無い。

 ただそこに在るのは、誰かしらが足掻きながら成長しようとする姿が見たいという純粋な気持ちだけ。

 この中の誰が世界に影響を与えて、ダンジョンをより活性化させくれるのか、今から少しだけ楽しみになっていた。


 ――それから再び生徒全員の前に現れて、軽快かつ朗らかな口調で話し始めた。


「忘れないでくれたまえ。ダンジョンは何も君達だけの物では無い。世界中の誰もが名誉や更なる財宝を狙って攻略しようとしている。急がねば君達は何も出来ずに帰れなくなるし、準備を怠ればただただ死にに行く。この世界に在るものなら何を使っても良いし、何も使わなくても良いだろう。誰かと徒党を組んでも良いし、一人という選択肢もアリだ。もう泣き叫んでも状況は変わらない。私からの最後の忠告をしよう……順応出来ない者から死んでいくよ。じゃあ、バイビーッ!」


 どういうカラクリかは誰も分からないが、星を散らしながら錬金術師の女は消えていった。

 そして……再び、全員の意識はどこか遠くへと沈んでいった。



 ◇◇◇




次からは、またホムラの一人称に戻ります

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2020/1/11~。新作ラブコメです!٩(๑'﹏')و 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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