第66混ぜ 無遠慮に言い合える関係性
お待たせしました!
よろしくお願いします!
半分に分ければ良かったかもしれないくらい、少し長めです
「では、行ってくる……」
「めちゃくちゃ緊張してるけど、大丈夫ですか?」
ミルフさんが席を立ち、予選最後の試合に向かおうとしていた。
覇気が無いし、身体もカチカチに硬くなっている。
「だ、大丈夫だ」
「はぁ……本番に弱いタイプでは困るんですが、それも今後の課題という感じですね」
「おいホムラ、何をメモしてるのだ!?」
「より強くなって貰う為の弱点メモですよ。ちゃんとみんなの分ありますよ」
冒険者として森に入るのと、こういう試合では訳が違うのは理解出来る。けど、緊張するというのならそれは弱点になりかねない。
ミルフさんの場合、自信が無いというよりは場数が足りてないのだろう。想像だが、家を出て冒険者になったばかりのミルフさんの戦歴はボロボロだったに違いない。
それでも場数を踏み、少しずつ慣れてようやく緊張も解れたのだろう。
程よい緊張は良い必要だが、身体が硬くなる程の緊張はマイナスでしかない。実力が出せぬまま死ぬなんて、本人も死にきれないだろうからな。
(戦うクエストじゃなくて、ミルフさんにはお手伝いクエストを一人でやって貰うか?)
今回の大会はあまり期待できないが、強いのは知っているからそこの結果はどうでも良いと思っている。本人は頑張るつもりだろうが……個人的には死ななきゃ良いというぐらいの応援だ。
大事なのは今後の事だ。さっそく明日からでも緊張しない精神作りを始めないといけないかもな。
「クールースッ!」
「おつかれ、エレノア。よく頑張ったな」
ミルフさんと入れ替わりのタイミングで、エレノアが戻って来た。
その表情からは、喜びやら楽しかった気持ちが読み取れる。
「クルス、私頑張ったネ!」
「そうだな。見てたぞ」
「私ご褒美欲しいヨ」
「もちろん。何が良いんだ?」
あまり自分から物欲を見せないエレノアだ。褒美を求めるのなら、最大限応える気持ちはある。
だが、いったい何が欲しいのだろう。新しい服、武器、防具……宝石系だろうか。
「あのネ、あのネ……はいっ」
頭だけを俺に差し出し、エレノアは止まる。
その意味が分からない訳じゃないが、小さい子に向けてする様な事を俺達の年齢でしても良いのだろうかと伸ばそうとした手が止まる。
「ホムラ様、差し出がましいと存じますが……エレノア様の喜ぶ顔が見たいのなら手を伸ばすべきかと」
「マユエルやディールならともかく……」
「従者~、あんた女心ってもんが本当に分かってないわねぇ……好きな人に撫でられたいものなのよ」
誰がアドバイスしてきているんだという気持ちはあるが、そこをグッと堪えてフランの意見にも耳を傾ける。
たしかに女心は分からない。だが、流石に頭を撫でて欲しいという気持ちくらいは察する事はできる。
問題は、子どもっぽいのではないかということ。せっかく頑張ったのに、その褒美が頭を撫でる事で良いのかということだ。
そういう意味では……女心は分からないな。というか、欲深くなくて合理的でも実用的でもない褒美を欲しがる気持ち、真逆な俺に分かる筈もないな。
「エレノア、本当にソレで良いのか?」
「うン! 後は勝手にギュッてするネ!」
ゆっくりとエレノアの頭に手を乗せ、ゆっくりと左右に撫でる。髪の流れに沿って、優しさに重きを置いて撫でてあげる。
今、エレノアがどう感じているのかは分からないが……喜んでくれているのなら、もう細かい事は何でも良い気がしてきた。
