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まずはお屠蘇
キレイに片付けられた居間には幅広のコタツの真ん中に、お節料理の重箱がさも貴重なお宝のようにまだ蓋が閉じられたまま鎮座していた。
それは掛け軸の前の、真空パックに詰められた大きめの小ぎれいなお供え餅よりも重宝されているように見えた。
お義母さん、と呼ぶには早いが、冴子の母親は赤色の華やかな柄のヤカンみたいなお銚子と平べったい杯のセットが乗せられたな小さめのお盆を持って来て、父親の前にいそいそと置きながら
「まずはお屠蘇からね。」
と僕に向かって笑顔を浮かべ、束の間さえ観察しようとしていた。