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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第六章 誰が為に行く英雄と光放つ聖剣
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休暇

「ひゃは!ひゃはははは! 桐枝ぇ! お前程度が、俺に敵うと本当に思ってんのか!

「あぁ、そうっすよ!」


かつての仲間だったクラスメイトを、桐枝は切り裂く。だがそのクラスメイトは、続々と姿を増やしていった。


「この能力は…⁉︎」

「"分身"ってところか」


桐枝と永戸が背中合わせで戦う。桐枝の手には、拓人の形見である聖剣…"エルメイル"と名のついた剣を持ち、もう片手には白銀鉄針を打ち出す簡易型パイルブレードが装着されていた。

永戸には、失ってしまったパイルブレードこと聖剣レイマルクを補う形で、新たな剣"リヴァンジェンス(ツヴァイ)"が与えられた。元となったパイルブレード"リヴァンジェンス"を元に永戸専用に更にブラッシュアップした剣で、パイルバンカーの代わりにリボルバーカノンが搭載され、使用者の魔力を消費して弾丸を放つかブーストをかけられるガンブレードだ。

永戸はそんなガンブレードを振り回して、次々と分身を倒すが、本体が見つからなかった。


「くそっ…ジリ貧だ」

「そう言うときは、こうっす!」


すると桐枝は、聖剣を振り上げると、その聖剣から眩い光を発した。


「眩しい…!」


その光で、分身は次々と消え、本体があらわになる。


「そこっ!」


そして、桐枝がパイルバンカーを打ち出すと、クラスメイトだったものは壁に打ち付けられ、そのままがっくりと力尽きた。


「これで何人目だ?」

「だいぶやりはしたっすけど、まだ少し残ってるっすね」


クラスメイトの名前が書かれた日誌を片手に桐枝は言う。この世界に来てから数週間、永戸達は桐枝のクラスメイト達とずっと戦ってきた。

時には戦わずに桐枝と同様に普通の学園生活に戻れる者もいたが、基本的に処刑がされた。


「お疲れ様です、二人とも」


任務を終えて帰ってくると、神癒奈が二人にタオルと水を渡してきた。 二人は水を手に取って飲むと、汗をぬぐい、疲れを取った。


「もう何日風呂に入ってないんだろう…シャワーだけの生活はうんざりだ」

「ははは、それは私も同感です」


コートを脱ぎ、半袖のシャツとインナーの姿になると、永戸は四課のテントの中に入り、ぐったりと休む。この数週間はずっと出撃の繰り返しで、四課のメンバー達は、疲れを感じていた。

永戸はブレイズエッジをひたすらいじくりまわし

神癒奈は目に見えない蝶々を追いかけ始め

フィアネリスは出撃時以外ずっと寝て

ライは壁に向いては自分の自慢話をし始め

コリーは街で買ってきたドーナツをこっそり食べ

エイルはぶつぶつと恐ろしい呪詛を吐き

桐枝はEフォンの通販でお給金出たら何買おうかなと言い

とにかく四課の状況はかなりヤヴァイ事になっていた。


「ふむ、モチベーションの低下は己の生死にも関わる、一度君たちに休みを与えたほうがいいね、私もそろそろレーションのインスタントのではないごく普通の紅茶が飲みたいところだ」

『休み?』


四課の全員が休みという言葉に反応する。交代交代で連続での出撃をしてきた四課の化け物達が、休みという言葉に反応すると、全員ユリウスの方に向いた。


『休み! 取っていいんですか!!!』

「うむ、3日ほど休日を与えよう、戦地ではあるが、たまにはゆったり休んできなさい」


ーーー


というわけで四課のメンバー全員が、一斉に休みが取れた。異世界の移動は勤務中の為できないが、その世界限定でということで許可が取れた。


「そういえば旅はしても旅行はした事なかったな」

「そうですか?」


王都までやってきて、永戸と神癒奈は二人で歩く。この二人は純粋に王都の探索ということで休暇を楽しみにきた。


「異世界の食事って考えた事なかったですけど、いろいろなのがあるんですね?」


周囲の屋台から焼き肉の串やらパンやらを買っては食べこむ神癒奈、反対に永戸は特製フルーツジュースを味わっていた。


「結構そういう雑誌、ミズガルズでも出回ってるぞ、異世界料理紀行とかそんな名前の雑誌は割とある」

「あの都市はなんでもありますからね、でもこうやって現地でフラフラするのも悪くはないですね」


もぐもぐと色々なものを食べる神癒奈だが、ゲテモノ以外のよくある料理を的確に選ぶあたり、相当なグルメだなと永戸は思った。流石は焔月の姫様、食べる物の厳選はしっかりしている。