エレノアの褒美なら、エレノアが喜ぶ事が一番だからな。それに、綺麗なエレノアの髪に触れるのは嫌いじゃないし。
「よしよし」
「えへへ……ありがト、クルス」
「実際にやってる所を見せつけられると……何か複雑ねぇ」
「こら、ホムラよ! 妾も撫でんかっ!」
空いてる手でディールの頭をポンポンとする。本人が満足そうなので、多少の雑さは気にしない。
「ちょっとぉ! ズルいじゃない! ズルいじゃない!? 私も撫でなさいよ従者!!」
「スマン、俺の手は二つなんだよな」
「きぃーーーっ!! こんなのばっかりじゃない……たまには私にも優しくしなさいよっ」
普段はフランにもそこそこ優しくしてるつもりなのだが、知らず知らずの内に鬱憤が溜まっていたのかもしれないな。
メンタルケアまで俺の役割にされても困るのだが……苦手と逃げてもいられないか。フランには後でアイスでもくれてやろうかね。
「はいはい、とりあえずミルフさんの試合を観てからな」
「雑ゥ! でも、ミルフの応援はしなきゃよね!?」
良い子ではあるんだよな、フラン。
◇◇◇
ミルフさんの試合が始まった。
だがそこに、ミルフさんの姿はもうない。精彩さを欠いた剣技が通用する程優しい場ではなく、女だからと言って手を抜く相手は居ない。
そんな場に、ガチガチで緊張したまま立ったミルフさんが勝てる訳もなく、開始から少しして場外へと蹴り飛ばされていた。
エレノアとフランには既に伝えてあるが、二人は今日の反省点をキャサリンさんと特訓して克服してもらう。決勝は観れないが、それもキャサリンさんに任せておけば大丈夫だろう。
フランに関しては魔法騎士団としての職務の後になるだろうけど、予選を突破した事で追加の休みを数日は貰えるそうで時間の都合はつくだろう。
エレノアは冒険者……ま、フリーターみたいなものだし、時間は有り余っているから問題はない。
そこで一番の問題であるミルフさんは、俺に担当させて貰う事にした。
メンタル強化という任務になる。思惑通りに事を運べるかは分からないが、やるだけの事はやってみるつもりだ。
「さて。キャサリンさん、ディールをお願いしても良いですか?」
「もちろんです。ホムラ様、私に出来ることならお手伝いしますが……」
「あー……そうですね、ならミルフさんサイズのメイド服を用意して――」
「ここに、ご用意しておりますよ」
何で? と聞いたところでしょうがない。キャサリンさんの準備の良さは昔からの、当たり前の事である。
何の前触れもなく要求したメイド服を持っていたとしてもおかしい事は一つもないのだ。
「お借りします。あと、少し開けますので学校……マユエルの方もお願いします。やる事メモを渡しておいてください」
「承知しました。行ってらっしゃいませ、ホムラ様」
「……んぁ? ホムラ、何処かへ行くのかえ?」
「まぁ、ミルフさんのメンタル強化にね」
「妾も行くぞ!!」
寝惚け眼を擦っていた、ディールだったが一瞬で覚醒していた。
楽しい事は無いかもしれない事とか期間とか……今からの事を簡単に伝えてみた。
その結果――。
「妾も特訓する!」
「はぁ……まぁ、はぁ。キャサリンさん、もう一着ありますか?」
「――こちらに」
おそらく深くは考えていないのだろうが、ついて来るという意思は変わらないらしい。
別に困る事はないし、戦う相手も必要かもしれないからディールに来て貰うメリットはある。
