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はい
一の杯にそろそろとお屠蘇が注がれると、お義父さんはしばらく表面に見入り、沈金の松が浮いてくるまで待つ気でいるんじゃなかろうかと思われるほどだった。
ジロリと僕に目を向けられ、僕はなんとも反応できずにお義父さんを見たまま、たじろぎもできずにいた。
「美しいだろう。」
「はい。」
僕ははいとしか応えられなかった。それが、屠蘇の底に見る金の松なのか、屠蘇器なのか、冴子のことかお義母さんのことか、はたまた今日という元日のことなのか。なにが美しいのかは分からなかったけれど、とにかくはいと応えるしかなかった。