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バグった世界で俺たちは。  作者: Kaいト
切り捨てし飢餓、その果てに秩序は成る

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奈落より、灰燼の先に曙光を phase 07

【商栄区・アキ&隠密部隊】

叩きつけるような雨が、鉄錆の匂いと共にアスファルトを叩いている。

アキは数人の隠密部隊を背後に従え、ある商業ビルの一部屋の前で作戦会議をしていた


「いい?まずは僕がこの前の部屋から窓を開け、追記で上の階にいる潜伏兵を奇襲する。君たちは意表を突かれた潜伏兵を死角から確実に削って」


「了解です」


アキが扉を開ける

ーーそれが合図となった


隠密部隊は音を無くして上の階へ登っていく。

アキもまた部屋の窓を開け唱える



追記アペンド重力分散グラビティ・テイル



アキは一時的に重力から解放され、その状態のまま壁を歩き一つ上の階の窓を蹴り破る

ーー同時に隠密部隊も扉を開ける


前後からの包囲と奇襲。


そのはずだった……




「……潜伏兵が誰一人としていない。何で?」



思わず漏れた独白に、背後の隊員たちが緊張を走らせる


本来なら、ここは治安維持局が「罠」として待機すべき要所

待ち伏せの重火器や、不可視の電子トラップが張り巡らされているはずの場所だ


だが、そこにあるのは完全な「無」だった。



「アキさん、これ……スカですか?」


「…………」


アキは答えず 思考の海に沈む。

治安維持局が これほど初歩的な配置ミスを犯すはずがない。


つまり、ここから兵を引かせた明確な「意図」がある



(……凛さんからの報告。第一特殊鎮圧大隊が動き出した。タイガさんも残りの点をジンさんらに任せて、テツとシノの方へ向かった)



アキの脳内で、新京都の地図が立体的に組み上がっていく


商栄区は、情報の心臓部である「天導区」の真横だ

そして現在アキがいる地点は、その天導区に最も近い



ふと、背筋に冷たい刃を当てられたような戦慄が走った


「待て。テツとシノたちは……何で連絡を入れてないんだ」


天導区は発電所と電波塔が密集する、今回の作戦における最重要拠点だ


烈の救出という目的を達成するためには、そこを制圧し、潜伏兵を処理することが不可欠。

当然、テツとシノからは定期的な状況報告が入る手はずだった


だが、通信ログは真っ白なままだ


(周辺の潜伏兵が全員、天導区へ集約されているとしたら? 第一特殊鎮圧大隊の一部隊までもが、そこへ注ぎ込まれているとしたら……)


テツとシノの二人が直面しているのは、一小隊どころの規模ではない



数千、数万の「意志を持たない軍隊」による蹂躙



デバイスを握るアキの指先が、微かに震える



……。



アキは、深く、重い息を吐き出した。

そして、デバイスの通信スイッチを入れる。


「……あー、こちらアキ。聞こえる? この点はスカだね。潜伏兵も全員倒した」


その声は、驚くほど平坦で、落ち着く印象を与えるものだった


「予定通り、次はナインらと合流するよ。凛さんの援護に向かう」


ーー知らせなかった。

絶望的な予測を、自分一人の胸に閉じ込めた。


これは合理的な判断ではない。


ただ「虚勢」を張り、心配ないと自分に言い聞かせ、最悪の盤面から目を逸らしただけだ



だが、その「虚勢」が 一番良い選択肢だったとアキは自負していた。



「……行くよ。閑世区かんせいくへ」



アキは隠密部隊を促し、激戦の地へと舵を切る。

凛とナインが 陽菜率いる第二小隊と死闘を繰り広げているあの場所へ。


だが、運命は非情なまでに加速していた。

閑世区へと向かっているのは、アキたちだけではない


治安維持局・第一小隊。

部隊長「龍牙リュウガ」を筆頭とした圧倒的な暴力の奔流が、すぐそこまで迫っていた。



新京都の夜を、巨大な落雷のような「音」が揺らす

天導区の方角から響いたその音は、何かが決定的に壊れた合図だった

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