何故に作ってあったのか分からないディールサイズのメイド服を、キャサリンさんから受け取ってカバンに入れておく。
特に課題の無いディールが来たとしても得るものは無いと思うのだが……手伝って貰う報酬として、また何かを作ってあげる必要があるかもな。
「ホムラよ? その服はなんなのだ? 必要なのかえ?」
「あー、メイド服はですね……絶対にミルフさんが恥ずかしがると思うので、くくく……精神力の強化ですよ」
普段はクールで結ばず青みがかった髪を揺らしながら敵を斬り、男所帯の冒険者としてガンガンに活動しているミルフさん。
だがその実、可愛い物が好きという反面もある。でも、自分が可愛くなるなんて考えてはいないだろう。
だからこそのメイド服。キャサリンさんのメイド服はクラシカルで派手な物ではないのだが、スカートが既にミルフさんにとっては恥ずかしいものになるだろう。
(ふっ――メンタル強化そのイチ『メイド服でこれ以上ない恥ずかしさに慣れようプレイ』やるっきゃないな)
「ディール、行きましょう。ボコボコにされて凹んでるミルフさんの元に!」
「くはははっ! 愉快ユカイゆかい! 特訓するのだぞー」
ここでみんなとは少し離れる事になるが、可能な限りの弱さは捨てておきたい。みんなでみんなをカバー出来る範囲でないと、師匠の作るダンジョンはとても攻略不可能だろう。
ただの強さだけでは絶対に突破できないし、人の弱さを突くのが上手い師匠の事だからきっとメンタルの部分はかなり抉ってくると思われる。
色仕掛けやトラウマを呼び起こすアイテム……意味のありそうで無いストレスの溜まる罠が無数に散りばめられているだろう。
「ミルフさんは……あそこか」
心の弱さの克服……ミルフさんにはとことん恥ずかしがってもらわらないとな。
脱落者の集まっている場所で悲しげにポツンと佇んでいるミルフさんの元へと、俺とディールは移動した。
◇◇
「はぁ……」
いつもこう――肝心な時に力を発揮できない。
誰よりも鍛えた子供の時。兄や弟、女だからと戦うことを辞める様に言われた事は数知れず。それでも、剣を振り続けた。
戦いは無情。自分の全てを用いて挑む。強さも、弱さも。私は……弱いのだろう。
「はぁ……」
何度目のタメ息だろうか……。
目の前で戦っている他の参加者。戦闘力では負けていない。でも、私は敗者側に居る。
自然と手に力が入る。悔しい、悔しい、悔しい悔しい悔しい!!
感情が昂って泣きそうだった。でも、今泣けば「やっぱり女だな」と周りに思われるだろう。それも嫌だ。
キャサリンさんは別格としても、エレノアやフランまでも予選は難なく突破したと言うのに……合わす顔が見つからない。
(いっそこのまま……いや、それだと冒険者として一緒にやってきたエレノアに迷惑を)
思い切りが無い。決断力が無い。自分で家を飛び出したのが、人生における最大の決断だった。
そこからの生活が苦しくて、何かを自分で決める事を少しずつしなくなっていた。
冒険者としては紹介されるクエストをただこなすだけ。
宿も武器屋も防具屋も紹介される店に。全部が流されるままだ。
「……ん?」
何かに呼ばれた気がして、左右の人を見るが違う様だ。
ついに幻聴まで聞こえ始めたのか……もう駄目かもしれない。
「…………さーん」
やはり、何か聞こえる。観客の声だろう。私には……関係の無い声だ。
それを最後に、聞こえなくなる。やはり、そういう事なのだ。
「敗者~、敗者になられましたミルフ様~、気付かれましたら~」
(何か……とても不愉快な声と言葉が聞こえてきたな?)
