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衛星ショーン  作者: カワラヒワ
4/6

4

黙ったままの時間が流れた。

 無線のスピーカーも沈黙したままだ。

 

ズカシはあれから微動だにしない。眠ってしまったのだろうか。

 

トピはシートベルトを外すとトラックから降りた。

 ゆっくりと避難壕の入り口に近づく。

 外は明るく地面は光っている。暗い空にぽっかりと青と白のマーブル模様のN星が輝いて浮かんでいた。

 

トピは惚れ惚れとその星に見とれた。


「昨日のことのように思い出せるわ。あの美しいN星の姿」

 トピは母が言っていたことを思い出す。

 母もこんなふうにN星を見ていたのだ。

 

トピの母はN星から集団移民計画で、両親たちとS星にやってきた。

 S星に向かう宇宙船からN星を見たという。

 

母の五才の記憶は死の間際まで残されていた。

「ほら、見て、あのきれいなN星」

 そう言って亡くなったのだから。

 

美しいN星を思い出しながら死んだ母。母はN星に帰りたかったのだろうか?

 祖父母はとうに亡くなっているし、行方不明の父にはもちろん聞くことはできない。

 

いつかN星に行ってみたい。そう思っていた矢先、N星から兵士の募集があったのだ。

 何も迷うことはなかった。

 

トピはそれに志願して、厳しい訓練を積み、今、ここにいるわけだ。

 だが、もう少しだ。戦闘機がどこかに行ってしまえばN星に行けるのだ。

 

トピは避難壕から外に出て、空を見上げた。

 静か過ぎる空間に自ら光を放つ星たち、光る星に照らされて光っている星たち、点滅する星たちがあった。 

 

それらが急に遮られた。敵機だ。

 トピは瞬時に避難壕に戻ろうとした。体を急激に反転させたため、足がもつれた。


 敵機のレーザーがトピに向けられた。

 激しい衝撃でトピは飛ばされ、避難壕の入り口の岩が砕け散り、破片がトピの上にバラバラと落ちた。

「とぴー!」

 ズカシの叫び声が響いた。 

 失敗した。油断した。ズカシに言われていたのに。

 トピはトラックの横で倒れたまま、動かなくなった。


 

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