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【完結】灰人と無魂の魔女 〜魔導士最強の男は魔法のすべてを奪われた〜  作者: くれは
最終章 白の魔女

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第70話 融合

「……大丈夫。彼らは生きているよ」


 周りに倒れている魔導隊員は意識を失っているだけで生きていた。ネフリティスに気を取られていたが、冷静なグランツは体内に流れる魔力を感じ取っていた。当然、魔法を封じられていて魔力を感じ取ることすら出来ないサフィールには分からない。


 そして、どこか余裕そうなラルカはネフリティスの入った人形を掲げたまま、こちらを見てほくそ笑む。


「さすがは魔女様たちを殺し、白の魔女様に認められた男だよ。だけど、邪魔はさせない。踊り狂え――人形劇(ティーテレス)!」

「なんの魔法だ……?」


 魔導銃を手に警戒するサフィールたちだったが、いつまで経っても魔法による攻撃は起こらない。明らかに攻撃魔法だった。


 ――未知の魔法。


 そのとき。前線に立っていたサフィールではなく、一番後ろにいたフロワの悲鳴で振り返る。


()っ……! 何、この()()()――」

「フロワ嬢!」


 手のひらで何かを振り払うフロワから小さい人影のようなものが転がった。

 腕を押さえるフロワの指先から垂れてきたのは赤い滴……。よく見ると片腕だけが無惨にも切り刻まれて布も周囲へ散っていた。


 思わず転がっている小さい何かを撃つ。しかし、魔法が発動したのは地面だった。


「……思ったよりも動きが早いな」


 ただの人間と変わらないサフィールの目では追えない速さで動き回っている。しかも、一体だけではなかった。


 前髪を引っ張られる感覚に前を向いた直後、光線が何かを貫く。唖然とするサフィールは片手でぶら下がっていた人形に気付いた。

 光線によって体の中心を射抜かれた人形は力なく地面へ転がる。そして、その人形の手にはギラリと光る刃物が握られていた。


「なっ……」

「――間一髪ってかァ?」


 魔法で生み出された人形は灰のように朽ちて跡形もなく消えていく。

 聞き覚えがある声のする方へ振り向くと、指先を魔導銃のように構えたニルが立っていた。


「――ニル。そうだ、ネフリティス……!」

青玉(そうぎょく)(キミ)! 人形はまだ複数いるよ」


 ネフリティスの入った人形を掲げたラルカは別な呪文を唱えている。サフィールが近づこうとした直後、それを邪魔するかのように隠れていた人形が姿を現した。


 小指ほどの人形は小ささを活かした俊敏な動きでサフィールの目をくらませる。


「こいつら、ちょこまかと……」


 面積のある魔導銃とは相性が悪すぎた。気づくと服へよじ登っている人形を、先ほどのようにニルが撃ち落としていく。

 だが、想像以上の多さに埒が明かない。


 フロワの手当てを終わらせたグランツもニルの横へ並ぶ。


「……黒の不変と手を組むのは癪だが、赤い花(フルール)のためにやむを得ない。僕が全員に部分的な防護魔法を施す。貴様は雷の魔法で人形を撃ち取れ」


 苦肉の策とばかりに放たれる言葉は命令でしかない。確実に文句を言うだろうと思っていたニルからは意外な言葉が飛ぶ。


「へぇ……オマエにしては良いこと言うじゃん。その作戦、乗った。ちゃっちゃと終わらせて、お姫様を奪還するぞ」

「ああ……いつでも来い」


 思いがけない二人のやり取りにサフィールたちは面食らっていた。


「――消し炭になれ(ブレイズ・トニトルス)


 そして、頭上から放たれた巨大な光線は一瞬で全ての人形を灰に変える。雷のようで紅い炎のような威力のある魔法は、どう見ても中級魔法でもなかった。

 少しだけ静電気のようなものを感じたサフィールは肩へ触れる。


 しかし、二人の健闘も虚しく、前方から笑い声が聞こえてきた。それはつまり――。


「ラルカ! 魔法を唱え終わってる――」

「残念、時間切れだよ……特等席から見ているがいい。これから白の魔女様と未知の魂が〝融合〟する瞬間を――」


 なんの呪文を唱えていたのかも分からない中、急に辺りが暗くなると前触れなく()()は現れた。

 一瞬で重苦しくなる空気が周囲を覆い尽くす。


 位置的に背中を見る形となったラルカだけは恍惚した表情で雄叫びを上げた。


「嗚呼! なんと美しい御身……何もかもが完璧な()。足りないのは魂だけ――是非ともお受け取り下さい。白の(キミ)

「……あいつ。まさか、白の魔女を崇拝していたんじゃないのか」


 白の魔女を前にしたラルカから発せられる言葉は崇拝と言うよりも、まるで()()()()()を愛でるような呼び方だった。


 ラルカの魔法が成功したとはまだ言えない。即座に上級魔法の入った魔弾を入れ替えるサフィールは、ニルと合せ技で引き金を引く。しかし、前に遭遇した白の魔女とどこか雰囲気が違う感覚にサフィールは警戒心を強めた。


 渦のように乱れる氷と雷の魔法が魔女へ当たる。当然、防護壁に守られているがニルの魔法でもサフィールの魔弾と混ざることで威力を増したまま効果はあった。


『――サフィール!』

「え……? ネフリティス⁉」

「さぁ、魂を器に――」


 サフィールの頭へ一瞬だけ聞こえてきた声はネフリティスだった。

 そして、ラルカの呼び声で人形の中から青白い何かが飛び出して、白の魔女の心臓部である魔石(コア)がある部分へ取り込まれていく。

 その直後、白の魔女から聞いたことのない奇声が発せられた。

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