私の知る限り、こんな事を言う奴は一人しか居ない。無遠慮で無配慮な感じがとてま耳障りの筈なのに……自然と口角が上がっていた。
「ミルフー、早くくるのだー」
「ミルフさん、ちょっと良いですかー?」
近場の観客席の最前列に、ホムラとディールさんが居た。
たぶん、情けない私を嗤いにでも来たのだろう。ホムラはそういう奴だ。
臭い臭いと私にいつも何かを吹き掛けてくる失礼極まり無い。でも、アイツが居なければ可愛い人形は手に入らないというジレンマ。
何があって呼びつけているのかは知らないが、とりあえず行ってみる事にした。
「……何だ。不様な私に何か様か?」
「どうしたんですか? らしくないですけど……」
らしくない……か。ホムラにはそう見えるのかもしれないが、本来の私はこの程度でぶっきらぼうに当たってしまう様な人間なのだ。
「嗤いに来たのだろ?」
「お主は何を言っておるのだ?」
「いや、ですから……情けなく負けた私を嗤いに来たのでしょう?」
「そうだ! それは目的の半分だぞ!」
そうなんだ……。嘘でも良いから違うと言って欲しかった。私は……考えがいつも甘いな。
「あの緊張具合で負けるのは予想通りなので何も言いませんよ」
「ホムラ……」
「俺はミルフさんと初めて冒険に行った時に見た、ミルフさんの剣の一振りがとても格好良い思いました。ミルフさんが強い事は知っています」
「――ッ。いや、私は……弱い。とても弱いぞ」
ホムラの言葉を否定する。慰めるとか、ホムラに似合わない事をしてくれたのに思わず否定してしまった。
ホムラと最初に行ったクエストは……たしか森で、そこでホムラは私の弱点だった可愛い物に対する対策を講じてくれた。
躊躇って振れなかったのに、可愛い生き物相手でも剣を振れる様になった。
だが、今日はそういう問題じゃない。ただ、衆人環視の中で戦えなかった。圧倒的な経験不足を突き付けられた。
「ん~、そう簡単に自信まで無くされると面倒なのですが……」
「おい、面倒とはなんだ」
ホムラに悪気が無いのは付き合いの中で分かっている。逆の立場なら、私も同じ事を思っているかもしれないし、理解も出来る。
だが……何の遠慮も無く言われると、グサッと来るものはあるわけで、それがいつもホムラにだけ強く当たってしまう理由にも繋がる。
「ちょっと遠慮なく、言わせて貰いますよ?」
今もずいぶんな物言いしているぞ……という言葉を飲み込んでホムラの言葉を待った。
「ミルフさんは自分に制限を掛けすぎです。普段は弱音を吐かない、冒険者として生きていく、可愛い物好きな事は隠す、真面目で誠実な行動に準じる、他人から変に思われないようにする……他にもありますけど、とにかく優等生過ぎるんですよ。だから、大勢の人を前にして緊張してしまう。自分におかしい部分は無いかと、戦いに集中できない。」
当たっている評価に、何も返せない。冒険者として活動している時も、エレノアによく「ミルフは堅すぎネ」などとよく言われている。
今日の試合も、気付いたら負けていた。緊張したまま、何も出来ずに終わっていた。
「だから負ける。そして、負けた理由を『弱い』で片付ける。それはもう……ダサいですよ? ミルフさんが負けたのは自分で知らず知らずの内につけていた『枷』が多すぎるからです。ミルフさんの実力は申し分ないです。それは俺が保証しますし、キャサリンさんだって認めてる事です」
枷……。
剣術道場の娘として生まれた枷。
立派な剣士にならないといけないという枷。
冒険者として生活費を稼がないといけない枷。
冒険者なのに不真面目を許せない枷。
可愛い物が好きなのは隠さないとという枷。
他人の評価を気にしてしまう枷。
責任感という枷。
自分の体に、鎖や縄がぐるぐると巻き付いているみたいな錯覚に陥る。
常に誰かの期待に応えないといけない気がしていた。両親、ギルド、パーティー……私は、何も応えられていない。誰の期待にも応えられていない。私なんて……。
「ミルフさん」
「ホムラ……もういい。私は、どうしようもない人間だ」
「……今さら何を言ってるんですか? 冒険者なんてどうしようもない人間の集まりに決まってるじゃないですか」
「……私だって、傷付くんだがな?」
結局、慰めに来たのか貶しに来たのか。何を言いに来たのかピンとこない。
割合的には傷付けられてる方が多い気もする。ホムラの考えはたまに分からない事がある。
何を考えていて、何をするつもりで、今何をしているのか。
「まぁ、前置きはこの辺にして……うじうじしている暇があるなら、行きますよ」
また始まった、ホムラによるいつもの思い付きの行動。
エレノアは何も気にしていない様だし、他のみんなも気にしていない……というか慣れたり麻痺しているのだろうが、ホムラという男は基本的に頭がおかしい。
説明が下手とかではなくて、省く。そして、パッと思い付いた事は大抵がロクなものではないのだ。
「一応聞くが……どこへだ?」
前置きとかそういうのは置いておくとしても、行くと言ってホイホイついて行ってはいけない。いきなり極寒の地へ向かうと言い出してもおかしくない奴なのだから。
「行き先はもう決まってますが秘密です。この三人で行きますけど、目的はあくまで『ミルフ・イーユ=ボルゾイを強くする』事です」
「……なに? それは……どういう事だ?」
私を強くする、とな。
話の流れを汲めば、私についている枷を取るという事になるだろう。
だとしても、どうやって? そもそも別の場所へ行く必要があるのだろうか?
