一仕事を終えて'
「というわけで桐枝君、君の四課への正式な入隊が決まった」
ユリウスがにっこり笑う中、わーっと四課のメンバー全員が桐枝を受け入れる。
「えへへ、これからよろしくっす」
ちゃんとした自分専用の制服を着た桐枝が、ぺこりと頭を下げる。彼女の服装は特殊繊維性の白いブレザーのワイシャツに、ミリタリーな緑のジャケットを着せた、学生の彼女らしい衣装だった。
「これからはイストリアのあるミズガルズシティの学校に転校し、学生をしながらここで働く事になるから、覚えておくように」
「おお! 正義のスーパーヒロインみたいっすね!」
「そこまでかっこいい仕事じゃないんだけれどね」
目をキラキラさせながら楽しみにする桐枝に、ユリウスは少し困り果てる。だが、こほんと改めると、ユリウスは他のメンバーを含めて通達した。
「だが、ここでの事件は終わってはいないよ、桐枝君こそ無事に迎えられたが、この異世界で活動している勇者達はまだ半数以上いる、まだここの仕事は続くから気を引き締めたまえ」
『はい!』
そうして会議が終わると、各々が自分の時間を過ごすようになる。そんな中、永戸は外に出て一人夜風に当たっていた。
「どうしました? こんなところにいて」
隣に神癒奈が立つ。永戸は顔を向けず、空を見ながら言った。
「俺の聖剣、壊れちまったんだよな」
「…確か、友人の形見でしたっけ」
「あぁ、折れてたの無理に使ったのが祟ったのかな、バラバラに砕けちってしまった」
ポケットから聖剣の核であった石を取り出す。その石は、永戸の魔力を感じると、静かに光っていた。
「…大事なものが壊れると、悲しくなりますよね、特に、思い出深いものだと」
「あぁ、まぁな」
永戸は石を強く握りしめる。
「開発班によると、もう復元は不可能だとよ。俺には新しい剣が与えられると決まったし、この石も、お役御免だ」
そうして永戸は石を投げ捨てようとするが、神癒奈はそれを止めた。
「…大事に、持っておきましょうよ。その石、思い出があるなら残すべきです」
「……あぁ、そうだな」
もう一度ポケットにもどし、彼はふぅっとため息をつく。
「そう言えば、まだ聞いてませんでしたね、永戸さん達のここに配属された理由」
「……それ今言う?」
「今、言います」
相当気になるのか、尻尾を振り回しながら聞こうとしていた。
「そんないい話じゃないぞ」
「それでも、構いません」
「じゃあ……そうだな」
そして彼は、空の星を見ながら、御伽噺を話すように、こう語り始める。
ー長い戦争があったー
と…。
ーーー
一方、ステイリア王国王都の城の中では、困惑が広がっていた。
「何ですって? 勇者たちがどんどん戦死している?」
「ええ、それも、あるものは同じ勇者に殺され、またあるものは魔物と化して暴走をして…」
アーリア王女はその話を聞くとどう言う事だと考えた。"伝えられた通りに"勇者を召喚したはずが、なぜこうも失敗続きなのだと。
王女が聞いた話によれば、勇者たちは、全員が強い力を持ち、清き心を持って戦うはずだった。なのに、今の勇者たちは暴走し、悪事を働くものまでいる。
本来であれば魔物の討伐後、国をかけた戦争に参加させるつもりであったが、半分近く戦死した勇者の話を聞くと、黙っていられなかった。
「もういいです。一度下がりなさい」
「しかし、今後の方針はどうするのですか、王女様」
「二度も言わせないでください、下がるのです」
「は、ははぁ!」
アーリア王女がそう言うと、使いは去っていった。王女の部屋の中には、王女一人だけとなった…はずだった。
「いるのでしょう? これはどう言うつもりですか?」
アーリア王女が目を向けた先には、気がつくと、真っ黒な影が立っていた。
「どうもこうも、僕はキミの望む通りの力を与えたわけだが?」
黒い影はアーリア王女をまっすぐに見つめながら、瞬きなしにそう言う。それに対してアーリア王女は怯えながら吠えた。
「話が違うではありませんか! 清き心の、力に溢れた勇者たちが召喚されると、それが今では、仲間同士で殺し合い、力のままに暴れる者達まで現れ、勇者の威光は全くないではありませんか!」
黒い影にそう吠えるが、だがその影はニタリと笑うと、アーリア王女に近づき、こう言った。
「勇者を戦争に利用しようとしたキミが、それを言うのかい?」
「ぐっ…どうしてそれを」
顎元を撫でられ、アーリア王女は危機を察する…影はただ笑うだけだ。
「まぁいいさ、足りないなら増やすまでだ、キミがほしい、清き心を持った勇者が現れるまで、永遠にね、かつての"大戦"のように」
「何…それはどう言う事で…⁉︎」
アーリア王女が追求しようとした時、影は彼女の頭に爪を突きつけた。そして、昔話をするように、こう語り始める。
ー長い戦争があったー
と…。




