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15話 ソラの騎種は……

「……やっぱり思った通りお主は相当面白い、気に入ったぞ」


「あとついでに、かっこいいも追加しといてヨクハちゃん」


「誰がヨクハちゃんじゃ、調子にのるな」


「あいたっ!」


 褒められるような言葉を聞いてふざけ出すソラに、ヨクハは鉄拳制裁を加えた。


「あ、そうだ、そういや俺の騎種ってどうなったんだ? これ適正試験なんだろ?」


「うむっ、お主の騎種は白刃騎士で決まりじゃな」


 ヨクハのその決定に、ソラは激しく動揺する。


「えっ何で俺が白刃騎士? 白刃騎士って前線で戦う一番危険なポジションでしょ? いや無理無理、支援騎士でしょ、俺の適正は!?」


「いや、今の模擬戦闘を見る限りお主は白刃騎士以外無理」


「え、それは何故なにゆえ?」


「何か不器用そうじゃし、支援騎士とかは気が利く優しい者でなくては」


「絶対適当だよね? 絶対今の模擬戦闘でそんなこと分からないよね?」


「うるさい、団長命令じゃ。お主は白刃騎士、よいな!」


「……はい」


 ヨクハの迫力に、ソラは言い返すことができず、その場にへたり込むのだった。


「とは言え、今のお主ではまだまだ実戦で戦うには足りぬものが多すぎる。知識も実力も」


「むむっ」


「これからお主にはしばらくの間、ここで鍛錬をしてもらう」


「えー鍛錬?」


 あからさまに嫌そうな顔で漏らすソラに、ヨクハが説く。


 ソラの剣技を活かすには、敵の攻撃を捌くための反射神経と動体視力がまず必要。ソラが蒼衣騎士とは言っても伸び代はいくらでもあり、明日から朝は島一周全力走十本の後にカナフの座学、残りの時間は全てプルームに付いて反応速度と動体視力上昇の修行を行わせるとのことであった。


 それに対し「座学までやらせるつもりか?」と、うんざりな様子のソラ。


「お主はエリギウス帝国の見習い騎士のくせに己の守護聖霊も知らん程無知じゃからな。どうせ属性の相性やら聖霊術の基本も知らんのじゃろ?」


「そう言われても養成所じゃ蒼衣騎士にはそこまで深いところは教えてくれないんだよ、騎士としての心構えとか、国の成り立ちとか、歴史とか、座学はそんなのばっかでさ」


「ならやはり座学は必要ということじゃな」


「……余計なこと言ったか」


「ということでカナフ、プルーム、明日からソラのお守りをよろしく頼むぞ」


 ソラの指導係を命じられ、荷が重そうな様子で嘆息するカナフと、それを諌めるプルーム。


「やれやれ、貧乏くじとはこのことだな」


「まあまあカナフさん、人に教えると自分の知識にもなるんですよ。ということでよろしくねソラ君」


 そんな二人に、ソラは肩を落しながら返すのだった。


「よろしくお願いしますう」





 それからソラは、まずは島や団の施設の案内を受けることとなった。案内役にはプルームとデゼルが買って出たため、二人の後を付き、共に島と施設を回る。


「ここは僕が管理をしている翼獣舎、近くの島にちょっとした移動をする時に使うペガサスとグリフォンを飼っている場所だよ」


 最初に訪れたのは、風が香る木造の翼獣舎だった。

 中では六頭の翼獣――三頭のペガサスと三頭のグリフォンが穏やかに羽を休めている。


 飼葉は整えられ、床は掃き清められ、匂いもほとんどない。隅々まで管理が行き届いていた。


「この翼獣舎は僕の担当なんだ、ほら皆可愛いでしょ?」


 デゼルは、ペガサスとグリフォンを一頭一頭自慢げに語り、その長い紹介をひとしきり終え、満足する。


 熱弁に小一時間足止めを食らい、いきなり出鼻を挫かれるも、ソラ達はようやくその場所から移動して次へと向かう。



「ソラ君はもう知ってるとは思うけど一応、ここは鍛冶場だよ」


 次に案内された場所は火花舞う石造りの鍛冶場であった。そこではシオンが各騎士の聖霊剣を一心不乱に研いでいる。そしてシオンの後ろに並べられた聖霊剣を見てソラはふと気になる。


「そういえばデゼルの聖霊剣はどれなんだ?」


「えっと、あれだよ」


 デゼルが指をさした先、その聖霊剣は重騎士が扱うような大きな盾の形状をしており、先端には短い刃が備わっている。その刀身は黄土色で、デゼルと同じ土属性の聖霊剣である証だ。


