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黙ったままの時間が流れた。
無線のスピーカーも沈黙したままだ。
ズカシはあれから微動だにしない。眠ってしまったのだろうか。
トピはシートベルトを外すとトラックから降りた。
ゆっくりと避難壕の入り口に近づく。
外は明るく地面は光っている。暗い空にぽっかりと青と白のマーブル模様のN星が輝いて浮かんでいた。
トピは惚れ惚れとその星に見とれた。
「昨日のことのように思い出せるわ。あの美しいN星の姿」
トピは母が言っていたことを思い出す。
母もこんなふうにN星を見ていたのだ。
トピの母はN星から集団移民計画で、両親たちとS星にやってきた。
S星に向かう宇宙船からN星を見たという。
母の五才の記憶は死の間際まで残されていた。
「ほら、見て、あのきれいなN星」
そう言って亡くなったのだから。
美しいN星を思い出しながら死んだ母。母はN星に帰りたかったのだろうか?
祖父母はとうに亡くなっているし、行方不明の父にはもちろん聞くことはできない。
いつかN星に行ってみたい。そう思っていた矢先、N星から兵士の募集があったのだ。
何も迷うことはなかった。
トピはそれに志願して、厳しい訓練を積み、今、ここにいるわけだ。
だが、もう少しだ。戦闘機がどこかに行ってしまえばN星に行けるのだ。
トピは避難壕から外に出て、空を見上げた。
静か過ぎる空間に自ら光を放つ星たち、光る星に照らされて光っている星たち、点滅する星たちがあった。
それらが急に遮られた。敵機だ。
トピは瞬時に避難壕に戻ろうとした。体を急激に反転させたため、足がもつれた。
敵機のレーザーがトピに向けられた。
激しい衝撃でトピは飛ばされ、避難壕の入り口の岩が砕け散り、破片がトピの上にバラバラと落ちた。
「とぴー!」
ズカシの叫び声が響いた。
失敗した。油断した。ズカシに言われていたのに。
トピはトラックの横で倒れたまま、動かなくなった。