ホムラの悪い所が全部出ているし、私も……きっと今は悪い所が沢山出ている。良い旅にならない予感しかしない。
ディールさんが居る理由が不明なのも不気味だ。
「逆に聞きますけど、何が分からないのですか?」
「……っ。全部だ! ぜんぶっ!!」
「いや、ミルフさんは精神力が足りないから鍛えに行くって言ってるだけなんですけど……?」
「何だその顔はっ! そんな事一言も言っていなかっただろっ!?」
「そうでしたっけ? ですがまぁ、ミルフさんが弱いままで良いなら行かなくても良いですけど……どうします?」
やはりムカつく男だ。基本的に考えが自己完結しているから、ホムラは説明を省く。理解するのが一苦労だ。本人はそれを悪いと全く思っておらず、逆に疑問を浮かべた顔をしてくるのが更にムカつく。
可愛い人形を作れなかったら、美味しい料理を作れなかったら、凄い回復薬を作れなかったら、サポートアイテムを作れなかったら、新しい戦い方の知恵を教えてくれなかったら、使える素材について教えてくれなかったら、纏め役をしていなかったら……誰よりも真っ先に叩き斬っているのだが、そうできないのが本当に残念だ。
「ホムラの言う通りにすれば……私は本当に今よりも強くなるのだな?」
「当然だろ?」
当然……か。どうしてそんなに自信があるか分からない。
でも、今回はホムラに乗ってみるのも悪くないと思えた。特別な理由も根拠も無いが、嘘を吐いている様には思えなかった。
「――なら、分かった。ホムラについて行く。……あと、もうそろそろミルフで良い、けど?」
「えぇ……そこを今更変えるのは……いや、まぁ同い年でしたっけ。ならミルフでも別に良いか……」
自分で言っておいてなんだが……ホムラに呼び捨てにされるとなんだかむず痒くなってきた。
頭がおかしくてたまに嫌な奴だけど、頼れない訳じゃない。
でもやっぱり頭のおかしい訓練とか要求してきそうで、今更ながら不安しか無いことに気が付いた。
(はぁ……私の人生、どうしてこうも行き当たりばったり過ぎるんだろう……。というか、ホムラと出会ってからは特にだよなぁ……)
「……はぁ。ホムラ、アトリエに人形の入ったバッグを置いてきた。せめてそれは取りに戻りたい」
「無いと、寝れませんもんね?」
「――くっ!! 寝れないが!? 無いと寝れませんけどそれがなにか問題でも!?」
「ひぇっ……なんか、すみません」
よし、今日もギリギリの所で総合的には私の勝ち。
(またやってしまった……。毎回毎回……何の勝ち負けを争っているんだろう私達は……)
ホムラと言い争いになる度に、こんな風に勝ち負けを競ってあっていた。
事の発端はホムラの「はい、俺の勝ち」という些細な言葉だったと思う。昔のこと過ぎて記憶は曖昧だ。
本当にどうでも良い事だし、勝っても負けても得るものは虚しさだけである。
成人年齢もとっくに越えているというのに……無駄に毎回言い合いをして、何をしているんだという気持ちが強くなっていた。
きっとそれは、ホムラも同じ気持ちだろう……けど、ちょっとそこに楽しさを見い出している私も存在している。
ホムラと言い合うと、遠慮しなくて良いからちょうど良いストレス発散になるのだ。それもきっと、お互い様なのだろうけど。
「早くアトリエに戻るのだ~」
「そうだな」
「……ですね」
退屈気味にディールさんがこの場の空気感を纏めてくれて、私は勝手に会場を後にしてホムラとディールさんと街をも出る事になった――。
◇◇◇
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