「へー、剣ていうよりはもはや盾だな」


「うん、あれはシオンさんに造ってもらった一応僕の専用器、宝剣ベリサルダっていうんだ」


「ベリサルダか、専用器……宝剣を造ってもらえるなんてデゼルってすんごい騎士なんだなあ」


「そ、そんなんじゃないよ。僕は騎士って言っても戦闘支援が主で、戦うこと自体はからっきしでさ。だから防御特化型の特別製を造ってもらったってだけで」


 憧憬の念が含まれたソラの問いに対し、デゼルは謙遜気味に答えた。


「そうなんだ……でもいいよな宝剣って、憧れるよ」


「ソラもこの騎士団の正式な騎士になれば造ってもらえるかもしれないよ、宝剣」


「マジ? っていやいやいや」


 ソラは期待を込めて聞き返した直後、首を激しく振って自分に言い聞かせるようにした。


 ――あれ、俺何か馴染んでない? ここは〈因果の鮮血〉に入団するまでの腰掛けなんだからなあくまで。



 続いて――


「ここは訓練場」


 次に案内されたのは騎士として訓練する竹林の中にある訓練場。特に何かがあるわけではないが、広大な竹林の中にはいしつぶてや矢が無数に落ちており、いくつもの竹は切断されたり、穴が開いたり、放射状にひびが入っていたりした。この騎士団の騎士達が長い間激しく訓練を行った跡なのが見て取れた。


 また、ソラはこの場所で明日からの訓練を行うのだということを理解する。





 その後も島を一周しながら、各施設や場所の案内を順にされ、最後に案内されたのは騎士聖堂に併設された騎士宿舎であった。


 最初に見た瓦屋根の木造建築で、ヨクハに気絶させられた時にソラが寝ていた場所がそれである。


「ここが食堂で食事は当番制でやってるんだよ。ソラ君もその内当番回ってくるからよろしくね」


 そこは石造りの炊事場があり、食事をするところは畳になっていて、テーブルではなく座卓と座布団が置かれ、この騎士宿舎全体が孤島ナパージの建物様式を再現したかのような雰囲気となっている。


 そして食堂を案内された後、ソラは自身が過ごす部屋の案内をされる。


「ここがソラの部屋だからね」


 そこは畳と布団、小さな座卓しかない殺風景な部屋だが、正式な騎士ではない自分に一部屋を与えてくれただけでも御の字とソラは思うのだった。


「それじゃあソラ君、明日から訓練が始まるから、今日はゆっくり休んでね」


「じゃあソラ、おやすみ」


「ああ、色々ありがとうな」


 プルームとデゼルに挨拶をした後、ソラは布団に横たわり、色々ありすぎた一日を振り返るのだった。しかしこの時は知る由もなかった。翌日から始まるプルームとの地獄のような訓練を。



 その夜。眠りに落ちたソラの夢の底、少女が少年に語るかつての世界の記憶が微かにさざめいた。


 遥か昔――大地に竜が生きていた時代の物語。




※      ※      ※     



 竜祖セリヲンアポカリュプシスと七竜王との死闘、“竜牙の血戦”から更に永き時が流れ、竜牙の血戦の影響により割れた大地が、一つの大陸と四つの群島、数多の孤島や絶島を形成した頃、人という種族がラドウィードの大地に生まれた。


 そしてそこには、いまだ竜という種族が君臨し続けていた。セリヲンアポカリュプシスの統率を失った竜族はラドウィードの各地に散らばり、静かに繁栄を続けていたからだ。


 竜族に比べて矮小で脆弱な人に対し、竜族は絶大な力を持っており、人の上位捕食生物であり、ラドウィードの絶対的君臨者であった。


 しかし聖霊達は、かつて力だけを与え、それに溺れ道を誤ったセリヲンアポカリュプシスの過ちを再び繰り返すまいと、人に与えたのは強き想いと叡智、そして心だった。


 脆弱な存在でしかなかった人からは絆が育まれ、やがて文明が育まれ、剣が生まれ、国が生まれ、人々もまた静かに繁栄する。


 更に人の中には稀に聖霊の強い加護を受け、その加護を己の力へと変換することができる者も出始めた。そしてその力を携え、剣を取り、竜族と戦い、国を守る者達を騎士と、そう呼ぶようになった。


 やがて騎士は騎士団を結成し、国や民を守るために尽力し、そこから永きに渡る竜族と人類の一進一退の攻防が続く。



※      ※      ※    

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


ブックマークしてくれた方、評価してくれた方、いつもいいねしてくれてる方、本当に本当に救われております。


誤字報告も大変助かります。これからも宜しくお願いします。

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