34/1866
一分間の脅威
「エビってね、このお爺さんの長いヒゲがあるから『海の老人』って書くようになったんだって。」
冴子はいつになくまじめな面持ちで呟くように僕に語りかけた。
「長いおヒゲや曲がった腰をしたお爺さんみたいに、長生きできますようにって長寿の願いが込められてるんだって。」
「ふうん。」
僕の「ふうん」はよっぽど興味のなさを示してしまったのか、冴子はまたそっぽを向いてしまった。
お義父さんも、お義母さんさえも、この間の悪さを埋めようとしてはくれず、約一分間、ただ皆がお節料理をを咀嚼する音が響いた。