「神様がその辺ぶらついてグルメ旅をしてるって知ると、テレビ局とか飛びついて来そうだな」

「その時はお得意の情報統制ですよ」

「職権濫用だぞ」


四課の雰囲気に染まったのか、大分図太くもなった。出会った頃の繊細だった彼女が嘘みたいだ。


「この匂い…まだまだ美味しい店がたくさんありそうですよ! 行きましょう!」

「ああおい! ったく、お転婆なんだから」


そうして永戸は神癒奈に振り回されつつ、二人は休日を過ごしていった。


ーーー


ユリウスは、流石にキャンプから課長が出るわけにはいかないので、フィアネリスと一緒に優雅にお茶を飲み、チェスの勝負をしていた。フィアネリスの方は、特にやる事もなく、マスターは神癒奈さんに独占されてますのでと言って、ユリウスのお茶に付き合っていた。


「いやぁ、久々の本場の紅茶はいいねぇ、茶菓子もあるのだから余計に楽しめるよ、ありがとう、わざわざ王都まで買いに行ってくれて」

「いえいえ、私も暇でしたゆえ、こうして遊戯に付き合ってくれる相手を探してましたので」


フィアネリスも紅茶は好きだった。ユリウスほどではないが、家の中では麦茶の永戸、緑茶の神癒奈、紅茶のフィアネリスと三人別々の飲み物を日によって変えて飲んでいたくらいだ。テーブルゲームの勝負も彼女が持ちかけた物で、戦局は彼女が優勢になっていた。


「四課の隊員達の疲労も限界に達していたけれど、はてさて、他のみんなは何をやっているのやら」

「みんなそれぞれ、休暇を楽しんでます」


そう言いながらフィアネリスはチェックメイトを取った。油断してると狩られますよとくすくす笑う姿を見て、ユリウスは大人気ないなと呆れる。


「しかし、いいのかね? こんな老骨の話に付き合って」

「何を今更、貴方と私は大戦時からの仲ではございませんか」


それぞれの休暇の姿をEフォンで確認すると、フィアネリスは、もう一局どうですか? と、チェス板を並べた。


ーーー


それぞれの隊員がペアなどで楽しむ中、ライは一人街を歩く。


「ねぇ待て、あそこにすっごいハンサムな人いるよ…!」

「素敵…見た感じ、冒険者かしら?」


道を歩く中、女性達がライを見て話をすると、ライはその女性達に振り向き、笑顔を振りまいた。その度に黄色い歓声が彼に飛んでくる。


「参ったな、これだけの人達に惚れられると、私も困ってしまうものだ」


本屋に入り、その土地特有の歴史などを読み漁るが、本屋においても女性達に好かれ、どこに行こうと歓声が飛んできた。


「これは私も真面目に、婚活とか始めても良さそうだな、永戸がきっと苦笑いするだろうけど」


彼と永戸の関係は悪友みたいな関係だった。ちょっとガサツな永戸に常にハンサムな彼と、方向性は別々だが、なんだかんだで二人は信頼をしてる仲だった。そんな悪友の苦笑いを思い浮かべると、彼はこっそりほくそ笑んだ。


ーーー


最後に残ったコリー、エイル、桐枝の三人だが…。


「遅れてますよ、ほら走る、ワンツー!」


エイルに連れられてブートキャンプが行われていた。

何故ブートキャンプが開かれているか。それは基地の中にいるより外の空気を吸って走ったりした方が気持ちいいからとコリーが言い出し、剣道家兼身体能力強化の保有者である桐枝が調子に乗ってそれに参加すると、エイルがどうせならと厳しいトレーニングメニューを組んできたからだ。

コリーは呼吸を乱さずに走っているが、桐枝の方はとっくにばてていた。


「ちょっと…! なんできりちゃん達だけ休みなしなんすか…! しかもこんなハードなトレーニングメニューで…!」

「いくら身体能力強化の能力があるからとはいえ、大戦帰りの課長や永戸先輩のように体の限界ギリギリまで絞った使い方はしてないからねっ、だからこうやってトレーニングをして、自分の限界を伸ばしていかないと」

「でもコリー先輩ってスナイパーっすよね…! しかもなんで一緒に走っててきりちゃんより体力あるんすか…!」

「それは普段から重い装備を着て狙撃ポイントを移動してるからね、どんな時でも冷静さと呼吸を乱さないトレーニングでもあるし」


走りながらコリーはそう話す。コリーも伊達に四課の一員はやっていないようだ。するとエイルは足だけ装甲戦闘装備で走行しながら、鞭を振るった。


「ほらそこ…ペース乱れてますよ、遅れないで必死に走ってください、ほら♪」

「ひぃっ! 鬼! 悪魔! サディスト!」

「そうやって泣き叫んでいるうちは幸せなんですよ…♪ 次そんなことを言ったら口が開けなくなるくらいのトレーニングメニューを追加しますから♪」


怖い笑顔で鞭を振るうエイルを見て、桐枝はとんでもないものに出くわしてしまったと後悔する。

そうして三人は、地獄のようなトレーニングメニューを敢行していった。

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